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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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ツイッターにてお題リク募集したときに、「焼き肉」とのお題を頂き、もそもそ書いたところ、
ツイッターで流すには長くなりすぎてしまったのでSSの形にしたもの。
大団円回帰後、全員記憶有りで再会したよなご都合主義設定で焼き肉話。
当たり前のように主ヤマ前提でお送りしています。

なんとなく「ユーフォリアを君に」と地続きの世界線のような気がします。


まさか大和を連れて焼き肉屋に来ることがあるなんて。
考えてみれば実に面白い、貴重な体験をしているんじゃないかと言う気がする。
けれど、こういう普通の人間にとっては別になんてことのないことを、俺は沢山あいつに教えてやりたい。

あの災厄を乗り越えて世界が復元した後、皆の意思は危惧を上回ったらしく俺達は記憶を持って(あるいは思い出す事が出来て)帰ってきた日常を過ごしている。
あの時の仲間たちは、上手い具合に互いを探し当てて、連絡を取るようになっていた。
流石に全員が揃うのは稀だが、それでも偶に予定のあった何人かで集まって騒いだり、出かけたりそんな事をしている。
遠方に住んでいる名古屋組や大阪組、それとジプスの面々は一緒に出かけられる機会が少ないが、その分共に過ごせる時間は嬉しいものだ。
けれど、大和は「休日などない」と言い切ってしまうような生活をしていて、本人もそれを疑問に思っていない様子だった。
今は若いからいいかもしれないけど、そんなんじゃ何時か身体を壊すと心配になった俺は、結構頻繁に彼に声かけをするようにしていた。
それが功を奏したのか(元々大和の体調を気にかけていた真琴さんたちの協力もある)、近頃大和は俺や他の仲間たちと過ごす機会や時間が増えた。
大和にとってはくだらない、俗なことの方が多いかもしれないけれど、それでも肌で体験してみるというのは悪いことじゃない。
最終的な感想が良いものになるにしろ、悪いものになるにしろ、判断するためにも直に体験してみるのは大切なことだと思う。

とはいえ、今日は実は大和にとって休日という訳じゃない。
大学の帰り、俺が大地と維緒と集まってだべっていたら、偶々近くで仕事だったらしい大和がやってきたのだ。
仕事が予想以上に早く終わったそうで、明日の朝までフリーになったらしい。その、珍しく空いた時間を利用して、俺の顔を見に来たそうだ。
移動時間も考えるとその時間で休めよ、とも思うのだけれど。無駄を好かない大和が、わざわざ俺のところまで来てくれたというのにはちょっときゅんとした。
ただ、私服に着替えてくるという発想がなかったのは頂けない。
大和の容姿に軍服めいたジプスの制服が加わると、はっきりいって街中では目立つことこの上ないのだ。コスプレか、何かの撮影にしか見えない。
一番初めに俺たちがしたことは、俺の下宿先に大和を連れて行って着替えさせることだった。
それからみんなで晩御飯でもということになって──現在に至る。焼き肉が食べたいと言い出したのは大地だった。
近場に安めの焼き肉屋が新しくオープンしたから、常々行ってみたいとは俺も思っていたのだ。

女の子を連れて行く場所じゃないかなと思ったけど、維緒は案外ノリ気で。
メールを回したら、ジョーさんも来てくれた。そんなこんなで賑やかに焼き肉を食うことになったわけだけど。
店に入ると、大和は完全に未知の物を見る目というか、こういう食べ方をすること自体訳が解からないという顔をしていた。
まあ大和のこれまでの人生で焼き肉屋に入る機会なんてあるはずもなかっただろうから、当たり前といえば当たり前か。
他のみんなが思い思いに注文して、運ばれてきた肉を焼いて食事を進めていく中、大和はじっと周囲を観察するばかりだった。
このままだとコイツ食いっぱぐれるなと思った俺は、世話を焼いてやることにした。
「ほい、これそろそろ食べ頃な」
良い感じに焼けた肉を網から取って、大和の分の取り皿に乗せてやる。
はじめは渋っていたけど、「美味しいよ」と薦めればなんだかんだで黙々と食べ始めた。面白いからあれこれ取ってやる。
大和は元々色素の薄い方だけど、それを差し引いても余り血色が良くないから、偶には精のつくものを食べる方がいい。
普段の食生活が気になって聞いてみたら、忙しい時は栄養調整食品が主で、そうでない時は精進料理とか薄味の和食が多いとか。
何だその極端な二択。そうなるとジャンクフードだったり味付けや脂分の濃いものだったりが物珍しく、箸が進むのもむべなるかな。
他のみんなももっと食べろとばかりに肉や野菜を回してくれたから、俺はどんどん大和に勧めて──結果、結構な量を大和は食べていたと思う。

「……うん、こうなるのも仕方ないよな」
店を出て解散した後、大和の調子が悪そうなのを察して、反省した。もっと早くに気付くべきだった。
食べ慣れないものを沢山食べた上、雑多な熱気や煙といったものに長期間巻かれていたのだ。気分が悪くなっても無理はない。
どちらにしろ大和の制服は俺の暮らしている部屋で預かっていたわけで、そのまま肩を貸してつれて帰った。
部屋に戻った後は、ベッドで休むよう促して、まずは窓を少し開けて空気の通りを良くし、次いで冷たい水を注いだコップを手に彼の元に戻る。
「大和、大丈夫か?」
水を飲むと少し落ち着いたのか、ばつの悪そうな顔で大和は頷いた。
「ああ、一心地ついた。手間をかけさせたな。…私としたことがこのような醜態を曝すとは情けない」
「いや、それはどちらかっていうと慣れない店に連れ込んで、色々食べさせた俺たちに原因があるような。ごめんな」
「……君が謝ることではない。私が、自制出来なかっただけのこと。慣れぬ食事ではあったが、君が勧めてくれるものだから、つい、な……」
度を越してしまったと目を伏せた大和の言葉に俺は目を瞬いた。
「もしかして、俺が皿に乗せてやったりしたの嬉しかったの?」
「…………」
尋ねると察しろとばかりに無言で睨まれた。確かにあんな風に甲斐甲斐しく料理を取ってやるような機会はそうそうないが、だからって。
「二度目があるとは限らんからな」
結局、ぽつりと零された言葉が答えだった。照れ隠しのように水を呷った大和が、コップをテーブルに置いたのを見計らって抱きすくめる。
「! なんだ、急に」
「お前があんまり可愛いこというから。二度目がないとか言うなよ。忙しいのは知ってるけど」
抵抗がなかったから腕を回したまま、近くから大和の顔を覗きこんだ。顔色も良くなってきていて安心する。
いや、少し赤いくらいかもしれない。
「気に入ったんならさ、機会なんてまた何回だって作ればいい。なんなら、家で焼き肉したっていい」
「家庭でも出来るものなのか、ああいった事は」
「うん。ちょっと趣は変わるかもしれないけど、それはそれで楽しいはずだから」
「するならば、付き合おう。君といると、知らぬこと、未経験のことの多さを、何かと思い知らされる」
「だってそうしたいって思ってるし? ……悪く、ないだろ?」
「嫌だと思うならば君のところに来てはいないさ」
手袋をしていない、大和の白い手が、俺の手に重なる。私服の所為か普段より雰囲気が柔らかく、かすかに笑った表情は穏やかに見えた。

そういう可愛い顔をされると俺が帰し難くなることに、大和は絶対に気づいていない。
明日の朝まで時間が空いていると聞いていたから、今夜はこのままここに泊まっていかないかと誘うと、嬉しそうに頷いてくれた。
「志島たちの居る場所では、君にこのようなことはできぬからな」
しかし君の身体も少し煙の臭いが移ってしまっているな、等と色気のないことを言いながらも、大和は静かに俺の肩口に顔を埋めてくる。
(そういう大和本人は、あれだけ煙たい中にいたにも拘らず、普段と変わらない良い香りがするのだから不思議なものだ)
「…でも、前は二人っきりでも中々こんな風にしてこなかったな」
「私も変わったと言う事だろう。君が変えた、というべきか」
以前は素直に甘えると言う事を知らなかった彼が、腕の中に大人しく納まって体重を預けてくれる。
その動作も、私服に着替えた姿も、俺たちと焼き肉なんか食べに行ったりすることも、気を許したような表情も、あの八日間では絶対にありえなかったことで。
いくつも『未知』を、こうして見ることができるのは、この上なく幸せなことだと俺には思えた。

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