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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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ツイッタリク企画2本目。「ヤマ主で日焼けネタなんてどうでしょうか。」
ほんのちょっぴりいかがわしい感じです。




久方ぶりにジプス東京支局に顔を見せた彼は、その白い肌をこんがりと健康的な小麦色に焼いた姿をしていた。
肌の色ひとつのことだが印象が変わって見える。
「はい、大和。これお土産だよ」
にっこりと笑って、島はちみつと書かれたとろりとした色合いの金色の瓶が机の上に置かれる。
「地酒がすごく美味しいらしいんだけど、大和まだ未成年だもんね」
「小笠原に行っていたのだったか」
「そうそう、大地の親戚があっちに居てさ。何年かに一回、おれもお邪魔させてもらってるんだ」
空の色、海の匂い、楽しかったこと、綺麗だったもの――身振り手振りを交えて彼は生き生きと土産話を語ってみせる。
ともすればくだらないと一刀両断にできる物事であるが、不思議と彼の口を通して聞かされる物事に悪い印象を抱くことは少ない。
「わかった、そんなにも離したいことがあると言うならば時間をとってやる。私室の方に行くぞ」
休憩時間中であるから、彼を部屋に招き入れて、茶のひとつくらい淹れてやっても構わないはずだ。
ほんと? と、目を輝かせた彼を連れて、場所を私室へと移した。

彼好みの味つけで紅茶を淹れる。世界を回帰させて以来、彼はよく私の元に通うようになり、ジプスの業務を手伝うことも少なくない。その中で休憩時間が重なるとこうやって彼の為に茶を淹れることが当たり前になっていた。
砂糖やミルクが多めの甘い味わい。口にすると彼が嬉しそうに笑うものだから、その分量をすぐに覚えてしまった。ただ今日は少し砂糖を控える。代わりに、彼から貰ったばかりのはちみつの瓶も開けて添えることにした。
茶請けはココアとプレーンの焼き菓子だ。彼の出入りが増えてからというもの、迫が世話を焼いて茶請けを尽きないようにしているのだと知っている。今日の此れも彼女が用意したものである。
白い陶磁器の茶器に紅茶を、皿の上に焼き菓子を盛り、トレイに載せて彼の待つテーブルに向かったところ、何やら痒そうに背や腕を掻き毟る姿に気づいて私は微かに眉をひそめた。
「大方日焼けた肌がめくれて痒いのだろうが、無理に掻いて剥けてしまうと痕になるぞ」
テーブルの上に茶と菓子を置きながら、私は彼に制止をかける。するとばつが悪そうに唇をとがらせるのが見えた。
私より一つ年上だと言うのにこの男は時にひどく子供っぽい顔をする。
「だってムズムズするんだ。特に背中が……大和の前では我慢しようって思ってたんだけど」
「見せてみろ」
「えっ、いや、いいよ。恥ずかしい」
「私とお前の間に今更恥ずかしがるようなこともあるまい」
もとより男同士であるし、それ以前に私と彼は――肌も合わせた仲なのだから。
それにもかかわらず顔を赤くする彼が、じたばたともがきだす前に近づき、捕まえる。
「背中の様子を診るだけだ。ひどいようなら皮膚科の受診を勧めねばならん」
「……変なことしないよな」
お前はわたしをなんだと思っているのだ、と冷めた視線を向けたら、
「お手柔らかにオネガイシマス」
彼はあきらめた様子で渋々と白いパーカーを脱ぎ、水色のボーダーシャツをめくり上げて、私に向けて背中を曝した。
日向の下で遊びまわったのだろう――一週間の間海辺を堪能したと言っていた――服の下に隠れていた部分も綺麗に焼けている。
普段であればミルクのような色合いをした彼の肌は、今はコーヒーを薄く溶いて撒いたかのようだ。
背中の皮膚は厚さの割に刺激に弱い。普段から布地に覆われているために敏感にできているのだ。
指を這わせるとびくんと彼が身体を震わせる。おとなしくしていろと呟いて様子を診る。
皮膚のあちこちが剥けかかっているのがわかったが、炎症にはなっていないようだ。
「問題なさそうだ。これならば無理に擦ったり剥いたりしなければ落ち着くだろう。自然に剥がれるのを待つがいい」
私の言葉に彼はうー、と小さくうめいた。
「それって剥がれるまで痒いのが続くってことだよな。ちょっとくらい痕になってもいいから剥いちゃダメかな」
「お前と言う男はもっと痛い目にもあの七日間であっていたはずだが?」
私は少し不思議な気持ちになり首を微かにひねった。あの災厄の七日間にあって彼は常に戦場の最前線に立ち、誰よりも多く悪魔を屠り、同時に少なからず怪我を負っていたのだ。その時は周りに心配をかけぬようにか痛みに耐えて振る舞っていた男がかゆみには弱いなどと。妙な話だ。
「むず痒い方が痛いより我慢しにくいんだよ! あー、かゆいかゆい!」
バリバリと爪を立てて角質をはがそうとするものだから、私はやんわりその手を掴んで止める。
「やめておけ、そんなにも痒いと言うなら私が何とかしてやろう」
ソファにうつぶせに寝て少し待てと言い置いて、私ははちみつの瓶を片手に室内の給湯スペースへと戻る。
紅茶を入れるのに使った湯を幾らかコップに注ぎ、冷蔵庫から氷を出して少し冷ます。ぬるまった湯にはちみつを入れてかきまぜ、即席の塗り薬を作った。ふわりと蕩けた蜜のにおいが広がる。
あのようなささいな肌の異常などは、魔法で治すという安易な手段をとると体の抵抗力や自然治癒力を落としてしまう。
そうするくらいならこういった昔ながらの方法に頼る方が良い。
蜂蜜は古くから殺菌効果の強さや含まれている栄養から内薬や、塗布剤として皮膚のケアに用いられてきた。
湿疹や日焼けなどのあとに塗るには具合が良い。彼の肌のかゆみ乾燥が原因だろうと推測される。保湿してやれば緩和されるはずだ。
「大和、蜂蜜の匂いがするけど、何?」
彼の元に戻ると顔を上げてこちらを見ていた。簡単に蜂蜜の効能など説明すると納得顔でおとなしく私に背中を明け渡す。
思えば夜でもなければ彼が従順な姿を見せることは少ない。珍しい姿だ。そういう一筋縄でいかないところも対等な相手として好ましく思っているのだが。
私はソファに寝そべる彼の傍に膝を折ると、手袋を外し、かさついてしまった彼の肌にはちみつを溶いたぬるま湯を擦り付ける。
背筋のきれいなしなやかな背中だ。どこか華奢な印象がある。想えば明るい光の下でまじまじ見ることは珍しく、視線を向けながらその背中をできるだけ優しく撫で、皮膚に水気を与えていく。
「……っ」
熱くも冷たくもないように調節したつもりだったが、彼が不意に息をつめたのでどうした、と尋ねれば、痩せ我慢のつもりかなんでもないと言われた。
塗りつけた部分が赤くなったりはしていないし、熱いというわけではなさそうだ。そこで私は彼の意地を汲み取ってやる。
肩甲骨の辺りが特にかさついているようだったので念入りに塗り広げてやると、びくりびくりとほそい身体が震えた。
「……先程からどうした?」
流石に放っておけなくなり尋ねると、彼は恨めしそうに――そればかりでない熱を湛えて潤んだ瞳をこちらへ向けてくる。そこで、気づく。
「ばかやまと。背中、結構敏感なのに、そんな丁寧な触りかたしたらどうなるかなんてわかるだろ……!」
……私にそのつもりはなかったのだが。
どうやら彼の性感を不用意に煽ってしまったようだ。
不覚だった。思えば夜を共にする都度、彼の身体はどこもかしこも過敏にできていると実感することしきりであったと言うのに。
「悪かった」
こればかりは私のほうに問題がある。そのように彼の身体を開いたのも私であるのだから。
名前を呼んで謝罪を向けると彼は弱ったように眉を下げる。そして、睨むというには甘い視線を私に注ぎ、
「じかん、まだあるなら。責任とれよ……」
不本意そうに顔を紅くしながら、腕を伸ばしてきた彼を私は抱き上げた。その身体からはいつもより甘く豊かな香りがする。昼の明るい内からこのようなことに及ぶつもりはなかったが気付けば鼓動が早くなるのを感じていた。その肌に触れて、その香りに触れて、しばらくぶりの接触に私もまた彼に煽られている。
そのことを認めざるを得なかった。少し抱き締める力を強くする。彼のいない日々をどこか退屈だとそう感じていた自分を、思い出す。
そのまま、責任を取るという意思表示に――そればかりでない求愛を乗せて。
私ははちみつを一口口に含むと、少しかさついた彼のくちびると己のくちびるを重ね合わせた。

どうやら茶と菓子を味わうのはずいぶん先の話になりそうだった。

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