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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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続きはまた近いうちに、と言っていましたが、物凄い時間が経ってしまいました……orz
こちらの人狼パロのつづきです。パラレルです。パラレル設定苦手な方は回れ右してください。


今回局長は直接出てきません。直接描写ではないですが少しグロ・流血を連想させる表現あり。


パラレルなのでもう全員がある意味はじめからキャラ崩壊ですが、今回からジョーさんが人狼ゲームでいう所の『狂人』かつ人狼の恋人だった、という役回りで登場しますので、不快に思われる方は閲覧ご遠慮ください。





 狼たちは首尾よくひとの皮をかぶって村の中に紛れ込んでおりました。
 あるものは開拓村の移住希望者として。
 あるものは森のなかで村人と入れ替わって。

 とはいえ、あまり大勢で村の中に入るわけにはいきません。
 流石に狼の気配が増えすぎれば人に気付かれてしまいますし、獲物が足りなくなった日には取り合いの大喧嘩です。
 ですから、多くても3人程度。村の規模にもよりましたが、やや胸それが一度に狼たちが動くときの限界であり。
 数に任せて人間を蹂躙するような真似はしない。人間の村で狩りをする時の、狼たちの流儀でした。


 狼たちは人よりずっと数が少なくとも、狩人以外の人間にはそうそう負けたりしませんし、
 また、ひとの中には時々変わり者が居て、同族を裏切り、狼たちに協力してくれることがありました。
 しかし、彼らは狼にとっては獲物(にんげん)であることに変わりはなく、また人間に狼に味方すると知られれば縛り首でした。
 彼らは概ねそれでも構わないようでした。
 
 死を恐れず、まるで焦がれるように、狼に尽くす人間は――気ぐるいの病に罹っているのだと誰ともなく囁かれておりました。


3、裏切り者の小唄


 夕映えの野原を埋める背の高い草が、風に煽られてざあざあと揺れていた。


 夜が近づく日没間際になると、人間は異形の者を恐れてあまり家から出たがらなくなり、村の中心部から外れ――森に近い野原に足を運ぶようなものは稀だ。
 辺りはひどく静かで風の音ばかりがびょうびょうと響いている。
 その様子に始まりのあの日を思い出し――人を待つべく野原に足を運んだ青い目の青年は少しだけ目を細める。
 うつくしい歌声。同族を焼く弔い火の煙。地上の月のように凛と、佇んでいたしろがね色の狩人の姿。
 思い出すだけで高鳴る胸は、けれど、ここに来た目的を思えば――不快に淀んだ。
(……『狼さん、夜になる前に、村はずれの野原で遊びましょ』か。正体を知られるようなヘマは犯したつもりないんだけどな)
 出かけている間に自宅のドアに挟まれていた手紙の内容を思い出し、内心溜め息を吐く。
 どう考えても、青年が狼であると、手紙の差出人は知っている様子だった。
 面白半分で、開拓村の者たちが『狼』という単語を出すことはない。狼に対する恐怖は、森の傍に生きる者にとっては骨身に染みついたものだ。下手に誰かを狼呼ばわりすることが、どういう結果をもたらすか分からぬ阿呆は子供にもいない。
 であれば、相手は確信をもってその手紙を書いたことだろう。 
 アクシデントは青年にとって、普段ならそう厭うようなものではない。寧ろ、予想通りにならない方が面白い。
 だが、今は。 まだ狩りを始めてすらいない。あの、お気に入りの狩人と遊ぶために下準備をしている所なのに。ここで邪魔をされるのはつまらない。
 相手がこちらを呼び出した理由、何処からばれたのか見当がつかない、というのも厄介だった。
 また事件のひとつも起こしておらず、完全に人間に成りすました狼の正体を見くことは至難である。優れた狩人である大和でさえ、隣人が狼であることには未だ気づいていないことがその証左であった。
 正体がばれるとすれば、村で人食いが起きてからになる。血のにおいと、人間であればしないような言動。それらを見抜いて初めて、人間はどうにか狼を探り、吊るし上げることができる。
 それ以外で狼の正体を見抜くすべと言えば――
「……」
 そこまで考えたところで、青い目の青年は思案から周囲へと意識を戻す。新たな人の気配を感じたためだ。


「やあやあ、待たせてごめんね?」
 へらりと軽薄な笑みを浮かべて現れたのは、鳥打帽を被った若い男だった。この辺りではまだ珍しい品である眼鏡をかけている。
 ジョーと呼ばれている人間だと、青年は村に来てからの記憶の中から相手の名前を引っ張り出す。
 人間に化けた青年たちが村を訪れるよりも前に、恋人を不幸な事件でなくした男だと――うわさ好きの村人が頼んでもいないのに教えてくれた。
 何度か顔を合わせたことがある。何時も笑ってはいるが、内心を読ませないという印象だった。その時、特別変わった会話をした覚えはないのだが。
 ジョーは今日も薄っすらとほほ笑んでいる。その奥で何を考えて居るのかはやはり読みづらい。ただ、今の所敵意があるわけではないらしいことはニオイで分かった。
「今来たところだよ。俺はよんだのはアンタでいいのかな、ジョー」
「そうだよ。来てくれてありがと。君とサシで話がしたくてさ」
 笑いながらジョーは青年に歩み寄ってくる。気安い、親しい人間を相手取っているかのような緊張感のなさだ。
「話がしたくて……ね。あのお誘いは随分悪趣味だったけど。誰かに見られて誤解されたらどうする」
 ひとまずは探るように言葉を向ける。すると、ジョーは直ぐ近くで足を止め、青年の青い目を覗き込むようにしていった。
「そういう探りとか隠し事とかナシにしようよ。解ってるよね? オレが、君たちの正体を見抜けるってこと。……ねえ、狼さん」
 瞬間、青年の青い双眸がぎらりと物々しく輝いた。瞳孔がぎゅうっと急激に細まって獣の形となり、周囲を夜の気配がじわじわと侵しだす。この男は、自分たちの天敵の一種であると、青年の本能が察していた。
 何の証拠も必要とせず、狼の正体を見抜く方法がひとつだけある。それは、時にひとに表れる異能のちから。
 対象の顔と呼び名さえ分かれば、人外の正体を、理屈も道理も何もかも一足飛びにして見抜く眼を持つ『占い師』は、ある意味では狩人以上に狼の天敵だった。
 元来、狼が周囲の誰かを殺すことをスイッチに、狩人以外の異能のちからは目覚めることが多いが、そうでない覚醒も皆無ではない。
 この男が目覚めた占い師であるなら、目的が何であれ、放っておけるはずはない。占い師をどう始末つけるかは狼の狩りにおいて重要な争点である。普段ならこのイレギュラーも純粋に楽しんだだろう。だけれど、今回の狩りは特別なのだ。この胸を焦がす、あの銀色と命がけで遊ぶのに無粋な邪魔は要らない。
 早々に食べてしまわなければ、遊びの盤面を作り上げる前に壊される。そう判断して、青年は狼の本性を露わにここでジョーを手にかけようとしかけたが――
「怖い顔しないでいいよ? オレは別にこのことを誰かに告げ口するつもりはないんだ。オレは君たちの味方だよ。ずっと、君たちがこの村に来るのを待ってたんだ、オレは」
 ひとを容易く引き裂く狼の爪牙、その射程にいるにもかかわらず、ジョーは笑いを崩さない。寧ろここに来てはじめて彼は本当に心から笑ったようにも見えた。
 その黒い目には焦がれの熱が浮かんでいる。まるで、この場で殺されてしまっても構わないかのように。
 あまやかな陶酔。その奥のくらいくらい絶望と愛憎。青年は理解する。そういう目をした人間に、以前にもあったことがある。
「アンタは狂っている。人間は俺たちの味方にはなれないよ。果ては吊るし首か腹の中。解って言ってる?」
「知っているよ。それでもいい」
 返答に確信を得て、青年は目と、のばしかけた爪と牙を元の人がましいそれへと戻した。ジョーは何処か残念そうな顔をしたように見えた。
 人から見ても狼から見ても、その存在は狂っている。
 人間でありながら、狼に味方をする人間。時に自分たちが殺されることになっても、狼に利する行動を成す人間の裏切者。


 この男は――ジョーは、ひとを守るための力が宿った占い師でありながら、同時に『狂人』なのだ。


「君が『彼女』に似たあんまり綺麗な目をしているから、もしかしてって思ったんだ。村に来る人は大体『見』てるんだけど、君は一番に調べたよ。そうしたら、オレの待ち人だった」
「なんで。アンタは別に村に馴染んで、村の人間とも親しくしているようだったけれど?」
 青年の知る限り、ジョーは村の人間とはどの人間ともある程度仲良くしているように見えた。
 言われてみれば深い付き合いをしている相手はあまりいないようであるが、村に狼が来ること――即ち村の破滅だ―――を望むようには到底見えなかった。
「君の目から見てもそう見えるなら、オレの演技もなかなかのものかな? ……オレはね、こんな村なんて大嫌いなんだ」
 不意にジョーの目から笑みが消えた。感情という感情が失せて、ただ虚無だけが横たわっているように思えた。
「もしかして、死んだっていうアンタの恋人は」
 大切なものを失った人間の目だと青年は思い当り、青年はジョーのほうを見た。ジョーは目を伏せる。虚無ではなく哀惜がその横顔に浮かんだ。
「うん、君たちと同じ狼だったよ。やさしい子だった。人間のふりをして、七年間人間を食べなければ、狼じゃなくなって人間になれるって信じてた。あとちょっとで、七年だったのに――性質の悪いのに絡まれてさ。殺したのは事故だった。だけど、君たち狼は難儀だね。自分の手で殺したらその相手は、ちゃんと食べないとダメなんでしょ? オレが遅くなっても帰って来ないあの子を迎えに行ったら、あの子は泣きながら、自分が殺してしまった――自分を襲った人間を食べてた。それでも、オレ、彼女のことが本気で好きだったから、悩んだけど、食べられてもいいから一緒に居るつもりだった。……けど、断食ってこわいね。絶ってた分、反動が一気にくるんだもの。彼女は人間の味が忘れられなくなっちゃった。また食べたくなって、でも一番傍にいた人間のオレを食べたくなかったから、他の村人を食べた。そのうち――狩人が呼ばれた。後はまあ、優秀な狩人さんが彼女を殺して終わらせたよ」
 青年が初めて狩人を見たあの時に、焼かれていた狼が、ジョーの語る彼の恋人なのだろう。ヤマトならば、どのような背景があろうとも、躊躇せずに狼を割り出し、狩り取っただろうことは想像に難くない。
 狂人が狼に味方する理由は様々だが、この男の場合は恋人だったという狼への愛情と、それゆえの絶望が根底にあるのだろう。
 しかし、人間になりたい狼とそのための方法については、永く生きている青年も初めて聞いた。眉唾かもしれないが、ジョーと恋人だったという狼にとっては真実だったのだろう。約束の七年を前に人を喰らわざるを得なかったその狼の不運を心底嘆いているように見えた。
 一息に話し終わると、ジョーは疲れたように目を伏せた。
「オレのことも一緒に終わらせてくれたらよかったのに。だけど、狩人は狼しか狩らないみたいだからさ」
 それはそうだろうと青年は内心で相槌を打つ。ヤマトは冷酷な人殺しなどではない。人を守るために狼を殺す、そういう人間だ。ジョーがもしも恋人と同族であったなら、彼の願いは即座に叶えられたのだろうが。
「ねえ、狼さん、この村を滅ぼしてしまってよ。オレも協力するから。……自殺はできないんだ。彼女が、オレに後追いはダメだって言ったからね。この村が終わったら、そうしたらオレはやっと彼女の所に逝ける」
 天寿を待つのはあまりに長すぎると、ジョーはどこか毀れた笑みを浮かべ、切実な懇願を口にした。
 ジョーの絶望の根底には自己嫌悪も見て取れる。
 彼女の死の際に何もできなかったことを悔いているのか、あるいは自分がいたから彼女が森へ帰ることができなかったと思っているのか。そんなところだろうと青年は見る。
「言われなくても、この村はもう俺たちの狩場だよ。アンタの願いはその内にかなうさ。だから、まあ、普通に『占い師』として振る舞ってくれればいい。不審を煽らない程度に幾らか無能で居てくれれば十分助かる。相談して的確に頼みごとをできるならまた別だろうけど、アンタには狼の遠吠えは聞こえないだろうからね」
 ことがはじまれば、狩人も村人も警戒を強める。手紙やこういった相談は確実に誰かの目に留まってしまうだろう。狼同士なら人間には聞こえない吠え声によって意思疎通も可能だが、狂人にはその手段は使えない。
 それでも、占い師が狂人であるというだけで、随分と狩りは楽で退屈なゲームになることだろう。占い師にこちらの傀儡でいられては困る。青年は軽く肩を竦めて見せた。
「ああ、言っておくけど不用意に狩人を狼だっていうのだけはやめておきなよ。その瞬間に、アンタはヤマトに敵認定されるだろうから」
 自殺はできないんだろう? と言えば、ジョーは仕方ないねと苦笑した。
 死にたいだけなら、その手が一番早いだろうが、この村が嫌いだという気持ちも確かにあるのだろう。ジョーは頷いて見せる。
「まあ、それじゃあオレは適度に怠け者で役に立たない占い師として頑張ることにするよ。そういうわけで他の狼さんにもよろしくね」
 君がリーダー格だと思ったから声をかけたんだ。そう口にするジョーは、占い師の力を抜きにしても、ある程度他人を見る眼があるようだ。
 仲間たちにはこの男を必要にならなければ齧らないように言っておこうと、青年は決める。
「こちらこそよろしく、共犯者さん」
 おどけて人間を真似て握手を求めると、ジョーはその手を握り返してきた。
「……君たちの手もあたたかいんだよね。こうしているとほんと、違いなんてないのに」
 なんだかしみじみと口にする。何を思い出しているのか、その目が伏せられた。おそらくは、狼だったという恋人を思い出しているのだろう。
 いつも思うことだが、狂人というのはどうにも不安定で、感傷的な生き物であるように思う。
 ジョーは狼を難儀と称したが、彼の方がよほど難儀に生きているように、青年には思えて仕方なかった。


「可哀想に」
 それは、ジョーにか。死んだ狼の娘にか。占い師という狼に対する最大の札を元より失う形となっているこの村にか。それともあの狩人にか。全てであるのかもしれない。
 人でない者の目には、人間というのはどうにも複雑怪奇で、生き辛そうに見える。
 だというのに、そういう生き物に憧れる同族も出てくる。決して幸せにはなれないだろうに。
 
 


 狼が紡いだ憐憫の言葉に、ジョーは笑うばかりで何も言わなかった。


 ***


 それから数日後、はじまりの犠牲者が無残な姿で発見されることとなる。


 まどろみのような平穏はここに終わりをつげ、狼と人の知恵比べ、命賭けの隠れ鬼が始まった。


 

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