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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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局長おたおめ主ヤマ編。実力主義ED後の大和誕生日話。「満ち足りてゆく愛」と「穏やかな充足」を貴方に。
主人公の名前は宇佐見 北斗。当たり前のようにほもで恋人同士(くっついてる)設定でお送りします。
ついでに六月なのでブライドネタも仕込んでみた。
18歳になったら結婚できるもの!(ほもだけど…事実婚ということで…)

タイトルは六月の誕生石から。
指輪の石はシルバームーンストーンと、バライバトルマリンあたりを想定しています。後者の方が高価…。
ウサミミも本当ははじめから自分の目に似た色の石の方を局長に持って欲しかったんですけど、「俺の目の色の石を何時も身につけててよ」とは、自分から言い出せなかったらしい…。
なのでヤマトさんの申し出は結果オーライというか、渡りに船というか…ウサミミにとってもうれしかったこと。
という裏話をここで呟いておきます。

「大和、おかえり! 誕生日おめでとう!」
 破裂音を伴って色とりどりの紙テープや紙吹雪が室内に躍った。クラッカーを盛大に使われたのだと一泊遅れて気付く。
 自室に戻るなり、待ち構えていたらしい様子の北斗に満面の笑顔で出迎えられて、らしくもなく大和は驚かされてしまった。
 北斗の気配は大和の中で馴染み、親しみすぎて、つい無警戒になってしまうところがある。よくない傾向だと自省しつつ、かけられた言葉の意味をここで飲み込んだ。
 時計を確かめれば時刻は真夜中過ぎ。どうやらもう6月10日になっていたようだ。
 日付を見、北斗の言葉を思い返して、そういえば今日は己の誕生日であると大和は自覚するに至った。
 言われて漸く思い出したことからも解かるように、誕生日というものは大和にとってさして特別な意味を持ってはいない。だが、北斗にとっては違っていたようだ。
 考えてみれば月が変わってからと言うもの、北斗は微妙に落ち着きがないというか隠し事をしているというか、楽しそうにそわそわと人と話し込んだり、よく買い物に出かけたりしていたように思う。
 その理由を大和は知りたいと思っていたが、不意打ちで答えを得る形になった。成る程、北斗は今日のために秘密裏に準備をしていたのだ。

 北斗とはほぼ部屋を別にしていることが無意味になるくらいに夜は同室で過ごすことが多い。とはいえ、互いに帰還が深夜にかかることも少なくない忙しい身の上であったから、別衾する夜もある。
 予め予定が解かっていればそれを伝えるようにしており、今日が丁度そうだった。名古屋に出張するから遅くなる、自室で休むようにと朝に言っておいたのだが。
 大和の帰りが日付の変更線を跨ぐことを見越してわざわざ部屋の中に控えていたのか。何ともご苦労なことであると再度驚かされる。
 悪戯の成功した子供のような顔で笑う恋人を、大和が思わずまじまじと見遣れば、少しばかり残念そうに北斗の眉が下がる。
「なんだよー、反応鈍いな。サプライズを演出したつもりだったんだけど。…呆れた?」
「いや、そういう訳ではないが。君も忙しいだろうに、私を祝うためにわざわざ待っていてくれたのか」
「うん。だって一番に祝ってやりたくて。それにお前、今日も朝から仕事だろ? 逃すと当日中に祝えないかなって思ってさ。クラッカー以外にも色々準備したんだぞ。ほら、こっちこっち!」
 部屋の入り口で立ち止まっていた大和の手を北斗が捕まえ、室内へと腕を引き連れて行く。
 北斗のペースに巻き込まれることを、大和は不思議と不快に感じない。勿論ほかの人間であればこうはいかない。彼は大和にとって特別だから。
 連れられるまま部屋を行けば、鼻腔に温かみのある料理の匂いが届く。
 夜食と呼ぶには些か豪勢な食事が、北斗が持ち込んだと思しき折り畳みテーブルの上、広げられていた。
 おそらくはすべて北斗の手料理だ。災厄前、自炊が多かったという恋人は偶に大和のためにその腕を披露してくれる。余り凝ったものは作れないけれどと北斗は言うが、家庭料理の類にはとんと縁のない生活をしてきた大和からすれば、とても新鮮であり同時に格式ばらず気を抜いて食べることのできる味であると気に入っている。彼が自分のために作ってくれるというのも気分が良い。
 テーブルの上を見れば、少しずつ用意されている料理は、大和が以前に美味しいと伝えたことのあるものばかりだ。これは随分と手間がかかっただろうに。連れて来た相手の方を向けば、どうだろうかと言いたげに大和を見ていた。
「また随分と張り切ったものだな。……悪くは、ないが」
「誕生日は好きなご馳走囲んでお祝いするものなんだよ。ほんとはみんなでって言いたい所だけど、深夜だし、そうでなくてもみんな結構忙しいから、その分俺が祝うので勘弁な」
「構わん。このように個人的に祝われるとこと自体、そもそもなかった経験だ」
「……あー、うん。何となくそんな気はしてた。だからその分、盛大に祝ってやりたいなあって。とりあえず料理は頑張って用意した。大和が好きなたこ焼きもちゃんと作ったし、バースデーケーキもあるし! 夜だからそんなに腹に入らないだろうけどさ、残してもいいから、ちょっと食べてくれると嬉しい」
 促されるまま、北斗と隣り合って腰を下ろす。ほかほかと湯気立つ料理の数々。用意された食事が冷めていないのは、悪魔の力でも借りたのだろうか。
 考えてみれば、移動やスケジュールの関係で、夕食は栄養ゼリーと錠剤で済ませていたことを大和はここで思い出す。食欲をそそる香りに胃が空腹を主張しだすのを感じて、現金な己の身体に大和は苦笑を零した。
 だが今は都合が良いとも言える。これならば彼が準備してくれたものを全て無駄にせず食べることができるだろう。北斗は真夜中だからと気遣うようなことを言ったが、たとえ満腹だったとしても、大和は北斗の手料理を誰かに渡したり残したりしたくはない。
「何を言う。これらは私の為に北斗が用意したものなのだろう? ならば、私の分は一欠けらとて残さず、私の内に納まるべきだ」
「……そっか。ありがと。ただ、食べ過ぎて腹壊すなよ? 朝からまた仕事なんだから」
 嗜めるような、からかうようなことを言いながらも、大和の返答を聞いた北斗の声は、弾みを押さえられず嬉しそうだった。解かっていると大和は返して、食前の挨拶を重ね、手料理に箸をつけていく。
 時間こそ遅かったが、こうして共に囲む食卓は好ましいものだ。ただの栄養補給ではない。じわりと腹の底からあたたかく、満たされるような食事というものは、大和が北斗と過ごすようになってから知った。
「美味いな。あれも、これも」
 他であればこう早くは進まない食事の手を一度止めて、素直に感想を伝えれば、誇らしそうに、嬉しそうに北斗が目を細めるから、余計に胸の内が暖かくなるようだった。

 食事にひと段落着いたところで、北斗の言う事に付き合って、ケーキの上に蝋燭を十八本立て、そこにつけた火を吹き消す。
 この行為に意味があるのかと大和が尋ねると、北斗は「願いごとをかけて消すと叶うらしいよ」答え、一般人の誕生日における習いなのだと納得した。
 たかだか蝋燭を吹き消す程度で願いが叶うとは思わないが、験担ぎのようなものなのだろう。
 市販のものよりはサイズ小さめのホールケーキは、これもまた北斗が作ったらしい。「菓子の類は余り作らないけれど、維緒たちにアドバイスを貰って頑張った」とのことだが、生クリームと苺を初めとするフルーツで、宝石のように飾られたケーキは少しばかり食べるのが勿体無いと思えるような出来だった。惜しみつつ切り分けられたものを食べると甘さが上品に控えられた、優しい味がした。
 しかし、ケーキの上に鎮座していた砂糖細工のプレートに『大和くん十八歳おめでとう』などとチョコレートペンで書かれているのは如何なものか。ケーキ屋に頼むとそんな感じにされるものだと北斗は笑う。
「……私をあまり子ども扱いするな」
「冗句みたいなもんだろ。甘やかしたいのは確かだけど、子供じゃないのは解かってるって。それに、ちゃんと子ども扱いじゃないプレゼントだって用意してる」
 既に充分北斗の用意したもので祝われているように大和には思ったのだが、まだ続きがあるらしい。大和が軽く首を傾けると、「ケーキ食べ終わってからな」と先送りにされた。そうして隠されると気になるもので、じっと視線を送ったが、そしらぬ顔でケーキの攻略を続けられてしまい、結局大和もそれに倣うことにする。
 黙々と生クリームや瑞々しい果物の甘さを味わい、消化することに大和が集中していると、不意に「あ」と隣で北斗が声をあげた。
「大和。口のところ、クリームとんでる」
 あまり食べなれない洋菓子であるから知らず無作法をしてしまっていたようだ。指摘を受けて大和は眉を顰める。それこそ子どもでもあるまいに。直ぐにポケットからハンカチを出し、口許を拭い取ろうとしたが、それより早くに北斗が動いていた。
 クリームを浚うように唇が寄せられる。生暖かい濡れた感触に唇端を拭われて、大和は小さく息を呑んだ。呼気の乱れが伝わったのか、北斗は悪戯な面持ちでそのまま、唇を重ねてくる。食べていたケーキの分、普段よりも重ねた唇が甘い。深くなりきる前に離れていったが、鼓動が早くなってしまったことは否めない。大和は軽く己の唇を掌で覆う。キスひとつで少し上気してしまった顔をみられぬように、北斗から逸らした。
「……そうだな、君が私を子どもと見ているなら、このようなことはするまい」
「照れ隠しなのか、それ。そうだよ。子どもにはしない、もっと色んなこと、しちゃってるだろ」
 頤をとられて、大和は北斗の方を向かされる。顔を正面から覗き込まれ、再度唇が落ちたのは、ほのかに紅くなった頬にだった。それを皮切りにキスの雨が降り注ぐ。額に、目尻に、鼻の頭に、顎に。ゆっくりと、やわらかく、やさしく。気恥ずかしくなって大和がつい双眸を瞑ると、北斗が「可愛い」と囁くのが耳に届いた。反射的に目を開けようとしたが、柔らかな熱が目蓋に寄せられて、開きづらくなってしまった。
「そのままもうちょっと目、閉じてて」
 願われれば何がしたいのか気になったものの、言われるままに大和は瞳を閉じた状態でいる。すると大和の左手を北斗がとるのがわかった。食事をする時もつけたままだった白手袋を取り外される。そして、指に通される冷たい感触。これは金属か。何かを指に嵌められたと理解したところで、目を開けても良いといわれて、大和は直ぐに己の手を見た。
「改めて、十八歳の誕生日、おめでとう。大和。十八年前お前が生まれたこと、今までお前が生きてきたこと、今生きてること、俺と会ってくれて、ここに居てくれて、全部、全部に感謝したい。感謝してる。だから今日に、おめでとうって、ありがとうって言いたい。……それは、俺からのプレゼント」
 同時に北斗の声が耳に届く。大和の指に輝いているのは銀色のリングだった。青白い光沢を有する、灰色がかった月のような石が象嵌されている。宝石が用いられているが、女性的なものという訳ではなく、男が嵌めていても違和感のないような、流麗だが硬質なデザインの指輪だった。室内の明かりに透かすと柔らかなきらめきが目に入ってくる。
「こういうのお前はどうかなって思ったけど、おそろいのもの、持ちたいなって」
「揃いで…用意したのか?」
「嫌じゃなければ、だけど。俺のはこれ。色違いな」
 そう言って北斗はもうひとつ指輪を取り出すと、大和の見ている前で指に嵌めて見せた。デサインも素材も、大和が贈られたものと同じで、あしらわれている石だけが違う。此方は、青い星のような明るいネオンブルーの宝石が輝いていた。目の前で微笑む北斗の瞳を思わせる透き通る色に、大和はしげしげとそれを眺める。
「あ、ただの飾りじゃなくて、ちゃんと実用性もあるんだからな? フミや悪魔に智恵と力貸してもらって、ちょっとした防御用のマジックアイテムになってる。手袋の下につけるなら、そんなに目立たないだろうし」
 道理で霊力を感じるはずだと大和は納得した。"ちょっとした"等と北斗は軽く口にしたが、二つの指輪に込められている霊力や防護の概念は、多少の厄災やそこらの人間が使う刃物程度なら退けてしまいそうなほどの強靭さを有している。随分と時間や手間隙をかけて彼はこれを準備してくれたのだろう。
「お前、欲しいものは自力で手に入れちゃうし、物欲あんまりないしで、何上げるかすっごい悩んで、結局あげたいものをあげることにした。俺は割とかたちから入るタイプだから、目に見える形でお前と繋がっていたい」
 照れくさそうに、だが、はっきりと北斗は大和に告げた。揃いで誂えた指輪の意味、贈る意図は大和にも解かる。自分たちは男同士で、異性の恋人同士のように婚姻を上げられるわけではないが、契りを交わすのと同じくらいに強く強く思っているのだと告げられているようで──その真剣な想いは、嬉しかった。
 ただ、ひとつだけ不満があるとすれば。
「北斗。君の気持ちは、ありがたく受け取ろう。だが、できるならば君が嵌めている指輪の方を私にくれないか?」
「お前と俺とそれぞれの目の色に合わせて石を選んでみたんだけど。逆のが良かった?」
「君が選んでくれたのだ、こちらの指輪もよい。ただ、北斗の瞳の色に似た石のほうが好ましく思った。北斗、君と常に共に居られるようで」
 同じデザインならば、彼を思わせるものが欲しいと大和は強請った。さいわい、北斗と大和の指のサイズはそう変わらない。交換しても差しさわりはないだろう。大和の言葉に北斗は少し目を瞬いたが、直ぐに「いいよ」と何処か嬉しそうに頷いた。
 互いの指からリングを外して、改めて互いの手で嵌め直し、指と指を絡めあう。
「指輪交換とかちょい照れるな……」
「神前で誓い合う儀式のようだからか?」
 互いのほかには誰も居ない、月明かりだけが見ている部屋で密やかに見つめあい、笑いあう。指輪を嵌めあった手を、つなぐ。
「うん。ついでに言葉にして誓っとく? 病める時も、健やかなる時も一緒に、って」
「改めて誓うまでもあるまい。君はとうに私を選んだ。違うか?」
「そうだな。あの選択の夜に、俺はお前と一緒に進むって選んだんだから。…指輪も、余計だった?」
「いや、構うまい。無形の誓いは既にこの胸に。だが、目に見える形でも北斗と私が繋がっている。その実感がこの手に常にあるというのは、悪い気はしないものだ」
「意地っ張り。素直に嬉しいっていえよ」
 つないだ手に、リングの光る指に北斗がそっと口づける。
「君には感謝している。はじめてだ。私個人をこのように祝い、物を贈り、生まれてきたことをこんなにも寿がれたのは。……嬉しく、思う。私物と言うのはあまり持ち合わせていないが、これはそうか、君がくれた、私だけのもの、だな」
 贈られた物を、そこに宿る想いを、真摯に噛み締めている声で大和は応えた。指元から北斗の唇が離れると、今度は大和がそこにキスを落とす番だった。
「大和はもう少し自分だけのものを持つようにしろよ。部屋の中、寂しいだろ」
「なら、また君がこうして私に何かを贈ってくれるか?」
 戯れのように大和が告げた言葉に、北斗は真剣な顔をするのがわかった。改めて見回すまでもなく、大和の私室内は衣住の上で必要最低限のものだけが揃えられている。私物といえそうなものはクローゼットのなかの幾らかの私服とそれから机の中に、北斗が撮って渡した写真、手紙、そんなささやかなものばかり。整然として美しいが、生活臭は薄い。北斗は常々そのことが気になっていたようだ。
「お前がそうして欲しいなら。いや、…違うな。俺がそうしたい。来年も、その先も、ずっとずっと先も。俺がお前を祝って、寿いで、お前のものを、お前だけのものを沢山増やして、いっぱいにしてやるよ」
 思い出と、一緒に。北斗はそう約束してくれた。
「君は、そうでなくとも沢山のものを私にくれていると解かっているのか? 貰うばかりは性にあわん。何れ同等かそれ以上で返すと約束しよう」
 答えて笑った大和の顔は、確かに幸福を湛えていた。満たされていく。満ち足りていく。つないだ手に力を込めて、誓うように、確かめ合うように。どちらからともなくまた、唇を重ねあった。

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