デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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時系列行方不明ですけど大地ルートで説得して仲間になった後のような雰囲気。
甘え慣れない局長と、甘やかしたい主人公の、イチャイチャとシリアスの間くらいのお話。
北斗は基本的に大和さんをあまやかしたい、力になりたい男ですが、この話は特に顕著。
傲慢といえば傲慢な話、ともすれば価値の押し付けになりかねないのですが、そのあたりは二人で話しながら考えながらうまいことやってければいいね、って思います。
何が幸せかは本当に難しいのですが、少なくとも触れ合って寄り添って共に過ごす時間が、ウサミミと局長にとって悪いものじゃないことだけは確かなのだと思います。
峰津院家に関して、若干の捏造有り。
正直なところ、設定資料集を読んで、双子のいもうとが影武者やってる(できる)局長は、どれだけユニセックスなの…と吃驚しつつ萌えた記憶があります。
ヤマトさんが女顔なのか、ミヤコちゃんが男前過ぎるのか…両方か…それにしたって成長したら無理が出てくるんじゃないか…第一異性双子ってことは二卵性だろうに…と悩んだ結果、もう峰津院さんちが成長しても中性的な人が多い家ってことでいいんじゃないのってなりました(私の中で)。
神域にある巫子(シャーマン)は、男でも女でもないって言いますし! な!
あとあのちょっと異常なくらいの色素の薄さも遺伝じゃないかな…。龍脈とかアルコルさんの影響とか色々妄想できますね…。
甘え慣れない局長と、甘やかしたい主人公の、イチャイチャとシリアスの間くらいのお話。
北斗は基本的に大和さんをあまやかしたい、力になりたい男ですが、この話は特に顕著。
傲慢といえば傲慢な話、ともすれば価値の押し付けになりかねないのですが、そのあたりは二人で話しながら考えながらうまいことやってければいいね、って思います。
何が幸せかは本当に難しいのですが、少なくとも触れ合って寄り添って共に過ごす時間が、ウサミミと局長にとって悪いものじゃないことだけは確かなのだと思います。
峰津院家に関して、若干の捏造有り。
正直なところ、設定資料集を読んで、双子のいもうとが影武者やってる(できる)局長は、どれだけユニセックスなの…と吃驚しつつ萌えた記憶があります。
ヤマトさんが女顔なのか、ミヤコちゃんが男前過ぎるのか…両方か…それにしたって成長したら無理が出てくるんじゃないか…第一異性双子ってことは二卵性だろうに…と悩んだ結果、もう峰津院さんちが成長しても中性的な人が多い家ってことでいいんじゃないのってなりました(私の中で)。
神域にある巫子(シャーマン)は、男でも女でもないって言いますし! な!
あとあのちょっと異常なくらいの色素の薄さも遺伝じゃないかな…。龍脈とかアルコルさんの影響とか色々妄想できますね…。
北斗の目から見て、大和はなんだか、穏やかな接触というものに対して、不慣れに見えていた。
人目のない、例えば今のように夜の私室に二人きりという状況であっても。
差し向かい、頭に手を伸ばすといつも、僅かだけ肩が強張るのを知っていた。
「…撫でるだけだよ」
できうる限り甘くやさしく声をかけ、触れる手がただやわらかな接触に留まるのを実感すれば、強張りは直ぐに解けて大和はかすかに笑ってくれる。
大和が物慣れないだけで接触を嫌がるわけでないことに、北斗は救われていた。触れたいとは思っても、相手が拒むことは無理強いしたくない。
「大和は人に慣れない獣みたいなところがあるな」
柔らかで綺麗な銀の和毛に指を通して、梳りながら間近で言うと、髪と同色の長い睫毛が伏せられる。
「実際、あまりこういったことには慣れない。君はどうして私に触りたがる?」
「好きな相手に触れたくなるのに理由が要るか?」
大和が一瞬言葉に詰まるのが見えた。質問に質問で返すのは意地が悪いと、もう少し言葉を足すことにした。
「どうしてって聞かれたら答えは「触れたいから」になるよ。触れて、確かめて、言葉だけじゃつたえきれないものを伝えたい、甘やかしたい。日本人は奥ゆかしいけど家族とか親友とか…恋人とか。そういう近い関係ならスキンシップって自然じゃないかな」
「…"一般人"はそうなのか」
「大和は違う?」
「解からない、というのが正しいな。他者との身体的な接触は、例え親族とであっても殆どない。ただ、君に触れられるのは…嫌ではない。寧ろ、」
その先が声として紡がれることはなかったが、大和の形の良い唇は一瞬、すき、という言葉の形に動いた気がした。
嬉しくて北斗はついつい喜色を顔に浮かべてしまう。北斗の表情の内心を目敏く察した大和の白い顔がさっと朱を帯びる。
強い覇気を宿した銀眼がジロリと北斗を睨めつけてくるが、照れ隠しにしか見えない。
「やーまと、俺に触られるのは嫌じゃなくて? それで?」
「この私が許しているのだ。…みなまで言わずとも察しろ」
冗談めかして尋ね返すと、軽く肩を叩かれた。不機嫌そうに引き結ばれた唇と裏腹に、顔は耳まで赤く染まって、声音はどこか恥じ入るような甘さが混ざる。
見ていると自然、北斗の表情は和らいでくる。
可愛い。愛しい。抱き締めて、触れて、めちゃくちゃに甘やかしたい。
「ごめんってば。ちゃんと分かってるよ。…な、大和。こっちにおいで。俺の膝の上。今日はもっと沢山触りたい。…だめ?」
ベッドに腰掛けて、ぽんぽんと膝の上を叩き、招いた。
大和は黙り込んでそんな北斗の動作を見つめていたが、幾らかの逡巡の後、
「……仕方のない奴だ、君は」
そう呟いて、大和はぎこちなく北斗の膝に乗り上げた。
ブライベートで北斗の願う声を大和は概ね袖にしない。惚れた弱みと言うやつだ。逆もまた然りで、大和の願いに弱いのは北斗も同じなのだけれど。
これでいいのかと視線を向けてくる大和に笑いかけて、彼の身体のラインを隠す重厚なコートを剥ぎ取る。大和の、ジプス局長としての威厳を演出するそれは、今のふたりだけの時間にあっては少々無粋な邪魔者だ。
そして、上は濃い灰色のシャツだけになった身体を、本当は服一枚だって隔てるものがあるのがもどかしいようないとおしい体温を、北斗は大切に抱き締めた。
腕の中に納まった痩躯の背を優しく擦っていると、少しずつ大和の身体からは緊張が解けて、体重がおずおずと北斗の身に預けられる。
こんな風に大和が無防備な接触を許してくれるのが、北斗は嬉しかった。
ささいで控えめな甘え方が、らしくて好ましく、同時にもう少し凭れてくれても構わないのにとも思う。
少しばかり所在無げにしている大和の腕を、北斗は優しく取る。抵抗がないのを良いことに白い手袋を器用に外してしまい、顕わになった華奢なつくりをした五指を改めてまじまじと見た。
陽を知らぬようなしろい、うつくしい手だ。だが、その実柔さよりも実用性を秘めた部位であることを北斗は知っている。形良くほっそりとして見える手指は、鍛錬や書類仕事で培われ、存外硬い。
とはいえ、成人男性のそれと比すれば幼さが残る。手から続く腕もまた。
無駄な肉などひとところもない、丹念に砥がれた刃を思わせるかいなは──けれど、まだ性的に分化しきらぬ少年のものだ。
「大和の手は細いな」
ポツリと思わず感想が零れると、北斗の腕の中、安ろっていた大和が聞き捨てならぬとばかり顔を上げる。
「…君は私を馬鹿にしているのか? 確かに私の身体は背丈からするとさして肉付きも良くないし、骨格も多少頼りなく見えるかもしれぬが、峰津院の血脈は概ね"こう"だ。男でもなく女でもない、大いなる概念を受け入れる純粋な巫覡の器として在るにはその方が都合が良いからであってだな……」
「そう…だったの? 確かに大和の身体ってコートを脱ぐとだいぶ華奢で、中性的な感じだけど」
「……。…その分、体躯の不利を補う業は身につけている。何ならこの場で披露して見せようか?」
大和の口からまたひとつ峰津院家について新たな事実が判明して、北斗が一つ目を瞬いたのも束の間。
北斗のたなごころにあった大和の手がぱっと払われる。
低まった声音から大和の不機嫌を悟り、この場で投げ飛ばされたり関節技を決められては叶わぬと、北斗は己の意図を伝えるべく言葉を足した。
「いや、そもそも侮ったつもりはなくて! …純粋にまだ大人になりきらない手だなあって」
すると、一先ず侮辱の意思がなかったことは伝わったようで、ふと引き結ばれていた大和の唇が解けた。
その辺りで 北斗はもう一度大和の手を取って、己の掌と重ねる。一回りほど北斗の手の方が大きい。
それが面白くなかったのか、振り払うことこそなかったが、隠すように大和は、北斗の手指をぎゅっと握りこんだ。
「君と私の年齢はひとつしか違わない。そうしみじみ言う事でもなかろう」
「そうだね。俺とひとつしか違わない、十七歳の手だ。まだ十七歳なんだよな、大和は」
握りこまれていた手を握り返す。包むように、北斗の手に力が篭る。
「なのに俺より小さなこの手で、この細い腕で、ずっと日本って国を、そこに暮らしてる俺たちの生活を守ってきてくれたんだなって思うと、何か、胸がいっぱいになる」
北斗はそのまま大和の身体を引き寄せて、残る腕で描き抱いた。大和が僅かに身じろぐ。
僅かな惑いを乗せて、長い銀の睫毛がぱたぱたと揺れる。やがて視線を伏せたところで、大和は頭を振った。
「やめろ。あまり私を子ども扱いするな。十七ともなれば一昔前であれば充分一人前として扱われた歳だ。現在でも女子ならば十六で嫁ぐ者も居る。第一、歳だけでそのものの立ち居地や在り様を画一的に定めるなど旧態然とした考えで……」
「じゃあ大和は、ちゃんと子どもで居られたことがあるの」
「……北斗は…私を、どうしたいのだ……」
じっと北斗が注ぐ視線が落ち着かぬように、大和は眉を下げる。
あおい天の色を映したひとみに大和は弱い。その目の奥に宿るひかり、北斗自身の気質こそが大和を惑わせる。当たり前のように誰かに手を伸ばすことができる、つよく、やさしく、真っ直ぐなたましい。
北斗の与えるものは、大和が幼いときに捨て去らねばならなかったものを、胸の奥にうずめたものを、思い出させる。
「あまり私を揺さぶってくれるな。君が君の情けで持って私を気に掛けてくれているのは伝わっている。だが、過保護は人は堕落させ、弱くする。そのようなことは私の望むところではない」
温くて、あまくて、やわらかい。唾棄するべきであるはずの、にも関わらず、目の前の相手が与えるものは大和にとって、嫌悪を抱かせない。
だからこそ、少し恐ろしい。自分が変わってしまうことが。弱くなるのではないかということが。
「弱くなればいいのに」
そんな大和の心中をまるで見透かしたように、北斗が呟いた言葉に大和は思わず息を呑み、かすかに表情をゆがめる。
「北斗! 君は私を怒らせたいのか!」
「ずっと張り詰めて居なければ保てない強さなんて脆いよ。そんな硝子の糸みたいな強さは、何時か千切れてばらばらになってしまいそうで、怖いんだ」
両の腕でまた抱き締められる。先程よりも篭る力が強い。縋るような、引き止めるような。そんな力の篭り方だった。
「俺は、甘くて緩くて、でも……大和は俺を弱いとは言わないだろう? いいじゃないか。強さの形なんてひとつじゃないんだから」
「……私と、君では、違う。君の強さを私は持ち得ない」
北斗から真剣に案じられているのが伝わる。大和はどうしたらいいかわからなくなる。絞り出した大和の声はかすれて震えた。
「知ってる。……だからこそ、たまには頼ったり弱ったりして欲しいって思う。そうやって、弱さを抱いた中に生まれる強さも知って欲しい。大和は強いしひとりで何だってできるけど、だからってずっとひとりぼっちでで立ち続けるのは、見ていて辛いし、寂しいよ。必要として欲しいよ。ちからだけじゃなくて、存在も。…これは俺の、独りよがりな気持ちかな?」
苦しげな表情を浮かべた北斗から真摯な声でかけられた言葉に、胸の奥が慄く。
こんな時ばかり大和の頭は余り上手く働いてくれない。彼のように思えるなら、世界はまた違う顔を大和に見せるのだろうか?
許されるのだろうか。寄ることを。…時に、弱くなる己というものを、許せるのだろうか。
ただひとつだけ大和に解かるのは、そうしてこちらを想い悩む北斗の気持ちを、無碍にすることはしたくないという想いだった。
「北斗」
名を呼ぶ。そっと、背中に腕を回して返す。大和の中にある価値観とは異なる考えを持つ相手。こんなにも触れ合って、近いのに、まだ埋まらない隔たりがある。
「……本当に、君は何時も私にとっての当たり前を突き崩していく。君の見ている世界はどのようなものなのだろうな。他者と認識など完全に共有できるものではないが、時に、無性にそれを見てみたくなる。……考えてはおこう。他ならぬ、君の言葉。君の思いだ。胸に留める価値はある」
だが、それでいいのだろう。ひとりとひとり、だからこそ寄り添えば二人になる。
おそらく、北斗と共に生きるというのは、彼の隣で考え続けるということだ。北斗の見せるもの、己の知るもの、その二つを良く考えて、世界を見つめていくこと。そうすることできっと、大和の世界も変わるのだろう。
「ありがとう。なんだかんだでそうやって大和は俺のこえを聞いてくれるね」
「聞くに値するとそう思うからだ。君は特別だ」
笑ってくれた北斗と視線を合わせて大和もまた微笑む。きつくなっていた腕の力に、漸く気付いた様子で北斗の手が緩められた。
そのことは少しだけ惜しいようにも、大和には思えた。
「……北斗」
「ん? なに?」
「……腕を外したと言う事は、もう、いいのか。その、…触れるのは」
直接的に強請るのははばかられたのか、遠まわしに誘う発言に北斗は悪戯な目をして大和を覗き込む。
「過保護はよくないんじゃなかったの」
「これは……必要な休息だ。君の腕の中は、一番、落ち着く」
大和にしては拙すぎる言い訳だ。だが、それ以上突っ込むほど北斗も野暮ではない。折角なのだ。機嫌を損ねるよりもっと有意義に時間を使いたいと思う。
「そっか。それは光栄な話だな。まだ、全然足りないよ。触れさせて」
北斗は、あたうる限りのいとおしさを込めて大和に口づける。受け入れて目を閉じた大和の顔は、どこかあどけなく、安らかだった。
触れ合うことを、少しでも幸福だと思ってくれるなら。それを贈ろう。
何時かお前が当たり前のものとして、暖かいものを受け止め、時に弱さを許すことが出来るように。
人目のない、例えば今のように夜の私室に二人きりという状況であっても。
差し向かい、頭に手を伸ばすといつも、僅かだけ肩が強張るのを知っていた。
「…撫でるだけだよ」
できうる限り甘くやさしく声をかけ、触れる手がただやわらかな接触に留まるのを実感すれば、強張りは直ぐに解けて大和はかすかに笑ってくれる。
大和が物慣れないだけで接触を嫌がるわけでないことに、北斗は救われていた。触れたいとは思っても、相手が拒むことは無理強いしたくない。
「大和は人に慣れない獣みたいなところがあるな」
柔らかで綺麗な銀の和毛に指を通して、梳りながら間近で言うと、髪と同色の長い睫毛が伏せられる。
「実際、あまりこういったことには慣れない。君はどうして私に触りたがる?」
「好きな相手に触れたくなるのに理由が要るか?」
大和が一瞬言葉に詰まるのが見えた。質問に質問で返すのは意地が悪いと、もう少し言葉を足すことにした。
「どうしてって聞かれたら答えは「触れたいから」になるよ。触れて、確かめて、言葉だけじゃつたえきれないものを伝えたい、甘やかしたい。日本人は奥ゆかしいけど家族とか親友とか…恋人とか。そういう近い関係ならスキンシップって自然じゃないかな」
「…"一般人"はそうなのか」
「大和は違う?」
「解からない、というのが正しいな。他者との身体的な接触は、例え親族とであっても殆どない。ただ、君に触れられるのは…嫌ではない。寧ろ、」
その先が声として紡がれることはなかったが、大和の形の良い唇は一瞬、すき、という言葉の形に動いた気がした。
嬉しくて北斗はついつい喜色を顔に浮かべてしまう。北斗の表情の内心を目敏く察した大和の白い顔がさっと朱を帯びる。
強い覇気を宿した銀眼がジロリと北斗を睨めつけてくるが、照れ隠しにしか見えない。
「やーまと、俺に触られるのは嫌じゃなくて? それで?」
「この私が許しているのだ。…みなまで言わずとも察しろ」
冗談めかして尋ね返すと、軽く肩を叩かれた。不機嫌そうに引き結ばれた唇と裏腹に、顔は耳まで赤く染まって、声音はどこか恥じ入るような甘さが混ざる。
見ていると自然、北斗の表情は和らいでくる。
可愛い。愛しい。抱き締めて、触れて、めちゃくちゃに甘やかしたい。
「ごめんってば。ちゃんと分かってるよ。…な、大和。こっちにおいで。俺の膝の上。今日はもっと沢山触りたい。…だめ?」
ベッドに腰掛けて、ぽんぽんと膝の上を叩き、招いた。
大和は黙り込んでそんな北斗の動作を見つめていたが、幾らかの逡巡の後、
「……仕方のない奴だ、君は」
そう呟いて、大和はぎこちなく北斗の膝に乗り上げた。
ブライベートで北斗の願う声を大和は概ね袖にしない。惚れた弱みと言うやつだ。逆もまた然りで、大和の願いに弱いのは北斗も同じなのだけれど。
これでいいのかと視線を向けてくる大和に笑いかけて、彼の身体のラインを隠す重厚なコートを剥ぎ取る。大和の、ジプス局長としての威厳を演出するそれは、今のふたりだけの時間にあっては少々無粋な邪魔者だ。
そして、上は濃い灰色のシャツだけになった身体を、本当は服一枚だって隔てるものがあるのがもどかしいようないとおしい体温を、北斗は大切に抱き締めた。
腕の中に納まった痩躯の背を優しく擦っていると、少しずつ大和の身体からは緊張が解けて、体重がおずおずと北斗の身に預けられる。
こんな風に大和が無防備な接触を許してくれるのが、北斗は嬉しかった。
ささいで控えめな甘え方が、らしくて好ましく、同時にもう少し凭れてくれても構わないのにとも思う。
少しばかり所在無げにしている大和の腕を、北斗は優しく取る。抵抗がないのを良いことに白い手袋を器用に外してしまい、顕わになった華奢なつくりをした五指を改めてまじまじと見た。
陽を知らぬようなしろい、うつくしい手だ。だが、その実柔さよりも実用性を秘めた部位であることを北斗は知っている。形良くほっそりとして見える手指は、鍛錬や書類仕事で培われ、存外硬い。
とはいえ、成人男性のそれと比すれば幼さが残る。手から続く腕もまた。
無駄な肉などひとところもない、丹念に砥がれた刃を思わせるかいなは──けれど、まだ性的に分化しきらぬ少年のものだ。
「大和の手は細いな」
ポツリと思わず感想が零れると、北斗の腕の中、安ろっていた大和が聞き捨てならぬとばかり顔を上げる。
「…君は私を馬鹿にしているのか? 確かに私の身体は背丈からするとさして肉付きも良くないし、骨格も多少頼りなく見えるかもしれぬが、峰津院の血脈は概ね"こう"だ。男でもなく女でもない、大いなる概念を受け入れる純粋な巫覡の器として在るにはその方が都合が良いからであってだな……」
「そう…だったの? 確かに大和の身体ってコートを脱ぐとだいぶ華奢で、中性的な感じだけど」
「……。…その分、体躯の不利を補う業は身につけている。何ならこの場で披露して見せようか?」
大和の口からまたひとつ峰津院家について新たな事実が判明して、北斗が一つ目を瞬いたのも束の間。
北斗のたなごころにあった大和の手がぱっと払われる。
低まった声音から大和の不機嫌を悟り、この場で投げ飛ばされたり関節技を決められては叶わぬと、北斗は己の意図を伝えるべく言葉を足した。
「いや、そもそも侮ったつもりはなくて! …純粋にまだ大人になりきらない手だなあって」
すると、一先ず侮辱の意思がなかったことは伝わったようで、ふと引き結ばれていた大和の唇が解けた。
その辺りで 北斗はもう一度大和の手を取って、己の掌と重ねる。一回りほど北斗の手の方が大きい。
それが面白くなかったのか、振り払うことこそなかったが、隠すように大和は、北斗の手指をぎゅっと握りこんだ。
「君と私の年齢はひとつしか違わない。そうしみじみ言う事でもなかろう」
「そうだね。俺とひとつしか違わない、十七歳の手だ。まだ十七歳なんだよな、大和は」
握りこまれていた手を握り返す。包むように、北斗の手に力が篭る。
「なのに俺より小さなこの手で、この細い腕で、ずっと日本って国を、そこに暮らしてる俺たちの生活を守ってきてくれたんだなって思うと、何か、胸がいっぱいになる」
北斗はそのまま大和の身体を引き寄せて、残る腕で描き抱いた。大和が僅かに身じろぐ。
僅かな惑いを乗せて、長い銀の睫毛がぱたぱたと揺れる。やがて視線を伏せたところで、大和は頭を振った。
「やめろ。あまり私を子ども扱いするな。十七ともなれば一昔前であれば充分一人前として扱われた歳だ。現在でも女子ならば十六で嫁ぐ者も居る。第一、歳だけでそのものの立ち居地や在り様を画一的に定めるなど旧態然とした考えで……」
「じゃあ大和は、ちゃんと子どもで居られたことがあるの」
「……北斗は…私を、どうしたいのだ……」
じっと北斗が注ぐ視線が落ち着かぬように、大和は眉を下げる。
あおい天の色を映したひとみに大和は弱い。その目の奥に宿るひかり、北斗自身の気質こそが大和を惑わせる。当たり前のように誰かに手を伸ばすことができる、つよく、やさしく、真っ直ぐなたましい。
北斗の与えるものは、大和が幼いときに捨て去らねばならなかったものを、胸の奥にうずめたものを、思い出させる。
「あまり私を揺さぶってくれるな。君が君の情けで持って私を気に掛けてくれているのは伝わっている。だが、過保護は人は堕落させ、弱くする。そのようなことは私の望むところではない」
温くて、あまくて、やわらかい。唾棄するべきであるはずの、にも関わらず、目の前の相手が与えるものは大和にとって、嫌悪を抱かせない。
だからこそ、少し恐ろしい。自分が変わってしまうことが。弱くなるのではないかということが。
「弱くなればいいのに」
そんな大和の心中をまるで見透かしたように、北斗が呟いた言葉に大和は思わず息を呑み、かすかに表情をゆがめる。
「北斗! 君は私を怒らせたいのか!」
「ずっと張り詰めて居なければ保てない強さなんて脆いよ。そんな硝子の糸みたいな強さは、何時か千切れてばらばらになってしまいそうで、怖いんだ」
両の腕でまた抱き締められる。先程よりも篭る力が強い。縋るような、引き止めるような。そんな力の篭り方だった。
「俺は、甘くて緩くて、でも……大和は俺を弱いとは言わないだろう? いいじゃないか。強さの形なんてひとつじゃないんだから」
「……私と、君では、違う。君の強さを私は持ち得ない」
北斗から真剣に案じられているのが伝わる。大和はどうしたらいいかわからなくなる。絞り出した大和の声はかすれて震えた。
「知ってる。……だからこそ、たまには頼ったり弱ったりして欲しいって思う。そうやって、弱さを抱いた中に生まれる強さも知って欲しい。大和は強いしひとりで何だってできるけど、だからってずっとひとりぼっちでで立ち続けるのは、見ていて辛いし、寂しいよ。必要として欲しいよ。ちからだけじゃなくて、存在も。…これは俺の、独りよがりな気持ちかな?」
苦しげな表情を浮かべた北斗から真摯な声でかけられた言葉に、胸の奥が慄く。
こんな時ばかり大和の頭は余り上手く働いてくれない。彼のように思えるなら、世界はまた違う顔を大和に見せるのだろうか?
許されるのだろうか。寄ることを。…時に、弱くなる己というものを、許せるのだろうか。
ただひとつだけ大和に解かるのは、そうしてこちらを想い悩む北斗の気持ちを、無碍にすることはしたくないという想いだった。
「北斗」
名を呼ぶ。そっと、背中に腕を回して返す。大和の中にある価値観とは異なる考えを持つ相手。こんなにも触れ合って、近いのに、まだ埋まらない隔たりがある。
「……本当に、君は何時も私にとっての当たり前を突き崩していく。君の見ている世界はどのようなものなのだろうな。他者と認識など完全に共有できるものではないが、時に、無性にそれを見てみたくなる。……考えてはおこう。他ならぬ、君の言葉。君の思いだ。胸に留める価値はある」
だが、それでいいのだろう。ひとりとひとり、だからこそ寄り添えば二人になる。
おそらく、北斗と共に生きるというのは、彼の隣で考え続けるということだ。北斗の見せるもの、己の知るもの、その二つを良く考えて、世界を見つめていくこと。そうすることできっと、大和の世界も変わるのだろう。
「ありがとう。なんだかんだでそうやって大和は俺のこえを聞いてくれるね」
「聞くに値するとそう思うからだ。君は特別だ」
笑ってくれた北斗と視線を合わせて大和もまた微笑む。きつくなっていた腕の力に、漸く気付いた様子で北斗の手が緩められた。
そのことは少しだけ惜しいようにも、大和には思えた。
「……北斗」
「ん? なに?」
「……腕を外したと言う事は、もう、いいのか。その、…触れるのは」
直接的に強請るのははばかられたのか、遠まわしに誘う発言に北斗は悪戯な目をして大和を覗き込む。
「過保護はよくないんじゃなかったの」
「これは……必要な休息だ。君の腕の中は、一番、落ち着く」
大和にしては拙すぎる言い訳だ。だが、それ以上突っ込むほど北斗も野暮ではない。折角なのだ。機嫌を損ねるよりもっと有意義に時間を使いたいと思う。
「そっか。それは光栄な話だな。まだ、全然足りないよ。触れさせて」
北斗は、あたうる限りのいとおしさを込めて大和に口づける。受け入れて目を閉じた大和の顔は、どこかあどけなく、安らかだった。
触れ合うことを、少しでも幸福だと思ってくれるなら。それを贈ろう。
何時かお前が当たり前のものとして、暖かいものを受け止め、時に弱さを許すことが出来るように。
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