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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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「甘美な憂鬱の~」を書いていて、もういっそ本当に局長がプランツドールもありじゃねと思ったので勢いで書いてみた。

パラレルです。パラレルです(大事なことなので二回言いました)。
デビルサバイバー2のキャラクターで観用少女パロというあたまのわるさです。。
雰囲気で書いているので突っ込みどころ満載かもしれませんが基本的にスルーで。
それでもいい、という寛容な心をお持ちの方のみ拝見ください。

局長がプランツで、ウサミミは人間(大学生)。店主はうれたん。という設定でお送りします。

 月を映した水晶のような瞳だった。
 何処までも透徹と、射るみたいに真っ直ぐに、俺を見据えて離さない、光の強い眼差し。
 思わずごくりと息を飲み込む。それくらいに引き込まれた。
 視線の主が人形であることが信じられない。彼(中性的だが少年の輪郭だ)は、確かに"生きている"。
 迷い込んださびれかけの商店街の奥も奥にこの店はあった。
 俺がここに来たのは偶然で、彼に出会ったこともまた同じく。
 灯が細く照らす薄暗い店内、重い絹の緞帳が幾重にもかかった先。
 流麗な細工が施された木の椅子に、ぴんと背筋を伸ばして座っていた姿は、ちいさく華奢で、いとけなくすらあるのに、自分はただ愛される生き物ではないといいたげに、凜とした芯と矜持を持っていた。
 透き通るように白い肌が映える、金糸で縁どられた黒絹の着物。 衣服のほかは白雪と銀で形づくられたような端正な容貌をしていた。
 長い睫毛は月光にふるえる蝶の脚のようで、柔らかそうな銀の髪は室内灯に淡い紫の繊細な陰影を帯びている。
その中で、ちいさな形のよい唇と目尻に微かに引かれた紅だけがうっすらと赤い。見ているだけでも綺麗だけど、触れたらどんな風だろう。
作り物だと俺は落胆する事になるんだろうか。でも触れてみたい。
欲求のままに歩みより、戦慄きを帯びた指をそうっと伸ばす。
近くにいくと彼の身体からは歴史のあるお寺みたいな、古風で品のある香がする。

「おや、峰津院大和が起きるだなんて珍しい事もあるものだ」
 もう少しで彼に手が触れる――という所で後ろから唐突にひとの声がした。
 俺はびっくりして慌てて指を引っ込め、声が聞こえてきた方を振り返る。そこで店内の妖しげな空気と目の前の彼にのまれていた正気も返ってきた。
 そうだ。俺は道に迷って、誰かに教えて貰おうと目についたこの店に入ったのだった。
「すみません……勝手に入っちゃって」
 俺の謝罪に店の人と思しき白髪の青年はかぶりを振った。
「構わないよ。ここはお店だからね。広く外の人間に向けて開かれている」
 アルカイックな微笑で青年は言った。失礼ながらこの人も人形みたいだと思ってしまった。
 血の気の薄い肌や、若くも年上にも見える、左右対象に整った神秘的な面立ち。赤と黒のチャイナ服は体格を隠し、男とも女ともつかない印象だ。
「この店は、観用の人形を売っている。プランツドールという単語に聞き覚えはないかな」
「ああ、噂くらいは…確かとんでもなく高いって」
 でも、俺が目を奪われた後ろの彼のような人形がプランツだというなら、死ぬほど高いことにも納得がいく。
「ただ観用人形は誰にでも売れるものではないんだ」
 青年は淡色の目を俺の背後に向ける。視線の先には俺と目があった彼がいた。
「そこの峰津院大和のように、銘品であるほど気難しくてね。自分で主を選ぶんだ」
「選ぶ?人形が?」
 やまと。それが彼の名前だろうか。振り返って改めて見る。
 ツンと澄ました表情。気位の高そうな、媚びているところなんて想像もつかない優雅さだ。 確かに選ばれるより選ぶほうがしっくりと来る。
「ああ、彼らは生きている人形だからね。目に叶う人間が現れなければ何十年でも眠り続ける。ここにいる彼――峰津院大和は高名な職人達が手がけた、銘付き、香り付き、珍しい少年型と条件をいくつも揃えた最高級品なのだけれど、その分理想が高いようだ。今まで数えきれない位の客を袖にしている」
「でも……起きてます、よね?」
 私を見ろ、というように、大和と呼ばれた人形は、目力の強い銀眼で俺を熱心に見つめている。そこには明確な意思が見てとれ、眠っているようにはとても見えない。
「どうやら峰津院大和は君を選んだようだね。……どうだろう、プランツを一体かってみないかい?」
 さらりと青年はすごい事を言った。俺は目を丸くする。
 此処には買い物に来たわけじゃない。そんなことを言われるとは思っていなかった。
 こんなにきれいな相手に気に入られたのは嫌じゃなくて嬉しいけれど。でも、
「えっ!? 俺が? いや、光栄だけど……お高いんでしょう?」
 話を聞いていると気難しい以外安くなる要素がない。
 俺はまだ大学生だし、すさまじく高いという観用人形の身請け金を払えるかどうか。
「そうだね、普通なら諸々混みで――これ位かな」
「!!??」
 またしてもさらりと掲示された金額は、目玉が飛び出して暫く戻ってこれなくなりそうな、凄まじい高額だった。
 目の前の彼、大和の様子を見るとそれでも安いくらいじゃないかと思えるのだけど、少なくとも今の俺に払える金額じゃなかった。意識せず肩が落ちる。
 俺は少なからず彼を欲しいと思っていたんだろう。
「残念ですけど」
 それでも無い袖は振れない。断腸の想いで口にすると、青年は口元に手を当てて思案の様子を見せた。
「そうなると峰津院大和はメンテナンスに出すしかないな」
 メンテナンスという言葉が青年の口から零れると、大和が初めて大きく顔を歪めた。眉を寄せ、くちびるをへの字に引き結んだ、凄まじく嫌そうな顔だ。
「メンテナンスって?」
 気になって聞き返すと青年が説明をくれる。
「出荷前の真っ更な状態に戻す。ようは記憶の初期化だね。起きてしまったプランツをまた寝かせて、次の主を待たせるんだ」
 このままじゃ君以外の相手に懐きそうもないからね、と青年は事もなげにいうけれど、俺は複雑な想いに駈られた。
 こんなに嫌そうにしてるのに。
 大和のほうを伺うと険しい顔をしている。自分に起きることを彼は理解できるんだろう。
 頭をいじくりまわされてうれしい奴なんていない。
 ふとそんな厳しい、耐えるような表情ではなく、笑った顔が見てみたいと思った。ほかの誰かじゃなく、俺が笑わせてあげたい。
「あの、もうちょっとまかりません? それか出世払い……いやせめて割賦で」
 気づけば俺は青年に声をかけていた。自分でもやってしまったと思うが、言うだけならそれこそタダだ。
「無利子の分割払いも受け付けているよ。峰津院大和を引き取ってくれるのかい?」
 一度断ったからか青年は軽く首をかしげている。俺ははっきり頷いた。
「だって不可抗力だけど俺がこいつを起こしたのには違いない。このまま無責任にサヨナラしたくないから」
「なら、――このあたりまでまけよう」
「ええっ、こんなに下げて大丈夫なの?」
 一気に値段が下がって申し訳なくなった。この店の経営に影響したりしないだろうか。
「なに、メンテナンスに出すとお金がかかるし、扱いとしては傷物、中古ということになって値が下がってしまうからね。それよりはずっと良いんだよ」
 ひとつかぶりを振って、青年がまたアルカイックに笑う。
 なんだか完全にこの店の青年の掌という気もするけど、一人暮らしはさびしいと思っていたし、同居人が増えるのもいいかもしれない。
「ありがとう。ちゃんと大事にする」
「その分せぷてん屋をご贔屓に。プランツ関係の商品は大体うちで取り扱っているから」
 棒読みなのが気になったが、頼らせて貰おうと俺は素直に了承する。
「食事は三食温めたミルクと香玉、時々砂糖菓子をやれば色艶が保たれる。それ以外はプランツによくないから上げないようにね。峰津院大和はかしこいから、自分の世話はある程度自分でできるし手もかからないよ」
「至れり尽くせりだね」
 説明と一緒にプランツを育てるのに必要な物を色々受け取る。
 俺たちの会話を聞いていたらしい大和が、綺麗な銀色の目を見張ったあと満足そうな表情をした。
 ……なんかドヤ顔っぽいな。プランツは喋らないみたいだけど、言葉を推測するなら、流石は私が見込んだ相手だ! ってとこだろうか?
 人形と言う言葉からは想像もつかないような表情の変化に、俺は大和からもっといろんな顔を引き出してみたいと思った。
 何にしろそれは、家に彼を連れて帰ってからになるだろう。
「それじゃ、行こうか、大和」
 片手を差し出して名前を呼ぶ。
「これからよろしくね」
 声をかけると、ちいさなすべすべした手が俺の手に重なり、
「――」
 大和がにっこりと、花が咲くみたいに見事な微笑みをうかべた。
 俺の手を握りしめた大和の手は、人形とは思えないやわらかさと温かさを持っていた。
 きゅうっと胸が締め付けられるような想いがする。一瞬、抱きしめてほお擦りしたくなったが、生憎手が渡された荷物で埋まっていたので、店の青年の前で正体を失う愚はギリギリ避けることができた。

 それにしても、隣に住んでいる幼なじみには、大和のことなんて言って紹介しよう。
 変な趣味に目覚めたと思われないといいんだけど。
 そんな微かな憂鬱も、店を出て表情こそ落ち着いたが、まだ脚取りが上機嫌な大和を見ていると、返そうなんて思えないし後悔もない。
 明日からバイトを増やさなきゃなと決めながら、俺もまた脚取りかるく家路をいそいだ。
 不思議なことに行きはあんなに入り組んで出られないように思えた道を、迷わずすんなり抜けることができた。

 俺と大和の奇妙な共同生活は、こうして幕を開けたのだった。

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