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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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49光年=ふたご座アルファ星カストル(双子の兄の頭)までの距離。

双子座流星群を見ていたら、気分が盛り上がりすぎて眠れなくなったので書いたもの。
流れ星を二人で見に行くウサミミと大和の話。
このクラスをツイッターで割と流すので偶にちょっと申し訳ない。

回帰の後のような、実力主義のような。
何にしろEDも一緒にいて、くっついてるけど局長のことが大好きな分ちょっと不安なウサミミと、ウサミミだけを優先できないけどそれでもできる限りで彼のことが大好きな大和さんのお話です。


「さむい! ちょうさむい!」
 何時もより厚手のパーカーを羽織り、マフラーをぐるぐると巻き付けた北斗が首をすくませて繰り返す。
「冬に暑い方が問題だろう」
「解ってるけどさ、つい口から出ちゃうって言うか」
「そんなに寒いなら戻るか? 明日も朝は早い」
 大和の言葉に、しかし北斗ははっきりと首を横に振る。
「やだ。勿体ない。だって今夜は流星群なんだろ。それに」
 白く息を弾ませながら北斗が笑う。青い瞳を喜色に輝かせて。
「折角大和が誘ってくれたんだからさ」
 そう。こうして二人、まだ開発の進んでいない郊外までやってきたのは、流れ星を見る為だ。冬の凍て澄んだ夜空は、星を観測する上で絶好の環境である。
「なら少し我慢しろ」
 北斗の返答を受けた大和の声は心持ち優しい。ウン、と素直に頷いた北斗は満天の星空を仰ぎ見る。
「灯がないと星が沢山見えるな。あれ、あの三つ並んでるのがオリオン座?」
「そうだ」
「で、赤いのがベテルギウスだろ」
「ああ、そしてオリオンから南西に青白く明るく輝いているのが……」
「シリウス! それ位は俺も解るよ。あと一個と繋いで冬の大三角形だろ」
 三角を構成する最後のひとつを探す北斗に、大和の白い指が空の一点を指す。
「あれだ。あの白い星がブロキオン。こいぬ座のアルファ星」
「おおいぬ座だとシリウスで、オリオンだとベテルギウスがそうだっけ」
 指先で北斗は三角をなぞる。 視線は遥か上天に向けられたままだ。
「星座って、言われて見てももあんまりピンとこないけど。昔の人って想像力豊かだったんだなって感心する」
「今よりも星を眺めて思索に耽る時間が長かったのかもしれんな。かつては夜はもっと暗く長かった筈だ」
「ああ、明かり少なかっただろうしね」
「私も幼い頃はよく星を眺めて過ごした」
 珍しく大和が昔を懐かしむようなことを言うと、北斗は興味を持ったように目を瞬く。
「修業の一環とかで?」
「それもあったが……純粋に消灯の時間が早かったのだ。夜は魔が活発化する。浚われては敵わんという訳だ。眠れぬ夜は星を数え、自分で星座を考えもしたな」
 私にもそういう稚気があったのだと大和が零せば、手袋をつけた手がわしわしと柔らかな銀髪をまぜっ返す。
「いいじゃん。夢があって。どんな星座を作ったの?」
「……。……菓子」
「え」
「和菓子を星座にした。悪いか」
 些か不機嫌そうな声は照れ隠しのようでもある。大和にしては随分と茶目っ気がある話だ。北斗は一度目を丸くした後、喉を鳴らして笑った。
「お前、案外食い気があるよなぁ」
「子供の頃の話だ。もう忘れろ」
「いや、可愛いよ? ……って、あ! 流れた!」
 すっかり話に夢中になっていたが、視界の端に尾を引く光を見つけて北斗が歓声を上げる。つられて大和も空を見あげれば、次々と流れる星の姿があった。
「凄いな」
 短く呟いた声は弾んでいた。
「俺あんまり流星群をちゃんと見れた試しがなかったんだけど、郊外だとこんなによく見えるんだな」
 話している間にもひとつ星が流れ落ちていく。
「君はきっとこういう天体ショーと呼ばれる類は好きだと思っていた」
「うん、綺麗なものや珍しいものを見るのは好きだよ。お前と一緒だから、余計にね」
「まったく口の立つ男だ。ほら、また降ったぞ?」
「どこどこ? って言ってる間に消えちゃうか」
「次がある」
 そうして二人、流れる星を飽かず探して眺める。童心に帰ったように無邪気で穏やかな時間だった。
「……綺麗だけどずっと見てると首が痛いかも」
「鍛練が足りんな。だが予想はしていた。これを使え」
 暫くして北斗が首を押さえながら言っ葉に、大和は脇に抱えていた鞄からビニール製のシートを取り出す。
「これを敷き、上に横たわってみればよかろう」
 幸いにしてここは開けた場所である。寝転がるにも不都合は少ないと、言いながら大和は手際よくビニールシートを設置しおえた。更に薄青いブランケットも差し出して来る。
「風邪を引かれては差し支えがあるからな」
「何持ってるのかなってずっと気になってたんだけど、わざわざ準備してくれてたのか……」
「感心するより、早く寝たほうが良いぞ。星は待ってはくれまい?」
「ん、なら、さ――」
 ブランケットにくるまり、シートに腰を下ろした北斗は、少し毛布を開いてみせる。隣にと促すように。
「大和もこっちこいよ。一緒のがあったかいし」
 誘う声に、大和は幾らか逡巡したが――
「暖をとる為だ。仕方ないな」
「うん、仕方ない」
 最終的には招く北斗の隣に行き、諸共に横たわる。人目も人気もない夜間の郊外だからこそ、少しだけ大胆になることができた。
「もうちょっとくっついた方があったかいよ」
「星が見えにくくはないか?」
「大丈夫」
 話ながら座りの良い位置を互いに探し、やがて自然と毛布の中、息が触れ合う程の至近が定位置になった。
「しずかだね。星がながれる音が聞こえるかな?」
 息を潜めるように北斗が口にした言葉に、大和は唇の端を持ち上げる。
「君は随分とロマンチストだな。どれだけ距離が離れていると思っている?」
「でも、あんまり静かだから。こうしてると空と星の他になんにも見えないし。ちょっと前も思い出す」
 ほんのかすかに北斗が目を伏せた。少し前。それは忘れようにも忘れられないあの七日間のことだろう。
「君はあの試練の中、真夜中によく外に出ていたな」
「夜になるといろいろ考えちゃって中々眠れなくてさ。明かりのない壊れた街を見てると気分が沈んだから、見えないように星ばっかり見てた」
「……そうか」
 北斗の告白を大和は口を挟まずに聞く。素っ気ないというよりは静かな相槌のこえだけを返した。
「今だから言える話だけど。皆の前では考え込んだり、暗い顔したくなかったし。幻滅した?」
「そこで一人飲み込んで通した君を笑いはすまいよ」
 大和の指がそっと北斗の頬に触れる。労る手つきは不器用で、だか北斗は嬉しそうに目を細めた。そのつたなさが愛しいように。
「下手に誰かに甘えたらダメになっちゃいそうだったから言えなかっただけ。結構いっぱいいっぱいだったんだよ」
「今ならわかる。しかし、悪いことをしたか? 君にとってこうして星を見ることは複雑な気持ちになるものだったか?」
 問い掛けへの答えは、大和に回された腕の感触だった。その腕はどこまでもやさしい。
「ひとりで見る星とふたりで見る星は全然違うって思ったよ。誘ってくれてありがとう、大和」
 降り続ける星を見上げて微笑んだ北斗の瞳にも、あかるく輝くあおい星が宿っていた。
「ならば良い」
 地上の星を見つめた後、北斗の傍らで大和も空を見上げる。
「これだけ降ってるんだから、お願いし放題かなぁ」
「あんな俗説を信じているのか? 第一星が流れる間に三度も願いは唱えられまい」
「なら流星群全体に一個叶えてもらうことにしよう。叶えば儲けものってことで」
「……君が何を願うかには興味がある」
 あまり欲のない男だと、大和は北斗を見ている。 だからこそ彼がどんなことを願うのか、気にかかるようだった。
「俺の願いは一個だけだよ」
 すると北斗は真剣な表情で呟いた。
「お互い長生きしようね」
 音無く静まりかえった夜の闇に響く声は、祈るに似た切実さだった。
「人間、寿命の限りは決まってるし、限界まで生きても、あと何十年、何千日、何万時間一緒にいられるかなんて解らないけどさ。できるだけ、長く一緒にいたいよ」
 いつの間にか北斗の目は、流る星ではなく、大和のほうを見ていた。
「星が願いを叶えるとは限るまい」
「叶えば儲けものって言っただろ。それにさ、こうして口にしたら、お前はきっと俺の願いを覚えて、少しは守ろうとしてくれるだろうから」
 それだけでいいんだよ。優しい切ない顔で、北斗が笑うから。
「……覚えておく」
 北斗の言う通り、大和はその願いを忘れられないだろう。その祈りを常に最優先にする事はできないと解っていながらも。
「うん、それだけで嬉しい」
 延ばされていた北斗の腕は大和をつよく抱きしめて、そこに篭る力は縋るみたいだった。その背にぎこちなく大和の腕が返る。
 やがて、それ以上は言葉にできなくなったのか、どちらからともなく唇を重ねた。

 星は二人の頭上にしんしんと流れ落ち、まだ夜の帳はあけず、すべての秘密を闇のなかに包み隠すと、静かにしらしめるかのようだった。

 


 星が軌道に沿って離れていくみたいに、いつかの別れが必然なのだとしても。
 こんなにも近いのに、時々ひどく遠くなってしまうように感じても。
 いつか流れていく星を、少しでも捕まえていようとする。
 触れていられる今は幸福で、離れないよう握りしめる。

 祈るようにずっと、きみを愛している。

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