デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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ほんの小話ですが、お題を受けて、『主ヤマで寝正月』。ツイッターで流したものの再録です。
大団円回帰ルート後想定でウサミミは大学生になっています。
局長だってたまにはのんびり過ごしてもいいと思う。
大晦日に事件が云々、その後に正月休みが取れるというネタは一昨年くらいから温めていたんですが形にならなかったので、ここでそういうことがあった、という件だけ拾って使ってみました。
大団円回帰ルート後想定でウサミミは大学生になっています。
局長だってたまにはのんびり過ごしてもいいと思う。
大晦日に事件が云々、その後に正月休みが取れるというネタは一昨年くらいから温めていたんですが形にならなかったので、ここでそういうことがあった、という件だけ拾って使ってみました。
障子の向こうから注ぐやわらかい明るい光が瞼をたたく。
まなこを開けば、こちらを覗き込む青い瞳と目があった。
また脂下がった――やさしいともいえる顔をしている。
耳の付け根辺りを撫でられ自然と目を細めれば口づけが下りてきた。
「まだ寝てていいよ」
言いながら素肌にやわらかな掛布団をかけてくる。
「もう日が昇っている。離してくれ」
外は既に明るいのに、まだぼんやりと眠気と熱が残る頭はどこか名残惜しいと思ってしまう。
その胸の内を明らかにすれば、この男はきっと調子に乗るだろうから秘め事にして、抱きしめてくる腕から逃れようとした。
なのに強引に抱き込んできて、なんだかほほえましいような表情をする。
「珍しいな。大和、ちょっと寝惚けてる? 今日は休みだろ」
年末年始は神事祭事が多く、また想念が吹き溜まり易く毎年忙しい。
ジプスの職務ばかりでなく、峰津院家としての用向きに呼び出されることもある。
この正月の時期に休みなどとれるはずがない。
――普段であれば。
「……そう、だったな」
彼の言葉がたわごとでもなんでもないと、大和は自分たちが今いる場所がどこか、どうしてここにいるかを理解して、漸く身体の力を抜いた。
一見古式ゆかしい和室にも拘らず、ぬくぬくと適温になるよう寒さから守られたこの場所は、峰津院の擁する別邸の一つ。その奥寝所だ。
年末、本来であれば分家筋がするべき仕事を肩代わりした代価に、大和は年始の宴を辞して休暇を取る権利をもぎとったのだった。
本来部外者である彼がここにいるのは褒賞として。この年末、彼は実によく働いてくれた。
年も終わりになると一年分の雑多な想念が、霊的な力の増幅器であるタワー各所には特に吹き溜まり、龍脈に良くない影響を与える。
それを避けるべく、年末には毎年各所で大祓を行うのが常であった。
分家筋の才能あるものと分担して行う仕事であるが、間の悪いことに性質の悪い風邪が流行り、人手が足りない事態に陥った。
結果として大和は一人、地下にめぐらされた新幹線をフルに活用しての全国行脚をする羽目になった。
儀式中はどうしたって無防備になる大和の護衛を、ちょうど大学が休みの時期だったこともあり、彼は快く引き受けてくれた。
穢れを心身に引き受けて浄化する儀式はどうしても心身を削る。そんな大和の、精神的、肉体的なサポートも兼ねて、彼は実に首尾よく立ち回ってくれた。
その功もあり、こうして二人、他に人気のない屋敷の中で休んでいられる。
「おつかれちゃん、大和」
「君も……ご苦労だった」
最後の最後、東京タワーを浄化する際は野良悪魔の顕現が運悪く重なってしまったが、それも彼や局員たちの尽力があって乗り切った。
今頃は真琴たちも交代で休暇、休日をとっているはずだ。
すべての仕事をやりきった晦日の晩――昨晩、これから正月休暇を過ごすこの屋敷にふたりでやってきたのだが――それまで忙しかったこともあって、つい羽目を外してしまった。
戦いの後で彼は高ぶっていたのかもしれない。
熱心に求めてくる指を、痴れ者と振り払うほど大和は冷血にはなれなかった。
結果として日もとうに昇ったにもかかわらず、こうしてふたり、贅沢に惰眠を貪ることになったわけだが、不思議と悪くはない。
「今日はどうする?初詣とか出かける?」
抱きしめたまま彼が大和の顔を覗き込む。
熱情の一夜が過ぎ去った後は、肌と肌を重ねていても劣情より慕わしさと安堵が募るばかりだ。
自然と大和の腕が彼の背に回る。裸の胸にすり、と獣のように頬を寄せると間近で息を飲んだのがわかった。
「いや、今日はこのままいるとしよう。寝正月、というのだろう? 随分と贅沢な時間の使い方ではあるが」
だらだらとふたり、何をするでもなく過ごすことが穏やかに胸の内を満たすと大和に教えたのは他でもない、彼だ。
「……。姫はじめ、したくなりそうなんだけど?」
「昨日さんざん私を貪っただろう。夜まで我慢したまえ」
うれしいような、こまったような顔で眉を下げた彼に、大和はなんとも魅力的な顔で笑いかける。
口の端を持ち上げたとき、ちらりと大和の口元にのぞいた八重歯に、我慢しきれなくなったのか、彼があつい唇を寄せてくる。
けれど、それ以上をしようとはせず、暫く口づけると彼は顔を離した。
「これで夜まで我慢する」
断腸の想い、といった様子で口にするから、ふは、と大和は思わず笑声をあげた。
何をする予定もない、白紙の時間。
無為無駄な時間に彼は何時だって意味づけをくれる。
「ああ、遅れたが」
あけまして、おめでとう。
一年の一番初めに目覚めて見たものが互いの顔である、など、そんな幸運はこの先またあるかどうかわからないから。
噛みしめるようにして、今度は大和から、彼へとやさしい接吻を贈った。
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