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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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※お世話になっているナナセさん宅の
乙女大和ちゃん(男として生きているが、心は女の子な局長)主人公さん(二宮 海仁さん。実力主義ルート選択の王子様系イケメン)の設定をお借りして書かせて頂いたお話です。

お付き合いしている主ヤマで、乙女ヤマトちゃんの誕生日を海仁さんがお祝いするだけの話。
甘くてイチャイチャした、少女マンガ的な雰囲気を目指しました…!


乙女大和ちゃんたちについては、
詳しくはナナセさんのサイト「BLUE BLOSSOM」成人向け表現有のサイト様ですのでご注意ください。また惜しくも八月末で閉鎖とのこと。気になる方は閲覧御早目に…!)をご参照くださいませ。


なゆたのイメージで書かせて頂きましたので、間違い・違和感等あるかもしれませんが、寛大な心でお読みいただけますと幸いです。
他の御方の設定をお借りして書かせて頂くのは新鮮で楽しかったです。




 執務室にて予定を確認していた所で、大和はもう時節が水無月に差し掛かっていることを改めて思い出した。
 気候は随分と暖かく、時々湿気を帯びて鬱陶しくもある。直に雨が増えて梅雨になるだろう。
 それは同時に、大和にとっては自身の生誕日が近いことも意味している。
 改まって自覚すると、自然、大和の形良い眉が寄せられていた。

 峰津院大和にとって毎年訪れる誕生日は、決して喜ばしいものではなかった。


 歳を重ねることは即ち肉体の成長を意味する。内面とは裏腹に、少しずつ『大人の男』に近づいていく身体に違和感が増して仕方ない。誕生日は大和にまざまざと現実を突き付けてくる。それが堪らなく嫌だった。
 幸いにというべきか、大和の身体は男性ホルモンの分泌が控えめだったようで、第二次性徴を迎えた今でも体毛はごく薄いものだし、骨格も同年代の男性と比すれば随分華奢だ。普段大和を鎧う厳めしいジプス制服を脱いでしまえば、その印象は中性的なもの――ともすれば女性的に見えるかもしれない――となるだろう。それでも声がわりを自覚した時は、高音を出しにくくなった咽喉を捌いてしまいたくなった。
 大和にとって性自認と肉体の違和は深刻な問題であり苦痛だった。成人が近づけば、男として妻を娶ることも勧められる。歳を重ねる機会にと見合い写真が持ち込まれることは何度もあった。誕生日はそのことを改めて自覚させる行事だった。


 世界が実力主義の理の元革められ、あらゆる立場や役割は血筋や権威に依るものではなく、純然たる能力のみに保障されるものとなった現在、大和を煩わせる婚姻話が持ち込まれることはなくなったが、それでも誕生日が近づくとあの頃の鬱々とした時間を思い出す。
 それでも傍目に読み取られるような愚は侵すまいと平静に務めていた。つもりであったのだが。
「大和、どうしたの。なんかさ、気分悪い?」
 この世界にあって大和と並び立つ唯一の存在である男――二宮 海仁が、青い瞳を瞬いて、不意に横から覗きこんでいた。その手には書類があり、報告のために大和の部屋にやってきたのだろう。
 彼が部屋に入ってきたことに気付けなかったことを恥じたくもあったが、海仁は時々ノックを忘れる癖があり、またその気配や存在は大和に馴染み、ほとんど警戒を呼ばないのだ。それほどの信頼を、大和は海仁に寄せている。
 そんな彼は、大和の変化や内心に敏感で、他の誰にも気付かれない大和の些細な感情や状態の起伏さえ、ちゃんと察してこんな風に気遣ってくれるのだった。
「……何も、」
「ない、とは言わせないよ。何でもないなら、こんな顔、しないだろ?」
 海仁の、男らしく大きな手が大和の白い頬に触れてくる。やさしい触れ方に、一瞬大和の心臓がとくんと跳ねた。
「憂鬱、って顔してる。梅雨が増えて過ごしにくい気候になってきたから、気持ちも重くなってきちゃった?」
 軽い物言いながらも、彼の視線は大和に据えられ、反応をしかと窺い見ている。大和の返答如何で踏み込むか、流すか決めようとしているのだろう姿勢。話したがらないことを無理に聞き出すことはしないが、それでも必要と判断したのなら戸惑わない。その匙加減は絶妙で――だからこそ信が置ける。
 海仁の存在に、大和は随分と救われている。他には話せないことでも海仁になら話せる。託すことができる。そういうことは数多い。くだらないこと、話してもどうしようもないこと、そう大和が思える事柄でも、彼は親身になって話を聞いてくれるのだ。
「海仁。休憩時間になったら話す。だから今はまず、その書類を渡したまえ」
 大和が少しだけ気を抜いた微笑を浮かべて見せたので――仕事より思わず恋人を気遣うことを優先してしまった自分を自覚したか、海仁は少し気恥ずかしそうにしつつ、手にした報告書を大和に提出した。


 ……暫く後、休憩時間。


 大和と海仁が使っている休憩室にて、大和は自身の気鬱について説明した。ソファに隣り合って座った海仁は、笑うでも流すでもなく大和の話に真面目に耳を傾けてくれる。
「大和は綺麗だよ。誰より綺麗で可愛い。俺が保証する」
 話し終えたところで、確りとした腕の中に抱き寄せられた。やすい同情が欲しいわけではない。それでも、愛しい男に抱き締められ、女子に向けるような言葉をかけられると、陰鬱さが、不安が晴れる心地がする。
 今でも身体の違和感は消しようもないし、気分が悪くなることもあるが――海仁は大和を同性ではなく異性にするように優しく丁寧に扱う。大和の性自認が見た目通りであれば、それはともすれば屈辱であることだろうが、少女のこころを身の内に宿す大和を慮ってのことであると理解できるから――甘えられる。少しだけ自分を許せそうな気持ちになる。
「すまない。君には甘やかされてばかりだな」
「いいの。俺がしたいんだから」
 腕の中、上目づかいに見上げると、大和の恋人は何の気負いもなくさらりと甘いことを言う。
「でも、気になるんだったら、一個俺のお願い聞いてほしいな」
「何だ? 君がお願いなど珍しいな」
 それでも彼の望むことがあるなら叶えてやりたくて、先を促す。すると海仁はにっこりと魅力的な笑顔を浮かべてこういった。
「今年の大和の誕生日、その日一日の時間を俺に頂戴? 誕生日が嫌なだけじゃないように、思い出づくりをしよう」
「……。……まったく、君にはかなわんな」
 どこまで私に甘いのだ。はにかむようにしてそう言いかけた言葉は、大和の態度から願いごとが了承されたと判断したのだろう――喜色を浮かべた海仁のくちびるが下りてきて、形にならなかった。


  ***


 恋人の願いごとを受けて大和は六月十日を休日とした。勿論海仁も一緒だ。
 ジプスの頂点に立つふたりは多忙な生活をしているが、近頃は優秀な人材も局内に増えてきた。それまでは大和たちでなければ難しかった仕事も、ある程度割り振ることが可能になってきている。世界改変の直後は、ごたごたとして休みのない日々が続いていたが、近頃は一日二日程度なら休暇をとることが可能であった。 


 昨晩から海仁と大和は共に過ごしていた。日付が変わって誰よりも早くにおめでとうが言いたいんだ、そう言われて悪い気はしない。やわらかい羽のようなキスを交わしながら、真夜中を迎え――恋人から囁かれた誕生日おめでとうの言葉は何より甘く愛しく、大和は初めて、誕生日を晴れやかな気持ちで迎えることができた。


 
 曇りガラスの向こうから差し込む光は明るい。朝風呂とは随分と贅沢をしていると大和は思うが、これも海仁の希望だった。
 甘いミルクのにおいがする入浴剤を溶かしたバスタブに、ふたりで身を沈める。
 半透明の乳白色にけぶる湯は、全裸を海仁の前に曝すことに、まだ微妙に抵抗のある大和にとってはありがたい。
「ヤギのミルクが原材料に入ってて、お肌に良いんだって」
 どこから情報を仕入れてきたのかそんなことをいいながら、入浴で火照りつつある大和の身体を、海仁は後ろからやさしく抱擁してくる。大和の私室にあるバスルームとバスタブは広く、ふたりで利用しても問題はない。
「大和の肌は、余計なものなんかいらないくらいスベスベだけどさ」
 きもちいい、と頬に頬が摺り寄せられる。くすぐったくて身をよじると、ますますぎゅっと抱きしめられた。
「君の肌も、きもちがいいぞ」
 言いながら、少しだけ力を抜いて、大和は背後の男に身を預ける。無駄なく筋肉のついた胸板の確かな感触に目を細めた。
「そう? ヤギミルクの力かな」
「そんなに早く効果は出るまい」
 くすりと笑い合ったところで、海仁は大和の身体を自分の方に向かせる。
「なあ、大和。俺、大和の身体、洗いたいな。洗ってもいい?」
「それは……」
 大和は息を呑んで目を伏せる。男の身体であっても、海仁は大和をいつくしみ愛してくれる。肌を重ねたこともある。だが、その時は何時だって薄暗く明かりを落した閨のなかでだ。こんなにも明るいバスルームで、大和のすべてを見た海仁は幻滅してしまわないだろうか。
 そのような器の狭い男ではないと頭では分かっていても、その恐怖は何時だってついて回る。大和はまだ、思いきることができない。
「……ごめん。意地悪言った」
「いや、君は悪くない。私の意気地が足りないのがいけないのだ」
 先に海仁が折れてくれて、ほっとしつつも罪悪感を覚える。海仁の望むことはできれば叶えてやりたいのに。
「その、海仁」
 大和はだから精一杯の勇気を振り絞る。ぎゅっと恋人の首に腕を回して、ひそりと囁いた。
「背中だけなら、いい」
「! ほんと?」
「ああ、その代り、私も君の背中を洗いたい。構わないか?」
「寧ろ大歓迎!」
 勇気を振り絞った提案は、恋人を喜ばせることができたようだ。よかったと大和は安堵の笑みを浮かべる。
 そうして二人は、背中の流しっこをした。海仁は大和の白くなめらかな背中が眩しいと嬉しそうで、大和も海仁の逞しい背に触れることができて胸が高鳴った。
 ベッドでするセックスとはまた違う、互いの身体を確かめるような触れ合いは――これはこれで胸を温かくときめかせるものだった。


  ***


 芯まで温まるくらいに入浴の時間を楽しんでから、ふたりは浴室を出た。
 ほこほこと湯気を帯びる肌を、タオル生地のバスローブに包み、大和は椅子に腰かけて恋人を待つ。
 直ぐに着替えなかったのは、したいことがあるからと海仁が一旦場を離れたからだ(彼は早々とカジュアルな服装に着替えていった)。
 手持無沙汰であったのもわずかな時間のことで、彼は直ぐに大和の元へと戻ってきた。


「お待たせ、大和」
 彼の手には衣類が入っていると思しき薄手の袋と、それから大き目のポーチが一つ。
「海仁、それは?」
「お姫様に魔法をかけようと思って」
 座ったままでいてね、と言われたので大人しく椅子の上から見上げると、海仁は手早く化粧水やスキンクリームをポーチから取り出して、湯上りでしっとりとした大和の肌へとやさしい手つきで順繰りに塗りつけていく。
「折角の誕生日だから、大和に可愛い恰好してもらって、ふたりでデートしよう」
 この日のために勉強してきたから俺に任せて? なんて言われてしまえば、大和は海仁に逆らうことなど思いつきもしなくなる。女の子らしい恰好をしたい。それは常々大和の望みとして存在するものだが、立場もあればなかなか実行に移すことは難しい。
 これまでに何度かお忍びでデートをしたことはあるが、どうしたって夜の人気のない時間を選ぶことが多かった。明るい日の光の下を、憚ることなく海仁と出歩くことができたなら。それはどんなに素敵なことだろう。
 ささやかな望みを想い、ほんのり薄紅色に頬を染めた大和の顔にやわらかなコットンが触れる。肌に馴染む自然素材の美容化粧品。全部、大和の為に探してきてくれたのかと思うと、胸がいっぱいになる。
 自分で選んだ服を着ることも楽しく嬉しいが、恋人が大和に似合うだろうと用意してくれたものに袖をとおすことにはまた違った喜びがある。
「君に、私を委ねよう」
 海仁がどんな風に大和を飾ってくれるのか。今から楽しみで自然と表情が柔らかくなった。
 お任せあれ、と。下地を塗り終わったらしい海仁はウインクをひとつしてみせた。


 その後、化粧水やクリームが肌に馴染むのを待つ間に着替えてほしいと頼まれた。
 じゃーん、と海仁が袋から出して見せたのは、甘い色合いをした年頃の少女が好みそうな――それは大和にとっても好ましくある――可愛らしい洋服であった。
「大和の白い肌には、モノトーンもいいけどやっぱりピンクとかやさしい暖色が映えるよ。前に大和が着てたピンクのスカートもよく似合ってた」
 そういって大和の腿辺りにあてられたのは、フレアシルエットがふんわりと柔らかい印象を与えるハイウエストタイプのスカート。色合いは淡いシャーベットピンク。裾からは清楚な白いシフォンが覗いている。
 ついで取り出されたのは、同色のゆったりした半袖ブラウス。全体的にシンプルなデザインだが、袖口と襟元を繊細なレースが幾重にも飾り、襟を止めるのは深みのあるワインレッドのリボン。上着はもう少し色の濃いピンクのカーディガンで、つやつやとした真珠光沢のある飾りボタンが美しい。
「足元はサンダルにしようよ。大和、足きれいだからさ」
 靴下やタイツがないのはそういうことらしい。これを身に着けて彼の隣に立つ自分を大和は想像してみる。似合いの恋人同士に見えるだろうか。そうだといい。
「着替えてくる」
「楽しみに待ってるよ」
 渡された服を大事に抱えて脱衣所に向かう大和の背を、見送る海仁の目は穏やかな光を湛えていた。


 着替えてみると、衣服はまるで誂えたようにサイズがぴったりだった。
 しかも、着てみて気付いたことだが、肩や首など幾らか男らしさが出てしまって気になる辺りを、服のラインやデザインが見事に隠してくれる。試しに姿見に映してみた姿は、普段以上に少女めいていた。
 こうして女性らしい服装に身を包むと涙が出そうなくらいに安心する。身体にいつも感じている違和感が、この時だけは柔らかく溶ける。しかも、今日は海仁が大和のために用意してくれた服で、女子としていられる。息が止まりそうなくらいに嬉しかった。
「……どうだ?」
 いそいそと海仁の前に着替え終わった姿を見せると、彼は一つ瞬きをしてから、
「想像以上だ。すごくよく似合ってる」
 かけられた言葉に大和の胸はますます高鳴る。
「でも、まだ終わりじゃないよ。もっともっと可愛くしてあげるから」
 なのに、海仁はこれ以上があるという。言いながら彼は化粧道具を取り出して――時間をかけて大和を更に飾り立てていくのだった。


 ファンデーションは殆どつかわずとも大和の肌は白く艶やかだから最低限に。
 睫毛も盛るまでもなく長いから、カーラーとリキッドで際立たせるにとどめるが、それでも随分印象が変わる。
 チークは地肌に違和感のないベビーピンク。
 仕上げはパールピンクのグロスをくちびるに引いて、桜の香りのするパフュームをふりかけて出来上がり。
 この日のために勉強してきた、と言っていたが、大和の予想以上に本格的に、海仁は大和を着飾るための技術を身に着けてきたようだった。
 手足には丁寧にもやはりピンク系のつやつやとしたマニキュアやペティキュアが塗られている。爪の形も、彼が丁寧にやすりで整えてくれた。
 銀色のやわらかな髪もまた梳られ、ポニーテールに纏めたうえで、襟元のリボンと同色のシュシュが華やかに飾り付けられる。
 鏡に映る姿は少女そのものと言っていい。これが私か、と、大和は夢を見るような気持で鏡に映る自分を見つめていた。


「ほら、俺の恋人は世界で一番美人で可愛い」
 夢心地の大和に、これが確かに現実だと教えてくれたのは、この装いを施した恋人の声だった。
 これでお出かけしても、大和がジプスの局長なんて気づかれないよ。
 悪戯な子供のような顔をして、海仁は自信たっぷりに言う。
 確かに、こうして可愛らしい少女めいた装いに身を包んでしまえば、普段の大和を知るものほど雰囲気の違いに別人であると判断しそうだ。
「お手をどうぞ、俺のお姫様」
 海仁の手に、大和はおずおずと自分の手を重ねる。マニキュアが乾いていることを確かめて、海仁は大和の手をしかと握った。
「今日は何処に行こうか? 行きたいところ、ある?」
「海仁と一緒なら何処でも良い」
「欲がないなあ、大和は。それじゃあ、一緒に決めよう。デート向けのスポット特集が載ってる雑誌でも読みながら、さ」
 任せて貰えば幾らでもエスコートをするだろう海仁であるが、そうしてどこに行くかを二人で考える時間もまた楽しいと思っている様子である。
 今日という日は始まったばかりだ。こうして一日彼と共に過ごせるのだろうと思うと、自然、大和の表情は綻ぶ。
「大和、すごく可愛い顔してる」
「……そうか?」
「うん。独り占めしたいくらい」
 戯れとも本気ともつかぬ様子で言ったあと、海仁は大和の手を引き上げて、すべすべとした手の甲にキスをする。
「君が望むなら部屋で逢引することもやぶさかではないが」
「それは大変魅力的な提案だけど、俺の大和はこんなに素敵なんだって見せびらかしたい気持ちも同じくらいあるから、気遣わなくてもいいよ」
 その言葉に大和は耳まで赤くなる。今の自分が海仁にとって自慢したい彼女に見えるなら、とても喜ばしい。
「君も、何時も通りの男ぶりだぞ、海仁」
「大和の隣に立つんだからね。大和が恥ずかしくない俺で居るつもりだよ」
 その自負は口ばかりでないから心地良く、笑った顔は堪らなく魅力的だ。
「海仁、君が隣にいてくれてよかった。君がこうして祝ってくれるなら、今日という日も幾らか意味があるだろう」
「何言ってるのさ。今日はすごく大事な日だ。大和が生まれて、生きてきてくれて、感謝してる。誕生日おめでとう。生まれてきてくれて、ありがとう」
 だから、今日も、来年の今日も、その先も、大和にとっても喜ばしい日でありますように。
 祈るように告げられて、大和は静かに瞳を細める。
 感謝の気持ちを、いとおしさを、どうしたらもっと彼に伝えられるだろう。
 自分からこんなことをするのははしたないかもしれないが――少し戸惑いつつも、大和は海仁に顔を近づける。意図に気付いた彼は目を合わせて、すこし悩ましげに言った。
「……いいの。グロス、落ちちゃうよ」
「そうしたら君がまた綺麗に塗ってくれるだろう?」
 淡く色づいた大和のくちびるは、そう紡ぐのとほぼ同時、海仁のくちびるへと重ねられていた。ちゅ、と甘いリップノイズを立てて、互いに互いの口を吸う。
「大和が望むなら、何度でも綺麗にしてあげるよ」
 キスの合間に囁いて、今度は海仁が大和のくちびるを奪う。恋人たちのあまやかな口づけの音は、幸福と共に暫く部屋を満たし続けた。


 大和にとっての、はじめての幸せな誕生日はまだまだ始まったばかりである。


 おしまい。

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