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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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ツイッターで好物当てられたらリクエスト受けるという企画をやった結果。
一本ずつ挙げていきます。

一本目「ゲスミミさんと局長がまだ身体の関係ある前にゲスミミさんが局長にきゅんとする話」





「術の使い方を教えて欲しい、だと?」
唐突なオレの申し出に、大和はうつくしい銀色の瞳をゆっくりとひとつ瞬いて見せた。
長い睫毛が室内の明かりを透かしてしろがねに光るのをきれいだなとか見惚れている場合じゃなかった。オレは首肯を返し、自分が大和に師事を乞うことにした理由を口にした。
「アルコルが作ったアプリのおかげで悪魔を使役したりスキルを使うことに問題はないけど、それにおんぶにだっこのままってのもよくないだろ」
特にオレは魔力に特化したタイプだ。力にも自信のある人間なら万が一携帯のない事態に陥っても対処のしようがあるかもしれないが、オレの場合はそうはいかない。体力は人並みよりは優れていると思うけど、自分の長所を召喚アプリ以外でも使えるようにしておくべきだと考えたのだ。
それで身の回りにいる人間の中でも霊的な事象の専門家である大和にお願いすることにした。口にはしないけど、それは大和を助けたり守ることにつながるとも思っている。
「フム、向上心のない人間はただの豚だ。君が今以上に己を高めたいと思うならば、私としても歓迎しよう」
「忙しい大和の時間を貰うことになるのはちょっと申し訳ないけど」
「構わん。君の手が借りられるようになって私にも多少余裕ができたからな。ただし……」
大和が口の端を吊り上げ、八重歯を覗かせて笑う。どこか獰猛で、媚のないしなやかな獣みたいな笑い方がオレはとても好きだった。
「私の教え方は甘くはないぞ。泣き言をいうような君ではないと知っているがな」
「厳しい分実になるだろうし、よろしくお願いします。先生?」
冗談めかして返すと大和は頷き、
「よろしい。では鉄は熱いうちに叩くものだ。まだしばらく時間がある。最初の指南をしておこう。手を出せ」
「? これでいい?」
言われるままにオレが手を差し出すと、大和は白い手袋を外して、曝した素手でオレの手をとった。
普段あまり人と接触しない大和が、こうも無防備にオレに触れてくると思っていなくて心臓がどきりと跳ねる。
「少し脈が速いな。らしくもなく緊張しているのか? 安心して力を抜け。危険なことはない」
大和が衒いもなく言うから、オレは幾度か深呼吸をして早くなる鼓動をいなしていく。よかった。はじめての指南に気持ちが高ぶってると思われただけで、変に思われてはいないみたいだ。
大和の手は、冷たそうな見た目と裏腹にとても暖かかった。振り合っている所からじんわりとぬくもりがオレのなかに入ってくるような心地がする。
「ッ、大和、これ……」
「ああ、わかるか? 触れている所から私と君の気が交っているのだ」
大和はこともなげに言うが、奇妙に心地のよい感触だった。触れている所から境界が合間になるような、暖かな湯に全身を浸らせるようなそんな感覚が広がっていく。
同時に感覚がクリアになるのを感じていた。世界を鮮明に感じる。そして、これまで感じることのなかったものを、肌で、眼で感じ取る。
「君の霊覚と私の霊覚を一時的につないだ……周囲に在るものがわかるか」
「上手く言葉にできないけど、色?光?あたたかいような冷たいような、不思議な流れが取り巻いているのが、わかる」
「上出来だ。それが気だ。霊力とか生命力、あるいは生体マグネタイト。そのように言う生物の持つ内なる気と、龍脈に代表される世界に満ちる森羅万象の外なる気。これらを取りだし、あるいは干渉し、操ることが術の本質。普段使っているアプリケーションによる術式も、根本として用いるエネルギーは同じものだ」
これが普段から大和の見ている世界なのか。目を瞠るオレの手を大和が握る。繋いだところからより深く染み入るぬくもりと力にオレは少しだけ身震いした。
「今はこうして私がサポートして見せているが、次までに自分だけで霊覚を開けるようになっておけ。この感覚をよく覚えておくのだ。しるべがあればきっかけにしやすいから、な」
「了解。でも、ちょっと変な気持ちになりそう。なんか大和とひとつになってるんだなって思ったら」
実際口に登らせるといかがわしいような気持にもなるが、そんなことを考えているのは失礼だと、自分でも茶化してしまうことにした。
くだらないことを言うなと大和が怒ってくれれば、これ以上妙なことを考えずに済む。そう考えていたのだけれど、
「な……ッ」
大和が、予想もしていなかったというような、驚いた、無防備なところを見せるから吃驚した。
それまで繋がれていた手が払われて、感覚が断ち切られる。大和は手を引っ込めて、きゅっとくちびるを引き結ぶと俯いた。
「大和?」
予想以上に怒らせてしまったのかもしれないと顔を覗き込もうとしたら顔が逸らされた。
「そのようなこと、考えたこともなかった。そうか、君と、一つに……」
「ごめん、へんなこと言ったから気持ち悪くなった?」
思えば潔癖そうなところのある彼だ。この手の冗談に嫌悪を見せてもおかしくない。
真面目に教えを乞うつもりだったのに、馬鹿なことをしてしまったと後悔しかけた。だが、
「……そうでは、ない。そうだな、一つになるようなものであるというのに、君に対しては…嫌悪が、なかった」
口にされた言葉はオレの予想の遥か外にあるものだった。
「え」
「他のもの相手には、こんなことはしない。君だから、許した。君は? 君こそ、無遠慮に感覚を繋いでしまったが嫌ではなかったか」
そっと窺い見るような瞳に息を呑んだ。初めて見た。心もとない顔をする大和なんて。
「大和も、そんな顔するんだね。いつもみたいに構えててよ。今回はオレから教えてってお願いしたんだから、気にすることじゃないよ」
抱き締めたくなってしまって、そんなことはできないから、代わりの様に手を伸ばして、今度はオレから手を繋いだ。
「ね、続き。もう一回、みせてほしいな」
嫌じゃなかったと、言葉にするよりも、続きを強請る。
「……そうか」
すると大和が安心したようほんのすこしだけ銀の目を細めるのがわかった。
まったく、人との距離の取り方がわかっていなくて、気を許したオレにはぐいぐいと来て、他の人のことそんなに気にかけたりせずどう思われてもいいみたいなところがあるのに、今みたいに気にしたりして。
オレだけ特別なのかなって自惚れてしまいそうだ。そうなってくれたら、いいのに。
どうか、他の人には今みたいなやわらかいところを見せずにいてね。日々の折に触れて大和が見せるあどけなさに心惹かれる度に思ってしまう。
そんな狡いことを願っているきたないオレを、大和が気付くことはない。
どうかこのまま気づかないでいて、と。今が壊れることを恐れてオレは願い、大和が教えてくれる感覚を覚えるべく、今はそちらへと意識を集中させるのだった。

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