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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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何時もと若干毛色の違う主ヤマ。
ウサミミが慎重窮る堅物紳士(朴念仁一歩手前)で、大和さんがえらい積極的(ただし耳年増)な話。
基本的にあたまがわるくてべたべた甘いラブコメ未満。
実力主義ED後。完全に出来上がっている両思いな主ヤマで、想い過ぎる余りのちょっとした行き違いのようなもの。明らかに局長が暴走している。大和視点寄り。主人公の名前は宇佐見 北斗です。
tentazione(伊)=誘惑。

お話としては他とは独立したシリーズモノです。
エロコメというかラブコメというかが書きたかったんですが、小説でギャグをやると言うのはむずかしいですね!?

 
 実力主義という大和の理想を根源とし、対等と認めた北斗の力を借り、意思に賛同した者たちと共にポラリスに謁見して開かれた新たな世界。
 未だ不満を訴える不穏分子の存在には事欠かぬが、意と理は力で持って通し、あるいは制する自然淘汰の復古こそ、大和の望んだものである。
 日々は忙しくとも充実していた。災厄前の腐りきった世界で、忸怩たる思いに囚われていたころとは比べ物にならない。
 
 唯一点、余りにも優しく紳士的過ぎる恋人への不満を除いて。

 そう。実力主義の世界の頂点に立つ峰津院大和と、その同列の席に在る宇佐見北斗は、紆余曲折を経て想いを交わしあった恋人同士である。
 しかし、何時だって北斗は、大和を尊重し己の欲など存在しないかのように振舞う。
 勿論、必要であれば意見を言うこと、通すことは躊躇わない彼だからこそ信を置いているわけだが。
 そんな彼が、こと触れ合いに限って、ただのひとつとて押し付けてきたことがない。互いに未だ若いにも拘らずだ。
 これで恋人といえるのだろうか。大切にされているのは大和にもよく解かるが、まるきり子ども扱いだ。
 大和と北斗の間に横たわる年齢差はたったひとつの違いでしかないというのに。

 宝物のように扱われることを不満に思うのは贅沢な悩みだろうか。
 大和に触れる北斗の指は何時だってやさしい。
 まるで壊れ物を扱うかのような繊細さで、接触はごく軽く、柔らかで慎重なもの。
 包むような緩い抱擁と、頭を撫でる穏やかな手、時折頬や額や目蓋に落ちる羽のような口付けが、北斗が大和に贈る愛の凡て。
 世俗から離れていた大和に対して、北斗は何処まで許されるのか探りながら距離を近づけようとしている節がある。
 北斗が大和を優先してくれるのが嫌な訳ではない。しかしながら、同じくらいに己も彼を尊重するべきだと大和は思っている。
 彼がもし、己の望むところを抑えているのだとしたら。
 唯一無二の対等でありたいと思っている相手に、慮られ庇護されるだけなど、大和の矜持が許さない。

 あるいは、大和は意識していなかったが、北斗にとってやはり同性である己は『そういう対象』にはなれないのか、という不安もないわけではなかった。
 どちらにしろ、北斗の真意を確かめなければ、行動を起こさなければならない。

 ──大和がするべきだと決めたことは、ひとつであった。



「あの、大和さん。これはどういうことかなー?」
「見れば解かるだろう、北斗。私が、君を、襲っている」
 出来れば冗談であって欲しいと願うような北斗の問いかけに、答えた大和の声はどこまでも真面目なものだった。
 真夜中の私室。仕事を終え、二人きりで過ごす宝石のように貴い時間。
 何時ものように眠りに落ちるまで、あやされるに似たふれあいが与えられる最中、不意を討った大和は、北斗を寝台に押し倒していた。
 彼が咄嗟の事態に反応できずに居る間に、腹の上へと跨って動きを制限する。
「待って、待って!? どうしてお前は何時も極から極に走るかな!!」
 それでも、上半身は自由にさせていたから、大和が北斗の羽織る白いパーカーの釦に手をかけた辺りで留められた。必死の形相をした北斗による制止だった。
 引き止める北斗に対して大和はむっつりと口を引き結び、睨むような目を向けた。
 普段は察しが良いくせに、どうしてこう言う時ばかりは鈍くなるのか。
「…あのさ。俺、他の人よりはお前が何を考えてるか解かるつもりだけど、それでも言わないと伝わらないことってあるから、ね? 急にどうしたんだよ」
 労わるように伸びてくる手が頬に触れたところで、大和は重々しく唇を開く。
「…私は、君にとってなんだ」
「え?」
 きょとんと瞬かれた瞳を真っ直ぐ見据える。本当に全く大和がこういう行為に出ると思っていなかった顔だ。
 いとしくて、少しばかり憎らしい。

 ただでさえなりふり構わず迫っているのだ。この上はもう、恥も外聞も捨てて、思いのすべてをぶつけてしまうほかないように思えた。
 
「君は何時も優しい。過ぎるほどに。何かを押し付けてくることがない。私の望みを何時だって先読んでくれる。そうしていながら時に私の予想を覆し先を行く。君は何時だって新しいものを見せてくれる。それはこういう関係になってからも…変わらない」
 こんなにも一人の存在が自分を救い、援けられることがあるなどと大和は北斗に会うまで思っても居なかった。
 誰かに何かを期待することや、打算のない好意があることなどとうの昔に諦めていた。大和の十七年間は孤独の中にあった。それすら、北斗と共に過ごすようになるまで自覚のなかったことだ。
 彼が教えた。彼が変えた。今の大和が在るのは目の前の青年の影響あってのこと。大和が与えられたものは量りようもないほどに多い。
 だからこそ、返したいと想うのだ。返せない事を、ただやわらかく注がれるばかりの愛を、申し訳なく思う。
「大和…」
「私は君に何が出来る? この私が報いたいなどと思った相手は君が初めてだ。君にもっと求めて欲しい。君は私に子供にするような触れ方しかしないが、君の望むことがあれば私もしてやりたい。それとも、男の私では君を欲情させることなど、」
「…ああ、もう!」
 連ねた大和の言葉は中途で遮られた。瞬間、世界が反転する。
 態勢が真逆に入れ替っていた。顔を挟んで手が置かれ、覆い被さるように北斗の身体が大和の上にある。
 言葉よりも雄弁に動作が語る。より近く密着すれば、北斗の身が先程までより熱を帯びているのと、常になく脈が速くなっていることが大和に伝わってくる。
 覗きこむ顔の近さに大和はドキリとした。こんな風に力強く、意思によらずに扱われたのは殆どない事で、つられたように鼓動が自然と乱れる。
「伝わる、よな。俺が興奮してるってこと。あんまり理性試すようなこと言わないでくれよ。さっきみたいなことして、俺の理性が切れてがっついて酷いことしたらどうするのさ」
 彼はそんなことはするまいという信頼もあったし、よしんばその不安が現実のものとなったとしても北斗が望むなら大和としては構わない気もしたのだが、少し詰まりつつも赤くなって必死に言葉を紡ぐ北斗の様子に、口を挟むのは憚られた。
「大和は、俺の…大事な、大事な相手なんだから。ひとつずつ段階踏んでいきたいなって思ってるの」
 こつんと額と額が軽くぶつけられる。頬の紅潮を抑えようと苦笑した北斗の顔に、今度は大和が手を伸ばす番だった。
「正直なところを言いたまえ。君はそれで満足しているのか?」
「…ぶっちゃけ、その、色々したいですけど。焦って傷つけて後悔するなんて絶対嫌だから」
 臆病でごめん、という謝罪を向ける真剣な青い目と視線がかち合う。
 北斗の双眸の奥には、真摯な愛情と気遣いの色が見える。その奥に見え隠れするかすかな熱情を、大和は欲しいと思った。
 だが、彼の意思の強さは折り紙つきだ。納得できぬと思う限りは、大和相手でも遠慮なしに意見をぶつけ、曲げることのない相手だとよく知っている。
 仕方ない。それは北斗の口癖のひとつであったが、大和の脳裏に浮かんだ単語はまさしくそれであった。
 妥協は大和の好むところではないが、彼が相手であれば話は別だ。今宵は譲歩することにする。
「…なら、今からひとつ段階を進めたまえ」
 目を閉じて唇を軽く突き出すと、間近で息を飲む音が聞こえた。瞼を落とし、そのまま大和は笑う。
「今日のところはこれで勘弁してやる。君は度し難い頑固者だからな」
「…ありがと。それと不安にさせて、ごめん。こうやって少しずつ、大和を俺にくれたらうれしい」
 そっと北斗の腕が大和を引き寄せ、掻き抱く。そうして、まずは頬に、目元に、何時もの羽根のように軽い口付けが降った。
「俺の為に何かしようとしてくれるの、全部、嬉しかった。すごく好き。大好き。あいしてる」
 北斗はひどくやさしい声で愛を囁く。その声音だけで大和の背筋は甘くしびれる。
 色恋や睦言など無用の極みと忌避していたのに。
 今の私は堕落したのか? 

 ──否。大和はきっぱりとそう言い切ることが出来た。
 北斗が側に居るから、己は十全に在ることが出来る。彼こそが自分に欠けている所を埋めてくれる無二の相手だ。それを、大和はよく理解している。
「…私もだ」
 あいしていると返す前に柔い感触が唇に重なり、言葉は吐息の中に混じって解けた。
 抱き締める腕は常よりきつく、はじめて交わした唇は熱く。北斗をより近くに感じる幸福に大和の鼓動は高鳴った。やがて離れていく唇を惜しいと思う。
「もっと、」
 見詰めて強請れば欲しいだけ与えられる。青い瞳が間近で微笑む。北斗は矢張り大和に甘い。
 その内彼の方から伸べられ、絡まり出した舌が大和は嬉しかった。愛を注ぐ相手から、求められることは幸福である。
 大和はずっと、北斗にそうして欲しかった。呼吸と唾液を分け合って、もう一段縮まった距離に酔いしれる。

 …さて、どう誘惑したなら、彼はここから先を私に致す気になるのだろう? 

 背へと回した腕に力を込めて北斗を繋ぎながら、大和はその優秀な頭脳でゆっくりと籠絡の算段を練りはじめていた。

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