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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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初めて書いたヤマ主。
ヤマ主のヤマトさんはウサミミの王子様だといい(でもウサミミもヤマトさんの王子様だといい)。
ルート分岐前のどこか。主人公がイナバシロウサギになってしまう話。
捏造がちらほら。局長にちょっと夢を見すぎてる気がしますが、私の書くSSは大体そうという気がしないでもない。
主人公の名前は因幡 初(いなば うい)です。

 ……どうしよう。

 災害で崩落した建物のガレキが散乱し、そこかしこに悪魔の気配が感じられる地域の一角で、おれは途方にくれていた。
 水溜りに映る自分の姿を見つめれば、重苦しいため息しか出てこない。
 そこにいるのは二足で立つ、白く継ぎ接ぎの毛皮と赤い眼を持つウサギの姿。
 普通のウサギより一回りか二周りは大きく、召喚アプリの悪魔全書に照らし合わせれば、妖獣『イナバシロウサギ』と分類されるはず。
 でも、おれは別に生まれつきこの格好だったわけじゃない。つい数十分前はごくごく普通に人間の姿をしてた。
 そりゃ名字は偶然にも因幡だし、ウサギは大好きだし、何時も身につけているお気に入りのパーカーにはウサギ耳のようなヒラヒラもついているけど。
 自分がウサギになりたいなんてこれっぽっちも思ったこともなかった。

 なのに何故ウサギになってしまったのかと言えば、思い当たることはひとつだけ。
 未曾有の大災害に抵抗する仲間の一人である史が、また新しい器具を仕入れてきて行った検査に付き合ったのが原因だ。
 思えば少し嫌な予感がしていたんだ。そして、そういう時のおれの予感はだいたい当たる。
 史が用意したのは、彼女が得意とする小難しい理屈や原理を取っ払ってしまえば何と言う事はない、悪魔と人間の相性を測る機械だった。
 相性がよければ命令の伝達や使役の精度が増すから、それを踏まえた上で仲魔をみんなに割り振れば戦闘効率も上昇するし、他にもデータの利用価値がある。
 そう言われてしまえば、おれも、その時一緒にいた大地も、史の実験に協力することを断る理由はなかった。
 特に痛いことも苦しいこともなく、頭部にヘッドセットに似たセンサー機器をつけるだけという手軽い検査だった。
 順番に携帯に登録された悪魔を呼び出していき、機械を使ってデータを取っていく。
 順当に検査は進んだけど、事件は一番最後に呼び出した仲魔、イナバシロウサギとおれの相性を調べようとした時に起こった。
 何かしらのバグか故障があったのか、機器が唐突に異音を立て始め──気付いた史が直ぐに機械を止めようとしたけど遅かった。
 実験室が一瞬、まぶしい白い閃光で満たされて。慌ててセンサーを外そうとしていたおれの意識もそこで吹っ飛んだ。

 目覚めると、なんだか見えるものが変だった。
 ひどく違和感がある身体をどうにか起こすと、やけに視点が低くて、そのくせ視界は妙に広い。 
 何時もより何故だかクリアにおれの耳は周囲の音を拾う。
「ちょ、初は大丈夫なのかよ、フミ!? しししし死んじまったんじゃないよな!?」
「シジマ、脳にダメージが入ってるかもしれない人間をヘタに動かさない。でも、おトメさんの所に運んだ方がいいかな、こりゃ」
 大地と史がなんだか凄く慌てている。大地はおろおろしていて、史は頭が痛そうな顰め面だ。
 心配かけたくなくて「おれは大丈夫だよ」と伝えようとして、けど、声が出なくて慌てた。
 唇が、舌が、思うように動いてくれない。自分のものじゃないみたいだ。同時におれはそこで物凄く大切なことに気付く。
 ──なんでおれはここにいるのに、目の前に「おれ」が倒れているの?
 癖の強い黒髪に、あまり肉のついてない身体。羽織ってるのは他に着ているやつを見たことない、ウサミミフード付のパーカー。
 どこからどうみたって、ぐったりと床に倒れ、気絶したまま動かない人物の容姿は、おれ、『因幡 初』そのものだ。
 混乱したままふと今の自分に目をやると、おれは悲鳴を上げそうになった。
 手も足も身体も、妙に小さくてふわふわとしていて──そもそも人間の形をしていなかった。
 これは──今のおれの身体は、さっきまで一緒にデータを取ってたイナバシロウサギそのものだった!
 機械が一体どういう作用を果たしたのかは解からないが、おれの意識は元の身体から仲魔の肉体に入り込んでしまったらしい。
 大地に、史に、自分の異変を伝えたかったけれどうまくしゃべることができない。
 「おれはこっちだよ」って自己主張するようにぎこちなくぴょんぴょん跳ねたけど、大地たちは倒れている「おれ」の身体を運び出すことに夢中で気付いてくれない。
 そりゃ、二人だってまさかおれの意識がイナバシロウサギに入ってしまってるなんて思いもしないだろうから、仕方ないけど。
 どうしたら気付いてくれるか思考を巡らせている間に、二人は「おれ」を連れて実験室を急いで出て行ってしまった。
 大地と史が凄く大事そうに「おれ」の身体を気遣って運び出してくれたのが見えてたから却って泣きたくなった。

 落ち込んでるヒマなんてないから、まだ自分のものだという気がしない四足を動かし、急いで二人を追いかけようと部屋を出た。
 けど幾らも進まないうちに、間悪く一般のジプス職員たちに鉢合わせてしまった。
 使役者も無しに悪魔がウロウロしていたら、普通は野良悪魔かアプリの暴走だと思うだろう。
 あるいはジプスの施設を狙った暴徒のテロの一環と思われたのかもしれない。
 だから、即座に携帯を構えた局員を誰も責められないし、寧ろ末端まで訓練が行き届いていると褒められるべきだ。
 自分が追いかけられるんじゃなければね!
 おれはすぐさまその場を逃げ出した。手足が漸く滑らかに動いてくれたのはきっと生存本能だろう。まさに脱兎。
 悪魔の中でも飛びぬけて俊足の、妖獣の身体になっていたのは不幸中の幸いだったとこの時ばかりは感謝した。
 これがうっかり足が遅い邪神だったりした日には、直ぐに捕まってフルボッコだった。まさか反撃するわけにも行かない。
 施設からほうほうの体で逃げ出して、人の居ない方へ居ない方へと走って、気がついたらここまで来ていた。
 周りには悪魔がウロウロしているけど、今のおれは、見た目は少なくとも悪魔だからか襲われずに済んでいるようだった。

 そこまで現状を把握し終わり、おれはまた深く溜め息を吐いた。
 咄嗟の事で逃げてきてしまったけれど、これからどうしたらいいんだろう。
 戻ったとしてもまた退治されそうになるかもしれない。今度は仲間に追われる可能性もある。
 口を利けない状況ではおれがおれであると説明することは難しい。おれ自身でさえまだ夢じゃないかと思っているんだから。
 希望観測としては時間が経てば元に戻るのかもしれない。あとは、大地と史が運んでいった「おれ」の中身の違いに気付いてくれることを祈るばかりだ。
 どちらもそうなるといいな、としか思えない辺り、あまりにも打つ手がなさ過ぎて、もう溜め息も出ない。
 ヘタをすると、このままいち野良悪魔として生涯を終えるしかないんだろうか。
 誰にも、おれがおれだって気付いてもらえない、まま。
 ああ、明日からどうするのかな。またセプテントリオンが襲ってくるのに、この身体じゃ助けになれない。
 おれがいなくてもヤマトが指揮をとるだろうし、他の仲間たちもいるワケできっとみんなでなんとかしていくんだろう。
 でも、もし敵が強くて、何かあったら。仲間の顔がひとつひとつ、浮かんで消える。誰かが傷ついて、万一なんて事があったら。
 …それは普通に死ぬよりずっとずっと怖いことかもしれなかった。
 嫌な考えを振り払うように頭を振って、おれは諦めて嘆くだけには落ち着かないようにしようって決めた。
 自分で行動しなきゃ何にも掴めないんだ。流されるままじゃダメだってこの数日で嫌ってほど学んだ。
 何とかおれがおれだって解かってもらわなきゃ。
 声が出せなくても文字を書いてみるとか、あるいは発声練習するとか。幾らだって方法はあるはずだ。
 改めて考えれば色々手段が思いついて、ちょっとだけ元気が出た。

 ダメかもしれない。信じてもらえないかもしれない。
 そんな不安がないわけじゃなかったけど、立ち止まってると嫌なことしか考えられなくなりそうだったから。
 兎に角見つからないようにみんなの所に戻ろうとその場を立ち去りかけた時、
「…初」
 不意に、聞き慣れた涼しげな低音に名前を呼ばれて心臓が飛び出すかと思った。
 見回せば、イナバシロウサギの視界は普段のおれより広くて、声の主は直ぐに見つかった。
 なんで? なんでイナバシロウサギの姿のおれがおれだって、あっさりわかるんだ?
 …ああ、でも彼ならそんな芸当もこともなげにやってのけるのかもしれない。
 淡い色合いの銀の髪。日本人離れした白い顔。対照的な黒コートの裾が風に翻って揺れる。
「どうしてお前がこんな所に居る? 初」
 長い睫毛の下、色素の薄い瞳が不可解そうに眇められる。もう一度確かにおれの名が唇に上った。
 こっちに少し早足に歩み寄ってくる人物は、おれに敵意を向けない。何時もどおり、ごく自然におれを呼んで、おれをおれだって認識してくれている。
 当たり前のことが嬉しくて、胸がいっぱいになった。どうして、彼がここに? って疑問はあったけどそれ以上に安堵が勝った。
 やまと。
 声にならない声で名前を呼び返したおれの言葉がわかるみたいに、戸惑いなく側に来て伸ばされた手は、救いのかみさまみたいに思えた。

 この近くには、タワーに電力を供給する予備発電所のひとつがあるらしく、破壊されるようなことがあっては困ると悪魔対策を講じに大和は来ていたらしい。
 用事はもう済んだそうであとは局員と合流して戻る所だったようだ。けれど、住民の退避もほぼ終わっているような区域に、何故かおれの気配がしたから不審に思って様子を見に来のだと大和は言った。
 結界を維持するために、おれたちの見ていない所で彼は飛び回っているのだと、改めて思い知る。そんな大和にわざわざ探させてしまったことが申し訳なくなった。
「まったく、初は私に普段させないことばかりさせる男だな」
 そんな風に言いながらも大和がすこし楽しそうなことに救われる。 
 こんなややこしいことになったのに、大和の態度は普段と変わらない。むしろ少しだけ気遣われている気さえする。
 近くで見上げた口元はかすかに微笑んでいた。あんまりにも身長差があるから、話しやすいようにとおれは今、大和の腕の中に抱き上げられているんだ。
 18歳男子としては情けなくも恥ずかしいことこの上ないけど、今のおれはウサギなんだと考えない事にした。この方が話しやすいし、大和の表情もよく見えるし。
「それで? お前に一体何があったのだ?」
 事情説明を求められたので、おれは理解している範囲で現状を伝えた。
 相変わらずおれの声は形にならないままだったけど、不思議なことに大和には、声にして伝えようとしていることが伝わるみたいだった。
 大和のことだから、悪魔の言葉が解かるとか、対話できるとか言われてもおれは驚かない。
 話が進むに従って、みるみる大和の眉間に皺が寄るのが見えた。 
「…菅野の仕業か」
 反射的に全身の毛がぶわっとなる。声が、低い。つめたい。ちょっとこわい。
 フミのせいじゃないよ。不可抗力だよ。
 大和の機嫌が悪くなりかけたのを察して、おれは慌ててフォローを入れた。
 機械の暴走も、結果おれの意識がイナバシロウサギに移ったのも、史が意図したことじゃない。
「お前は優しすぎる。…まあいい。菅野にはお前を戻すために動いてもらわねばならんからな。処罰はせん」
 それでいいと頷けぱ、「では戻るぞ」と言うが早いか大和はイナバシロウサギなおれを抱いたまま、すたすたと歩き出した。元々の予定通り局員と合流するんだろう。
 自分で歩けることを主張したが、不慣れな身体であまり動き回るなと言い含められて諦めた。
 大和と一緒なら退治されたり追い払われることもないだろうから、ほっとする。このまま上手く行けば多分元のおれに戻れるんだろう。
 何時の間にか、一人だったときに胸に燻っていた不安がすっかり溶けている。 
 先の展望が見えて安心してくると、ただ抱っこされているだけというのは手持ち無沙汰に思えてくるのだから人間現金だ。
 少し悩んだけど、機会を逃すとこのまま聞けなくなりそうだったので、大和はどうしておれがおれだって解かったのか聞いてみることにした。
 何時も一緒にいた幼馴染の大地だっておれに気付かなかったのに。
 さっき気配がどうとかいってたし、それでなんだろうか。
「私がお前を間違うものか。そもそも霊的に捉えれば一目瞭然だろうに」
 大和はこともなげに言ったけれど、普通の人にはそれ、無理だろ。
 イナバシロウサギの目で見る世界が普段おれが見ているものと異なるように、大和の視界も独特の見え方をしているのかもしれない。
 まだ不思議そうなおれに気づいたのか、大和が言葉を足す。
「器は変わっても、初は初だという事だ」
 おれを見遣り、かけられた言葉にはじわりと胸の中が暖かくなった。
 嘘のない真面目な声音。自分をちゃんと認識してもらうことはしあわせなんだって、この身体になって思い知った。
 そうやって解かってくれるなら、もしも元に戻れなかったら、おれ、大和の仲魔にしてもらおうかな。
 頑張ってレベル上げて働くからさ。
 結構真剣に言ったら、淀みなく移動していた足を止め、珍しく声を上げて大和が笑った。
「フフ、それも悪くはないが、元に戻ってくれなくては困る。初の代わりは誰にも勤まらん。これから先を戦い抜くにはお前が必要だ」
 大和はおれに対する評価が甘すぎる。大和が居れば割と大丈夫じゃないかなと思わなくもなかった。
 でも、真っ直ぐに褒められておれ自身を必要とされるのはこそばゆくも本当に嬉しかったから、見つけてくれたことへの感謝も込めて、素直にありがとう、と紡いだ。
 
 また直ぐに歩き出した大和の腕に守られているのはそう悪くない感覚だったけれど。
 気持ちは伝わっても、肉声で、おれ自身の声で届けられないのは寂しく、笑い返すことさえできないウサギの身体は、なんだかひどく、もどかしかった。
 元に戻ったら、ちゃんと、倍にして借りは返すからね。
「…楽しみにしていよう」
 声にしたいと思ったわけではなかったのに、大和には伝わってしまったらしい。
 ひっそり決意もできないなんてやっぱり不便だ。早く人間に戻りたいとおれはため息を零した。

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