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局長のひょん毛をもふる主ヤマ。
これ主ヤマっていうか主→←ヤマですね?無自覚両片思いほも…。局長のひょん毛に対する妄想をつめつめ。
私はいつだって局長に夢を見ている気がします…。
いつも大人顔負けの怜悧冷徹さで組織の指揮をとるひとつ年下のジプス局長。その、白く整った仏頂面を、偶には崩してやりたいなと思った。
別に単なる思い付きではなくて、前から偶に考えていた事だ。大和は余り笑わないし怒らない。
苛立ちや不快を示すことはあっても声を荒げて激するようなことは少ないし、澄ました微笑を見せることはあっても腹の底から楽しそうには余り笑わない。
でもあいつも俺と同じ人間で、感情の起伏がない訳ではないことを知っている。
陶器のような白い貌をしていても、ちゃんとその身体にはあたたかい血が通っていて、疲れもすれば眠りもする。張り詰めてつめたいその常態の下の、余裕の剥がれたところが見てみたいと思っていた。
ようは、俺が、大和の普段と違う顔を見てみたいという、単なる我侭だけれど。
普段大和の上に張り巡らされている、ジプス局長という重く厚い外殻、それは大和の一部であることに違いはないのだろうけれど、それだけがすべてではないと思うから。
局長らしくない所が見てみたい。それで、少しの時間でいいから俺のことを見てくれたら、もっといい。多分、俺はもう少し大和を知りたい。あいつと親密になりたいのだ。
俺の回りには居なかったタイプだから目新しいというのもあるけれど、最近は何だかそれ以上に彼のことが気になって、気がつけば目で追っている。
何時もと違う顔が見たいと思うようになったのも、大和のことをよく眺めるようになってからだ。公人でない私人としての大和はどんな顔をしてどんな話をするのだろう。そんなことも考える。
知らない顔を見るために悪戯のひとつも仕掛けてみようかと考える俺は、完全にただの子供という気がする。
好きな子の意識をこっちに向けさせたくて意地悪を仕掛ける、幼稚園や小学校に通う男子と何ら変わらない。別に俺は大和に恋をしている訳ではないけれど(そうそうお目にかかれないような美人だなとは思うけれど)。
今までにも何度か悪戯を仕掛けてみようとしたことはあった。そのすべてを華麗に回避もしくはスルーされてしまったが。
やっぱり霊的国防を担う家の嫡男とかになると敵意の類には敏感になるんだろうか。自衛の為の教育も叩き込まれている気がするし。
以前にそうっと背後から近づいたら、随分距離があったようにさっと振り返られて驚いたりもした。
だけど最近は、連日の戦闘で俺の速の値(携帯のアプリで確認した)が上がったからなのか、大和が警戒を緩めてきたのか。
こちらから声をかけない限りごく近い距離まで大和は俺の接近を許すようになってきていた。そろそろ大和を背後から肩ポンして驚かせることも可能なはずだ。
こんな事に本気になるとかいい年してバカみたいな気もするが、くだらない事でも一度やると決めたらやりぬくのが俺のモットーである(その分やる気が向かない事はスルーしたりもするが)。
そして、今日、俺が大和に悪戯を仕掛けられそうな絶好のタイミングが訪れた。
他の局員と別れて自室の方向へと引き上げていく背中。つまりこの後大和の時間は空いていると言う事だ。
貴重な休憩時間を掠め取るようで悪いが一瞬でいい。あっけにとられたりするところが見たい。
足音や気配を殺す歩き方は素人なりに堂に入ってきたあたり自分が非日常にすっかり身を浸していることを感じさせたけど今はその思考は脇に置く。
やわらかな、影が薄っすら紫がかって見える滑らかな銀糸と、裾の長い黒コートの対比は見慣れてもなお凜と目を引く。
綺麗だなと一瞬凝視するうち、俺はふと肩を叩いて驚かすよりも、大和が吃驚しそうなことを思いついた。
ふわふわ、ひよひよ。動きに合わせて目の前で揺れている、どういうセットをしているのかわからないけれど、大和の髪の中でそこだけひょんと跳ねた髪のひと房。
やわらかそうに思えてずっと触ってみたかったけど、触らせて、といったって容易く触らせてもらえるわけがない。
髪って割と触るにはハードルの高い部位だ。快・不快の触れ幅が大きいところだから。
大和みたいな潔癖そうなタイプだと、了承を得ずに触ったりしたらすごく嫌がられるかもしれない。でもいっそそうしてくれたほうがいい気もする。
「君はくだらないことをするのだな」とかため息を吐かれて、何ともつまらなさそうな顔をされて終わったら、それは面白くない…というか、とても寂しいから。
それくらいならいっそ、「なにをする!」と思いっきり嫌がられるほうがいい。
そんな馬鹿なことを考えてしまった俺は、するりと大和の背後に近づき(とうとう真後ろまで接近できてしまった。大和は疲れてるのかもしれない)、無造作に大和の後ろ髪、そのひとふさに手を伸ばした。
指先に触れた毛触りはちょっと簡単には形容しがたいくらいに極上だった。すべすべとして柔らかく、さらりと滑らかに指が通る。
掴みきれない水のようにあっさりと手の中から逃げていく感触が惜しくてむんずと捕まえたら、「ひあっ」となんだか高く裏返った声が上がって俺はびっくりした。
声の響きそのものは物凄く聞き覚えがある。そう、いつも淡々と現状を話し、今後について淀みなく語る彼の、大和のこえ。
らしからぬ短い悲鳴のような声に驚きながらも、俺は確かめるみたいに、手の中の髪束をぎゅっと握ってみた。
ひ、とまた咽喉を鳴らすような声が上がって、俺はもう勘違いではなくて手中のやわい手触り、捕まえた髪のひと房が、大和の弱点なのだと理解した。
「神経通ってんの?ここ」
「っ、やめろ、…突然なにをする…は、はなせ」
ここを掴まれていると力が入らないのか、大和の声は命令形にも拘らずいつものような覇気がない。尻尾を掴まれたねこみたいだと思った。
「ふーん、無敵みたいな局長にも意外な弱点があったんだねー」
むくむくと悪戯心がわきあがってきて止まらない。
脱力して振り返ることも出来ないらしい様子の大和の顔を覗きこむと、銀色の双眸がきつく睨みつけてきた。
だが薄っすらと涙の幕がかかったひとみは綺麗ではあっても怖くはない。望んでいた以上の見知らぬ顔に俺は舞い上がってしまった。
もふもふと容赦なく撫で擦ったりかき混ぜたりしてやると、大和はその度みじかく喘いだ。
強弱をつけて引いたり握ったりもしてみる。するとびくびくと身体を震わせて呼吸を荒げ、最後にはとうとうその場にへたり込んでしまう。
口許を隠すように押さえ、顔色はすっかり血色良く桜色に染まっていた。はあはあと肩を上下させ、最早言葉も継げず乱れた息を整えようとしている大和は、まるで乱暴にあった後みたいになってしまっていた。
見たこともない反応が楽しくてついつい玩んでしまったが、あれ、これセク…ハラ…?と俺はここまできて漸く正気に戻る。
ぱっと散々弄り倒してしまった大和の髪をようやっと解放した。
「ご、ごめん、大和! 調子に乗った……」
言い訳にしかならないが別にここまでするつもりはなかったのだ。
「君は、まったく…自分が何をしたかわかっているのか……?」
大和は座り込んだままギロリと俺を睨めつけてくる。光の戻ってきた瞳は正直ちょっと怖い。
「いや、なんか、はじめはちょっと驚かすだけのつもりで。その髪、触ってみたくはあったけど、ここまで反応されるとは思ってなくて……」
「出来心で手を出したのか。罪深い男だな、君は」
「本当にすみません!」
平謝りすると大和はハァと疲れきったような息を吐き出した。
「君の接近にまるで気付かなかった私自身の不徳もある。今回は不問にするが次はないぞ。それとこの件は内密にだな……」
「あ、うん。人に言いふらしたりするつもりはないけど。大和の反応ちょっとおかしかったよな? 普通髪の毛触られてもああはならないって言うか……」
秘密だというのにはいわれるまでもなく頷く。面白がって触るような奴はいないと思うけど、でも他の人に触られてあんなことになるのは見たくないし。
ただ反応については気になったので聞いてみた。すると大和は物凄く難しい顔をして答えをくれる。
「私の髪の…この部分は格別敏感に出来ているのだ。獣の髭や虫の触覚のようなものといえば通りが早いか?龍脈や霊気を感知する為の器官なのだ、ここは」
……なんだか予想以上の大事になってきた。
「つまりは外部の概念情報を得て脳に送り込む場所であってだな、それを君は無遠慮に握り、好き放題に弄ってくれて……指を通して君の情報が突然大量に入り込んできて、頭がおかしくなるかと思ったぞ」
まじですか。大和のひょん毛にそんな秘密があったとか衝撃すぎた。
というか、俺の情報が入った所為であんな反応だったのか大和。
やばい、なんだか物凄く汚してしまった気分。それに途方もなく恥ずかしい。
何か変なこと知られたりしてないだろうか。ちょっとした悪戯のつもりが飛んでもない事になってしまった。後悔先経たずとはこの事だ。
さーっと血の気が引いた俺へと、大和は不意に口を開いた。
「ところで、君は、私と親しくなりたくてあのような行為に及んだのか?」
どうみても完全に考えていたことがばれてます、ありがとうございました!
うわああ、絶対に呆れられる。問われたことを肯定して、冷たく「くだらない」と否定されるのは嫌で俺が押し黙ると大和は軽く口の端を持ち上げた。
「沈黙しても無意味だぞ。先程触られているうちに、色々と伝わってきたからな」
「大和のひょん毛高性能すぎだろ!」
「妙な呼び方をつけるな。それで、どうなのだ?」
わかってるくせにしつこく聞いてくるとかいじわるだ。もしかしてこれさっきしたことに対する仕返しなのか?
「くそ、くそっ!そうだよ。お前いつもツーンって取り澄ましてるし、あんまり笑わないし怒ったり驚いたりもしないし。だからさ、いろんな顔見てみたいなって思った。お前のこともっと知りたい。…あとこっち、みないかなっ
て」
大和の顔を見てられなくなってそっぽを向く。なかよくなりたいなんて、改めて口にすると死ぬほど恥ずかしい。今度は俺が顔を赤くする番だった。
「おかしな事を言う男だ。私は君が思うよりも君のことを見ているというのに」
「え、それって……?」
俺が問い返すころには、大和はもう先程までの狼狽をまるで感じさせない様子で立ち上がり、歩き出してしまう。
「あ、待てよ。まだ話が……」
さっきの見ているといった言葉について聞きたくて引き留めようとしたら、少し離れた位置で大和は振り返った。
「なら、部屋まで来い。私のことを知りたいといったな。このようなことをするより、茶でも入れて話するほうが良いだろう」
意外な言葉に俺は目を丸くした。
これはつまり、その、お茶に誘われてるのか。俺は。
いや、髪の秘密を知ってしまったことに対する口止めが含まれてるのかもしれないけど。
「どうした、来ないのか?」
「行かないとは行ってないだろ!行く!」
いつまでも歩き出さない俺に不服げに一瞬眉を寄せた大和だったが、俺の返答を聞くと直ぐに不機嫌をおさめた。
そうしてあとはもう振り返らずに歩き出した大和の、揺れる後ろ髪を改めてしげしげ眺めていると、何だか嬉しくて揺れているみたいに見えた。
それは多分俺の勘違いなのだろうけれど。やっばり尻尾みたいだなと思い、先を歩くその綺麗な銀色を見失ってしまわないように、俺は慌てて大和の後を追いかけたのだった。