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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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主ヤマ誕生日ネタの別版というかボツというか。
前振り長すぎて本題に入る前に力尽きそうだったので、ムーンストーンでの流れの方を正式採用しました。
こっちの流れだと誕生日当日に高位悪魔が出てウサミミさんが忙しくなり、ウサミミがなんとか仕事終わらせて部屋に変えると、約束を守って早くに返ってきた局長が既に待ってて、「あんまり準備できなくてごめんな、来年はちゃんと祝うから」とウサミミが謝りつつ、ふたりで部屋の冷蔵庫にあった材料でたこ焼きしてお祝い、その後指輪を渡すみたいな感じでした。
それはそれでよかったのだろうか…。


 五月の末、深夜の私室にて。北斗と大和は、特に用事がなければ夜の時間帯はどちらかの部屋で過ごすのが当たり前になっており、この夜も何時ものように共に過ごしていた。
「大和、お前の6月の予定ちょっと見せてくれる?」
「ああ、構わないが」
 月末や月はじめに互いの大まかな予定や動きを確認しあうのは毎月のことなので、北斗が改めて尋ねても特に不審には思われなかったようだ。それでいい。北斗はこれから聡い恋人に気付かれずにサプライズを仕掛けたいのだ。6月10日、大和の誕生日をどう祝うかと言う算段はひっそり隠れてよく練る必要がある。スタートから躓いてしまうわけには行かない。
 直ぐに携帯に転送されてきたデータをチェックする。が、目的の日付を確認したところで北斗は眉を下げる羽目になった。
「ちょ、おま、なんで6月10日に予定いれてやがりますか! しかも朝から夜までぎっちりじゃないか!」
「……何か問題でも?」
 思わず声に出してしまい、しまったと思った時にはもう遅い。大和がゆっくりと一つ目を瞬いてから、不審げに首を捻るのが見えた。
「だって、お前、誕生日……」
 もごもごと北斗が零した言葉で、大和は北斗の心中をある程度察したようだった。
「私は別段、自分の生誕日だからといって特別に祝う必要性など感じない」
「家のほうで祝ったりとかないのかよ。大和って当主なんだし、一族で宴とかしそうなイメージ…」
「去年まではそのようなこともあったが、今年は不要だと辞した。復興の最中だ、身を慎むと言えば文句は出なかったぞ」
「お前、そうやって前例作って来年もその先も中止に追い込むつもりだろ……」
「くだらない習慣は断ち切るべきだと思わないか? 実際に祝うつもりがあるかも解からぬような宴席ならば、時間と資源の無駄だ」
 不機嫌そのものといっていい表情で言い切った白い顔。大和は阿諛追従や言葉ばかりの機嫌取り、おもねるような行いを嫌う。ようは潔癖なのだ。峰津院で行われていた祝宴がどのようなものか北斗には知りようもないが、大和の様子からすると余り楽しいものではなさそうだ。大和個人を祝うためというよりも当主の誕生日であるから形式としてそういった席を設けているような、そんな、そらぞらしい行事なのかもしれない。そこまで考えてふと北斗はあることに気付く。
(……祝うつもりがあるか解からないよう行為は無駄だけど、逆に言うと、心からおめでとうって言うんだったら、無駄じゃないってことか?)
 大和自身そう考えていることに気付いていないのかもしれない。指摘したら即座に否定されてしまう気もする。
 北斗は、目の前にいるひとつ年下の少年の気性をある程度は理解しているつもりだ。気位が高く、無駄と感情に流されることをよく思わない彼が、素直に、ちゃんと祝ってくれるなら嬉しいなどと言うはずがない。
 それに、特別に祝う必要性を感じないといったのも本心だろう。合理を尊び、実用をこそ優先するのが北斗の知る大和の外面だ。でも、北斗は、そんな大和に心の篭った誕生日のお祝いという奴を贈ってやりたいと思っている。生まれてきた日をおめでとうと祝ってもらえることは嬉しいこと、しあわせなことなのだと教えてやりたいのだ。一年に一度しかないこの日を、何時もどおり無味乾燥と仕事だけで埋めて終えてしまうのは勿体無い。来年、同じ日を迎えたとき、大和が今年も祝って欲しいと思えるような、そんな日にできたらいいと思う。
 こんな風に考えることは、北斗の価値観の押し付けかもしれない。だけれど、選択肢を増やして悪いと言う事はないはずだ。北斗が示し、渡したものに触れて、それでもなお大和にとって価値がないというならばそれは仕方のない話である。少し、寂しくはあるけれど。
「あのさ、俺は大和のこと、大和が生まれた日を祝いたい。入ってる予定ずらせとは言えないけど、仕事終わったら直ぐ帰ってきてくれよ? それと、次の日は休みいれといて。な、約束」
 予定が埋まってしまう前にと北斗は先だって強請った。大和の予定は、本人が多忙を厭わないことも合間って直ぐに埋まってしまいやすい。幸いにして確認した限りで11日には特別な用件は入っていない。今から工作すれば休みをもぎ取ることは難しくないだろう。
「まったく、君は時々ひどく強引だな……」
「そういう俺がいいんでしょ、大和は」
「ばかもの」
 不遜ともいえる北斗の声に、大和からの返答は、呆れているというよりは照れ隠しとしか聞こえないような響きだった。大和が、北斗と二人きりのときだけ見せてくれる内面。普段は鋼のように冷たく鋭いこころを、北斗の言葉に、いちいち柔らかく動かして、すねたり、怒ったり、笑ったりしてくれる。それは共に過ごすうちに北斗が少しずつ引き出して、知ることの出来た大和の姿だ。もっと沢山、新しい大和が見たいと北斗は何時も思っている。だから色々な催しをひとつずつ拾い上げては、彼に仕掛けに行くのだ。反応が見たくて、彼が無駄だと切り捨てるものの中にも悪くないものもあるのだと知ってほしくて。
「……で、どうなの。約束してくれる?」
「こういう時の君には叶わないな。解かった。約束しよう」
 押し切ると小さく溜め息を零しつつも、結局は北斗の我侭を無碍にせず、大和は頷いてくれた。
「ありがとう。それじゃあ、後は当日のお楽しみってことで」
 まるきり悪戯を思いついたときの子供のような顔で北斗は笑い、それから、謝意を込めて恋人の口にそっと唇を落とす。大和は触れるぬくもりを拒む事無く、静かに目を閉じて受け入れた。

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