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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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『願いごとひとつだけ』の後日談小話。
ツイッターで呟いたものを纏めて少々加筆修正しています。
が、前半は主人公と局長は背景です。メインで会話しているのはケイタとフミ。フミから見た二人について。
後半は、7日目朝のフリーバトルな話。ケイタとフミに加えて主ヤマ。
ウサミミが頑張ってる所と戦闘シーンが描きたかったんですがどうみてもただのバカップル話ですありがとうございました。
主人公の名前は宇佐見 北斗です。


 世界が未曾有の大災害に見舞われてから七日目の朝。
 これまで七つの星の名を冠する侵略者と壮絶な戦いを繰り広げた悪魔使いたちは、掲げられた主張の中から、それぞれに望む道を見出し、別れた。
 東京、大阪、名古屋。分かたれた陣営のうち、実力主義を支持する面々が集う、ジプス大阪本局。
 早朝、現場リーダーである青年の部屋に一端集まった大阪勢が、改めて現状を確認し、解散の運びとなった直後のこと。
 
 部屋を出た辺りで、少し回りを窺うようにしてから、唐突に啓太が史を呼び止めた。
「おい変てこ」
「何さチビ筋肉」
「誰がチビ筋肉や!」
「先にふっかけたのはそっちでしょうが。で、何?」
 啓太の返答を軽くスルーし、史は本題を促す。すると、啓太は珍しいことに少し躊躇するような沈黙を挟んでから、声を潜めて史に問いをひとつ向けた。
「……。…1つ聞くで。峰津院は女やったんか?」

 予想外の問いかけだった。
 実力主義を掲げ、牽引するジプスの局長、峰津院大和は確かに中性的といって良い見目をしてはいるが、それにしてもあまりにもあまりな質問である。
「アタシはそんな話聞いた事ないし、前に見た生体データも普通に男だったよ」
 史の答えも当然ながら、啓太の疑問を真っ向から叩き切る明快なものであった。
「突然何さ。頭でもぶつけた?」 
 それでも未だ微妙に納得しかねる様子の啓太を見て、史はかるく肩を竦めた。
「ちゃうわ! …何や、峰津院の奴、今日は雰囲気が何時もと違うやろ」
「……。あー、…言われてみればそうかも」
 ちらりと史が向けた視線の先には、話題の主である大和が居る。少し離れた位置で宇佐見北斗となにやら話し込んでいるようだ。
 その大和は、確かに昨日と比べると少しばかり様子が違って見える。
 具体的に何処がどうという訳ではない。敢えて言うなら纏う空気。雰囲気の変化としか言いようがないが、何となく目を惹くものがある。
 例えるならば、冷たい石の蕾が開いて鮮やかな生花になったような。
「おう、なんや妙に…」
「色っぽい?」
 微妙に言葉尻を濁す啓太に構わず、史はあっさりと大和の様子を断じてみせた。あまりに直截な物言いに啓太は思わず史に噛み付く。
 
「は、はっきり言うなボケェ!」
「多感なお年頃面倒臭い」
 史は半眼で、呆れたようなため息を吐いた。その後に補足を加える。
「アレは女だったとかそういうんじゃなくて、オトナになったってヤツでしょ。…アンタの目から見て他に昨日と変わったヤツいる?」
「宇佐見は妙にスッキリしたツラしとるな。それが関係あるんか?」
「…もう答え殆ど出てるようなモンじゃない。ま、でもここに残った面子で気付いてるのはアタシ位か」
「一人で全部解かってるツラしよってからに…宇佐見と峰津院に何かあったんか。これからの戦いに障るんはごめんやぞ」
「そこは大丈夫。…寧ろあの二人絶好調だろうから。下手したらアタシ達の出番ないかもね」
 今後の話をしているのか、廊下の片隅で顔を突き合わせて話している局長とリーダーを改めて見て、史は笑う。
「こっちからすると漸く纏まったか、ってカンジ。自覚無自覚の違いはあっても、端から見たら互いにどう思ってるかなんて、鈍いのとお子ちゃま以外にはバレバレだったのにね。ま、下手にこじれず、北斗がこっちの味方になってくれてよかったけど。…うっかり北斗が別の主張を選んでたら、局長、絶対面倒くさいことになってた」
 心中で史は天の采配に感謝する。無自覚の執着がその対象を唐突に喪えば、恐らくひどい暴発の仕方をする羽目になっただろうから。
「…お前が何いってんのかよう解からんわ」
「そりゃそーだ。鈍いのとお子ちゃまにはわかんない話してるんだから」
「誰がお子ちゃまや!」
「ま、鈍くないのは認めたげる。所でアタシに振った疑問、局長に直接振ったりしないでよ。本人達は未だ隠してるつもりっぽいし、下手に薮突くとヴァスキが出るよ」
「突いたら邪龍が出るてどんだけの地雷やねん!」
「これでもアンタの精神衛生とか諸々気を使って忠告してるんだけど。…あー、他の連中が残ってたら割と面白かったのに」
 別れた仲間を惜しむ気持ちは史の中に殆どないが、それでも少しだけほんの昨日までくだらない話をする事もあった面々の顔が過ぎる。
「そのうち嫌でも顔合わせることになるか。……あの様子じゃ、勘が鋭い組にゃ多分すぐバレるだろうしね」
 どんな内容を話しているかは知れないが、史の視線の先で北斗と大和の距離は昨日より確実に近い。
 目が合うとふと微笑みあう二人の様子は、対人関係の機微に聡い者なら関係の変化を容易に察せるだろう。
「だから、結局なんなんや」
「とりあえず優秀な現場リーダーが、実力主義を選んでくれてよかったねってこと。目をかけてた有能な人材が手に入ったから、局長ちょっとテンションがあがってんの。局長が北斗をやたら構ってたのはアンタも知ってるでしょ。北斗の方はまあ枕が合ってゆっくり眠れたんじゃないの」
 一先ず啓太を言い包める話を史がでっち上げた所で、話題に上がっていたと知ってか知らずか、北斗が史たちを手招いた。
 軽く付近の悪魔と戦闘して、今の面子で戦う感覚を掴んでおきたいのだと言う。
 気安く二つ返事で引き受けた史は、その戦いで予想していた通りの『絶好調』を見ることになる。


+++

 戦場での北斗は常と雰囲気が変わる。
 決して別人のようという訳ではないが、はっとするような鋭さが普段やわらかい表情に包まれている下から覗くのだ。
 戦場全体を客観的に見、彼我の戦力・データを解析、弾き出した最適を指示として激する。素早く柔軟な思考と洞察力の高さは、強い意志とならぶ、彼の大きな武器だろう。
 民間協力者である悪魔使いたち。特別な訓練を何ら受けていない者たちが十二分のちからを発揮し、予想された盤面をひっくり返してきたのは、将が彼であったからだと大和は思う。
 今、己もまた北斗の指揮下に入り、改めて肌で感じている。
 彼は人を使うのが上手い。使うというよりもっと自然に人を動かす。
 それぞれの意思、求める所、長所を生かしながらとり纏めて、破綻させない。
 そうして結果が出れば、ひとはついてくる。信頼が育まれる。彼の采配に依って動くのは小気味が良い。
 普段の大和は指揮を執る立場にあるが、このように最良を回し、成す内のひとりになるというのも悪くない経験だった。

 大阪本局近くの野良悪魔が跋扈する区域。そこに今、掃討と改めての戦力確認を兼ねて、一行はやって来ていた。
 最前線を駆けるのは、鬼神と魔獣を伴い、高い突破力を持つ啓太だった。その後には魔神を連れた史が続く。
 彼女が扱う魔法は多彩であり精密だ。啓太の突撃で出鼻を挫かれた悪魔など足並みを揃える前に薙ぎ払ってしまえる。
「大和、俺たちも出るよ。残りを両側から挟み込んで崩す。左は任せた」
 通る声で令を飛ばすと共に、幻魔の脚を借りた北斗の身は菅野の近くに移っていた。
 そこから霊長の翼で飛び出し、右側から殲滅の仕上げにかかる。北斗自身も大勢の悪魔を相手にして一歩も引かない、速さと力の持ち主だ。止められるほどの強力な悪魔は今この場には居ない。
 千の烈しさで打ち出される物理的な衝撃は、ここ数日で随分と錬度を上げた悪魔ですら容易く屠るに足る。
 今日の北斗は随分と調子がいいようだ。動きには迷いがなく──容赦もまた同様。彼と彼の使役する仲魔は、見る間に敵対する悪魔たちの数を減らしていく。
 北斗の移動と間を置かず、大和もまた北斗の信に答えて動いていた。
 ほかの三人のような敵を翻弄する速さは大和には必要ない。脚はこの場に留めたままで良い。
 それでも充分に届く。邪龍の加護を受ければ、戦場の殆どは大和が扱うスキルの射程の内側だ。
 携帯を構え、高濃度の霊威を帯びた神火を呼び寄せ、解き放つ。紫焔は左側方から悪魔の群れへと奔り、塵すら残さず焼き払っていった。
 指示を果たしているのは大和だけではない。史が、啓太が、それぞれの位置で役を果たしている。北斗本人も、また。
 勝敗は最早決したも同然だった。──悪魔の掃討はそれから程なく終わりを迎えた。


「お疲れちゃん」
 戦闘が終了すれば、また常の飄々とした態度が、北斗の鋭利さを包んで隠す。
 まったくはっきりと正身を掴ませない男だった。どちらもまた彼の一部分なのだろうけれど。
 史と啓太は残党を探りに二人で一端索敵に出て行った。今この場には、大和と北斗だけが残されている。
 確認作業に当たる史たちの帰りを待つ間に、気は抜ききらないまでも北斗は大和に話しかけた。
「どうだった? 戦い難くなかった? 大和は大体指示する側だろ。何なら指揮権はそっちに委譲しようか。ってか、俺が采配してていいの」
「構わん。もっとも適している者がその位置にあるべきだ」
「認めて貰えるのはうれしいけどね。でもやっぱりちょっと不思議な感じだ。大和が一緒に戦ってくれてるって」
「そうか? 確かにこれまではほぼ機会がなかった。だが可能ならもっと速く君の指揮下で動いてみたかったな。無能に動かされるのは耐え難いが、君のような将の剣になるのは悪くない」
「なら、これから宜しく頼む。今日のセプテントリオンはきっと昨日より更に厄介だ」
「……これまでの傾向からすればそうだろうな」
 ドゥベ、メラク、フェグダ、メグレズ、アリオト、ミザール。日を追うごとに、侵略者の脅威はいや増すばかりだ。
「でも勝つよ。皆がいる。大和がいる。仲魔がいて、この手には幾らでも使いようのある力がある。なら方法は幾らだってある。人間の戦い方って奴で迎えてやるさ。そもそもこれが試練なら超えられない道理はない」
 だが、大和の傍らに立つ青年は弱音のようなことは口にせず、折れない意思を覗かせて笑った。事実、北斗と仲間たちは、そうしてその時々に取れる最良を選び取って、セプテントリオンを撃破してきたのだ。
 不思議と信じられる。明日があることを。
「ああ、頼りにしている」
「約束したしな。誰より役に立つって。俺が大和を天の玉座まで連れて行くよ」
 手袋に包まれた大和の手に、北斗の手が重なる。
 その時だった。
「盛り上がってるとこ悪いけど、アタシたちの存在忘れてない?」
「おかえり、フミ。ケイタは?」
「もうちょっと遠くまで見てくるって。アタシは充分だと判断したから先に戻って来た。もういないのはアイツも解かってて、多分血の気が余ってるだけだろうからすぐ戻ってくるよ」
「取りこぼしはない?」
「索敵範囲での残存はゼロ。…で、それはさておき、だ。北斗、アンタちょっとは照れるなり気まずくなるなりしなよ。局長もあからさまに機嫌の悪い顔しない」
 史は北斗と大和の所に戻ってくるとやれやれといった体で肩をそびやかせた。
「隠す気があるんだかないんだか」
「なんのこと、かな?」
「自重しないとわかるヤツにはわかっちゃうって事。誰かさんは何だか胸のつかえが取れたみたいに絶好調だったし? …和久井はとりあえず誤魔化しといたけど、あんまイチャイチャしてるとばれるよ」
 声を潜めての忠告に、だが北斗はそんな事実はないというように傍らの大和へと平然と話しかけた。
「イチャイチャなんてしてないよ。な、大和」
「ああ。決意表明を聞いていただけだ。菅野。妙な邪推をするな」
「はいはい、じゃあそういう事にしときましょうかね。…っと、チビ筋肉も帰って来た」
「だから誰がチビ筋肉や。この変てこ。──戻ったで。この辺りはもう悪魔の気配はないわ。他移るか?」
 まだ戦闘の昂揚覚めやらぬ様子で居る啓太の言葉に、しかし北斗は首を横に振って見せた。
「戦い足りないかもしれないけどこの辺で引き上げよう。…どうせいやでも強敵との戦いが待ってるからな」
「東京と名古屋か」
「そう言うこと。誰が相手でも負けるつもりはないけどな。戦って、勝って、主張を解かって貰う。しかしこれって凄く実力主義なやり方だよね」
「平等主義やら争いを否定する連中も結局このルールには賛同しているのだから皮肉なものだな」
「解かり易くて助かる話じゃないか」
「躊躇はないか。特に東京勢の志島や新田は君と縁が深い」
「ないよ。ダイチもイオも好きだけど、だからこそ手を抜くとかありえない。…それに、仲間として引き入れたい相手は好きに声かけていいんでしょ」
「君がそれを望むならな」
「容赦なく殺せじゃなくて本当に良かった」
「…言っただろう。私も鬼ではない」
「知ってる」
 知ってるから傍に居るのだと、語るように北斗の瞳が細められた。

「さて、戻ろっか。真琴さんひとりだけ本局に詰めてもらってるもんな」
 ふざけた振りで、そのまま大和の手を引いて北斗は歩き出す。振り払わない大和を、啓太が珍しいものを見る目で見ていた。
「…なあ、宇佐見と峰津院、やっぱり変やないか」
「おおっとそれ以上は藪ヴァスキだよ。さ、アタシたちも戻る戻る。下手に遅くなると迫っちがヤキモキするでしょ」
 史は啓太の問いを曖昧にはぐらかして後に続く。結局啓太も直にその後ろを追う形になった。先頭の二人は相変わらず手を繋いだままだ。
「…北斗、そろそろ…」
「もう少しだけ…駄目かな」
 じっと見つめられて北斗に強請られてしまうと大和は弱い。本質的に北斗はひとたらしではないかと思うこともある。
「……本当にもう少しだけなのだろうな」
 押し切られたようなことを口にしながらも、結局本局の扉を潜る直前まで大和が北斗を振りほどくことはなく──二人の手は、繋がれたままだった。

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