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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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デビルサバイバー2、アニメ最終回まで無事視聴しました。
色々と言いたいこともツッコミもこれまでにたくさんありましたが、それでもラストで割と浄化されてしまった感があります。
一喜一憂を繰り返した13週でした。スタッフの皆様、おつかれさまです。ありがとうございました。

これまでずっと交わらなかったヒビキとヤマトの線があの一瞬ちゃんと交差して、それぞれの心にはたしかにあの時の変化が残って。ハッピーエンドだったと思います。ちゃんとした感想とか、考察とかまた時間があれは書きたいですね。
途中はほんとハラハラしたり、正直もやもやもあったのですが、最期はあの結末にたどり着くという点を留意したうえでまた一話からみてみたいなーと。細かい伏線とか感情の変化とか、読み取れなかったものを今ならもう少し推察できるかなと思うので。
とはいえ我が家には録画機器がないのでDVDマラソン待ちなのですが! まんまと特典につられてツ●ヤで予約しました…。
局長ははたして描き下ろしジャケットの熾烈な椅子取りゲームを記すことができるのでしょうか…(全7巻で各巻ひとり前後だとすると割と狭き門…。個人的な予想では、ヒビキ・イオまでは確定してるので、ダイチ・ジュンアイ・フミマコ・ヤマト⇔憂うもの(どっちが最終巻でもおかしくない)あたりかなあと。個人的にはもちろん全員みたいですが!)

前置きが長くなりました。あのうつくしい最終回の後だとこの妄想つづけるのは厳しくなってきた気がしますが、書き上げたので載せておきます…(貧乏根性)。


以下の表現を含みます。
※アニサバがループしてたら、あるいは前の周回があったらというパラレル妄想。
※当然のように腐ってる。ヤマヒビかヒビヤマ
※名前こそ久世響希ですが、ヒビキくんというかゲームのウサミミさんっぽい。ヤマトさんも同上。
※ヒビキくんの片腕が欠損してる描写有。さらっと欠けてる事だけ書いてるのでぐろはないです。
※基本的に流れはアニメ寄りで改変してる感じ(死んだ人が生きてたり)。一部に原作から引っ張ってきたネタ、展開を含んでいます。



 友人と寝所を共にすることなどヤマトにとって初めての経験であった。
 やわらかな体温。くだらなく他愛なく泡沫の花のように交わされた幾つもの言葉たち。
 その夜のことは言葉にしてしまえば、ヤマトらしくもない、なんとも浮ついて愚かでどうしようもない時間だった。だというのに得難いと、思ってしまった。
 思えばヤマトにとって初めての友に成り得たかもしれぬ人外の男は、おおよそ人間が持ち得る匂いや温度と言ったものを持ち合わせていなかったから。
 これはヒビキの術中だろうか。なれ合えば強さも意思も鈍るものだ。それに誰かに気を許し、引き込まれることがどれだけ恐ろしく、また失われた時に絶望を伴うものであるか、ヤマトはよく知っていたはずであったのに。
(煩わしい、厭わしい。このような思考など放棄してしまわなければ)
 ターミナルを出てすぐ、札幌の冷え切った空気がヤマトの頬を撫で、思考を、眼を覚まさせる。冴えさせる。
 もともとの予定では伴亜衣梨をサポートする局員が何人か着くはずであったが、今日、札幌の地に降り立ったのはヤマトひとりだ。
 ヤマトが北海道に赴くに当たり、小うるさい政治家連中を黙らせる必要があった。ヤマト以外の戦力を多く霞が関に割くことで漸く短時間の出向を取り付けることができたのだ。あのようなものども最早見限り、放逐してしまっても構わないが、頭を失い政府指揮下の組織の統制が取れなくなるのも困る。無能でも何でもまだ暫くは存在していてもらう必要があった。
 カーマを呼ぶための陣の敷設は済ませてある。生憎とヤマトはかの色欲の魔王が好む清らかな処女などではないが、強引に引きずり出させてもらう。 
 時計の針が予見されていたセプテントリオンの出現時刻を指し示す。
 瞬間、空よりも彼方から、産毛をびりりと震わせるほどの威圧を感じた。遥か遠い電離層にアリオトが出現した証だろう。
「来るがいい、神の剣」
 ひとり展開された法陣の上に立ち、ヤマトは肉眼では見通すことの叶わぬ先の宙を睨み付けた。

***

 メグレズ戦で取り決められたヒビキたちサマナーの配属は、今日も続行している。作戦中、万が一にも各地で何かあった場合対処できるようにだ。
「今回は待機かー…無事に終わるといいけど」
 ジプス大阪本局の割り当てられた部屋で待機しながら、呟いたダイチの顔は心なしか安堵しているように見える。
 もともとこのごくごく平凡だがやさしく明るい気質の少年にとって、連日連戦の戦闘は堪えるものでおり、戦う予定がない日というのはそれだけで嬉しいものなのだろう。
「きっと大丈夫。今回は直接戦うんじゃなくて必要な悪魔を召喚できれば勝ちだもの」
「だよなー! 今日のセプテントリオン倒せたらおつかれさま! って言いに行こうぜ」
 幼馴染とこの災厄が始まってから行動を共にしている少女の、何も知らない故の無邪気さに少しばかり罪悪感を感じながら、
「そうだね」
 ヒビキは微笑んで、罪を飲み込む。ことがすべて終わるまで二人には知られるわけにはいかない。二人にはまだ背負わせたくなかった。
 このまま何事もなければアリオト迎撃が完遂されるまでは休日として終わるのかもしれない。
 ――けれど、そんな儚い望みはありえないと、ヒビキは既に知っていた。
 携帯電話が無慈悲な着信を告げる。
『友達の死に顔動画が届きました』
「ヒビキ?」
「ヒビキくん?」
 ダイチと維緒が不安そうにこちらを見る。二人の携帯には着信がない。鳴り響いたのはヒビキの携帯電話だった。
(……ああ、やっぱり、君はこの局面になったらそう動くんだね)
 誰の死に顔が届いたのか、ヒビキにはわかっていた。
 携帯を開く。イナバシロウサギとリンクさせた見えづらい視界のなか、如何な作用かその映像だけはヒビキにもはっきりと色つきで見ることができた。
 聞き慣れてしまったSE、見慣れてしまったテロップ。そうして流れ始めたのは――
「ヤマト……!」 
 おそらくターミナルルームと思しき施設。そこで崩れる建物と墜ちてくる巨大な物体。画面を埋め尽くした瓦礫。広がった赤い液体。千切れて投げ出される、血まみれの白い、手袋をつけた手。札幌の地で押しつぶされて最期を迎える峰津院大和の姿だった。
「あ、おい、ヒビキ!?」
「どうしたの? 今の死に顔動画、もしかして……」
 直ぐにでも部屋から駆け出そうとしたヒビキの背にダイチの慌てた声がかかる。異常だけは察してダイチと維緒もヒビキに続こうとしたが、再度鳴った携帯の音が一同の脚を引き止めた。
『久世、聞こえているか?』
 流石に放置できずに携帯を取ったヒビキの耳に、届いたのは迫真琴のよく通る声。だが普段冷静であるはずの彼女のこえには幾らかの揺らぎがあった。
「聞こえてます。今急いでるんですけど、何かあったんですか?」
『ああ、至急、大阪のターミナル中継局に向かってくれないか。襲撃を受けている。面目ない話だが現場局員だけでは戦力が足りない』
「!! まずい、ターミナルが使えなくされる……!」
『君は…そうか。局長から、この後どうなるか、聞いているのだな。…頼む、ターミナルを守ってくれ。敵のデータ、現場の座標、必要なデータは送信する』
「はい、直ぐ現場に向かいます。――ダイチ、新田さん、ターミナル中継局が襲われているらしい。ふたりは……」
「オレも行く! 戦力は多い方がいいだろ!」
「うん、ヒビキくんをひとりで戦わせたりしないよ」
 ダイチと維緒の意志は確認するまでもなかったようだ。ヒビキの自己犠牲を初日から行動している二人はよく心得ていて、その分気遣い、心を砕いてくれていると知っている。
「ありがとう」
 ヒビキはひどく泣きたい気持ちになった。自分にはこうして一緒に戦い案じてくれる友人がいる。友達に恵まれている。
 でも、ヤマトはどうだろう。彼の鋼の心に、ほんの少しでも突き立つ棘になれるだろうか。
 寝台を共にしたときの、人慣れない、不器用な様子を思い出す。このような時間は無駄だと言いながらも、結局、ヤマトはヒビキを追い出しはしなかったのだ。
 彼に情がない訳でないと知っている。心を動かすことが、開くことが、ヤマトの職務においては足を引くから硬く閉ざしてしまっているだけで。
 時間があればもっと歩み寄れるかもしれない。だがそれも、ヤマトが死んでしまえば決して叶うことはないのだ。


 ヒビキたちがターミナル中継局がある通天閣に向かうと、先に到着していた様子のケイタと局員たちが、通天閣のふもとで、襲撃者の悪魔たちと激しい戦闘を繰り広げていた。
 白虎を切り込ませつつ、ヒビキたちは急いでケイタに駆け寄る。
 ヒビキの姿を視止めると、けが人がなにしるとんや、とぶっきらぼうに呟き、ケイタは色素の薄い瞳をわずかに眇めた。
「久世、…志島に新田も…なんやお前らもきたんか」
「ケイタ、状況はどうなってる?」
「俺が来てからはなかに誰もとおしとらん。せやけど、」
「そこからは我々が説明しよう。すまない、親玉と思しき存在を通らせてしまった。我々はここの足止めで精一杯…内部は多重の結界で守られてはいるが……」
 ケイタから引き継いだ局員の説明に、ヒビキは唇を噛んだ。やはり彼はここに来た。きてしまったのだ。
「俺が行きます。ダイチ、新田さん……」
「ヒビキ、オレも……!」
「志島くん。私たちはまずここの悪魔を倒さないと。それからヒビキくんのこと、追いかけよう?」
 ダイチよりもイオのほうが冷静だった。彼女はもともと聡明な人間だ。戦局を判断し、ヒビキが求めるところに応えようとしてくれている。
 イオの言葉を受ければダイチも何が一番この場でするべきことか理解したようだ。
「ちっくしょ、ヒビキにだけ無茶させねえから! すぐ追いつくから! だから、がんばりすぎるなよ?」
「解ってるよ。スザク……ダイチを頼む」
 ヒビキは手早く携帯を操作して、昨日もダイチに託した悪魔である炎の霊鳥を、ダイチの携帯に添付した。
「…ヒビキ、ここは俺たちに任せろ。スザク! 今日も力を貸してくれ!」
 ダイチは携帯を構え朱雀を呼び出す。再度襲いかかってきた悪魔を退けるケイタのベルセルクに早速加勢し、生み出された幾つもの火球が敵を焼き尽くしていく。
「……久世。お前、次は足落として戻ってきたりしたら許さへんぞ」 
 低くつぶやいたケイタのこえの奥に心配があることを、ヒビキはちゃんと知っている。
「ヒビキくん、行って…! キクリヒメ、おねがい!」
 白虎に跨り、基地局内に向かおうとしたヒビキに襲い掛かってきた悪魔が放つ風の刃は、イオが使役するキクリヒメが力場を形成して受け止めた。
 かけられた言葉に一つ深くうなずいて、交戦に入った仲間たちを背に――ヒビキは基地局の中枢へと急いだ。


「アルコル! 駄目だ!!」
 局内へ飛び込み、制御室までたどり着いた瞬間、ヒビキは叫んだ。その声を受けて、室内にいた赤と黒の奇妙な衣服に身を包んだ、白髪の少年が振り返る。
 この場所は結界に守られているとのことだったが、人ならぬ彼からすれば薄紙を裂くようなものだったのだろう。結界は最早ようをなしておらず、ヒビキは一直線にここまで来ることができた。
 ヒビキがきたことで、彼――アルコルは、羽根のような長い睫毛を振るわせて、かすかに目を細めた。
「やあ、輝くもの。やはり君はここに来たんだね」
「ヤマトの死に顔動画。俺にだけ届いて、ヤマトの側近である真琴さんにすら届かなかった。意味するところはひとつだ。意図的な隠蔽。そうだろう? そんなことができるのは君しかいない」
「流石に完全に情報を遮断することは公平ではないと判断したからね。輝くもの、ヤマトはひとの可能性を狭める未来を選択しようとしている。彼は強く、聡明だ。ヤマトが生き残れば彼が望む世界が訪れる可能性は極めて高い。君は、彼とは別の道を望んでいるはずだ。このまま私がターミナルの中継中枢を破壊すれば、ヤマトはアリオトの落下に巻き込まれて死ぬだろう。実力主義の世界は訪れない。……それでも、ここに、私を止めに来たのかい?」
 愁いを帯びた白い硝子のような瞳が、ヒビキに向く。アルコルのこえは何処までも静かなものだった。そこにどんな感情があるのか読むことはできない。だからこそヒビキは余計に彼を止めなければと思った。
「それでも止めに来た。なあ、アルコル。可能性を閉ざす存在だから、ヤマトを殺すのか? それじゃ、今人間を価値のないものだとして一方的に粛清するのを決めた、ポラリスといっしょだ! ヤマトはヤマトなりに譲れないものをもって今の道を選んだ。でもその先がどうなっていくかはわからないだろう? 考えることをやめてしまうことを、可能性をはじめから切り捨てることを君は嫌って、俺たちにニカイアと召喚アプリをくれたじゃないか」
 ビャッコから降りて、ヒビキはアルコルの元へと歩み寄る。ヒビキの言葉はアルコルを揺さぶったようだ。彼は口元に手を当てて、思案するそぶりを見せる。
「アルコル、俺は、ヤマトの友人だ、と以前に名乗った君に友達を殺させたくないし、ヤマトも死なせたくない! だから、止めてくれ」
「輝くもの……ヒビキ、君は、ヤマトもまだ変われると、可能性があると信じているのだろうか?」
「そう信じているのは、アルコルもだろう。そうでなければ君は、俺にヤマトの死に顔動画を見せない、そういう選択肢もあったはずだ」
 微笑んで告げたヒビキに、アルコルはすまない、と口にした。相変わらずの静かな白皙の美貌が、今はどこか安堵したようにもみえる。
「きみに、賭けてしまった。私は君を待っていた。君が、私にまた可能性を示してくれることを。そして、君は応えてくれた。……だが、」
「"まだ"完全には壊れてない。いいんだ、アルコル。今回はこれでいい。半々くらいで帰ってこられるだろ。それで今度こそ……上手くいくといいんだけど」
 憂いを深めた白の瞳を見つめて、ヒビキは複雑な顔で笑う。それを聞いて珍しくアルコルが表情を変えた。人形のような面が、驚きに似たものを浮かべてみせる。
「ヒビキ。そうか……今回も、君は、覚えているんだね」
 知っていた。ヒビキはもうずっと前から知っていた。この日まで可能性を秘めるサマナーが誰も死ななければ、今の世界を存続させて未来を開く可能性を高めるために、アルコルがヤマトを間接的に排除するために動くだろうことを。
 でも本当は、ヤマトのことを無意識にまだ友人だと思っているアルコルは、ヒビキに止めて欲しいと願っていることを。
「うん。俺はあきらめないよ。いつかきっと全員でポラリスの試練を乗り越えられる。その時まで、諦めない。誰も死なせない。……ヤマトも。なあ、アルコル。あのこと、頼んでいい?」
「いいのかい?」
「だってそうしないと、俺は札幌に行く前に止められちゃうから」
 軽く口にするが、ヒビキの顔には既に侵しがたい決意の色があった。それで人外の少年はすべてを察した。
「君が諦めないならば、私ももう少しだけ信じてみようと思う。だが、もし君が戻らなければ世界は可能性を閉ざした形に収束する…あるいはまた繰り返すかもしれない」
「そうならないように祈ってる。……もう行って、アルコル。一緒に居るところ見られたりしたらまずいから」
 アルコルの横を抜けて、ヒビキはターミナル中継器の前に立つ。それは既に干渉を受けて、電子の火花を散らし、不安定な状態となっていた。
「ヒビキ、またね」
「うん、アルコル。……またね」
 音もなく消えた死兆の星に別れを告げ、ヒビキは手早くジプス東京支局に連絡をとる。
 時間がない。ヒナコとヤマトはそれぞれの場所で、既に召喚の儀式に入っているはずだ。
『襲撃者の撃退、ご苦労様。でも、ちょっと遅かったみたいね……アタシをご指名ってことだけど』
 やがて電話ごしに菅野史が出た。ジプスのシステムを概ね把握している彼女には、中継器の異変は既に伝わっていたのだろう。
「ごめん。その上で手伝ってほしいことがあるんだ」
『何? 局長にはもう現状は伝えてあるけど……作戦は続行だって。そりゃそうだよね。シヴァクラスの高位神魔をそう何度も呼び出したり、長時間使役することは難しい。チャンスは今だけ』
 フミが淡々と伝える内容は、ヒビキにとっては既知であり、そうでなくても予想できるものだった。ヤマトは叶えたい理想を持っているが、それ以上に人類の存続を優先する。己の命すら、必要なら切り捨てるもののうちなのだ。そのことに気付くまで、そのことを知るまで、ヒビキは随分遠回りしてしまったけれど。
「そっちの予定はもう動かせない。だから、終わってから迎えに行く。これ、まだ動くよね?」
『全壊はしてない。でも、今動かしてもどこに飛ぶかわかんないくらい不安定。時間をおけば余計に悪化する。今、転送の効率は落ちるけど、システムを予備の中継点に切り替えてる途中。でも、今日中に直せるかどうか。まずアリオト撃墜までには間に合わない』
 こうして話している間も作業しているのだろう、パソコンのキーボードをたたく音が聞こえていた。
「今ならまだ、フミのナビゲートがあれば一回は確実に動かせるよね?」
『今はまだ、ね。でも、召喚儀式の影響でこの後地磁気が乱れる札幌からこっちに局長を飛ばすのは無理』
「違う。飛ばして欲しいのはヤマトじゃない。俺だよ」
『なにするつもり。アタシ、自殺志願に付き合う趣味はないんだけど』
「……規格外の霊力、魔力があれば人間でも悪魔みたいなことができる。そうだよね?」
 ヒビキが口にした言葉にフミは興味を持ったようだ。問いかけを否定せず、考えてることつづけて、と促してきた。そして、ヒビキはフミに自分の考えたヤマトを連れ帰るための方法を説明した。
「どう? 行けると思うんだけど」
『――面白い。アンタのそういうとこが局長がご執心になる理由かな。ま、アタシたちも今局長に死なれたら困るし…迫っちあたりぶっ倒れそうだし。時間がないから、直ぐに始める』
「ありがとう、助かる!」
 フミの助力を取り付けて、ヒビキは中継器を起動させる。各地の情報を中継し転送を補助するこの場所自体もターミナルとして使用できるのだった。今、不安定になっているシステムの代わりに、目的の場所までの道筋を示すのは史のナビゲートだ。
『……ね、成功したらアンタの生体データもっと詳しくサンプリングさせてよ。アンタに興味が出てきた』
「生きて帰って来いってことだね」
 転送が開始される直前、聞こえた史の声に光に包まれながらヒビキは少しだけ口元を和らげた。それがフミなりの好意の示し方であることを知っていたから。

 神話を再現するごとく、破壊神の炎槍は色欲の魔王を貫き、その背後に存在していたアリオトもまた撃ち落とされた。
 本来であれば直ぐにデータに還元され、光となって砕けるセプテントリオンの死骸――だがアリオトはその特性ゆえに、札幌の街ととそこに居る人間を押しつぶして死滅させるのに十分な時間、残存する。
 仰ぎ見る鉛の色の空を割り、セプテントリオンの規格外の巨躯がゆっくりと落ちてくる。
 ここで生き残るためにヤマトが取れる手段はふたつ。ひとつは、アリオトの死骸が消滅するまで結界を貼り続けて己を守ること。もうひとつは、中継点に干渉されて起動できなくなったターミナルを用いずに転移すること。
 そのどちらも、ヤマトの身体が無事に保つ可能性は限りなく低かった。
(この私が、4日目にして舞台を降りることになろうとはな)
 己が途中で倒れたときの方策は既に迫真琴に渡してある。とはいえ、龍脈を行使するヤマトなしで乗り切ることが難しい局面もあるだろう。理想の世界の実現を前に無念がないといえば嘘になるが、それでもヤマトは己が間違った選択をしたとは思わない。この場所、この時間の後にアリオトを討つことはできなかった。セプテントリオンを一体でも倒すことができなければ、その時点で人類は詰みだ。
 あるいは、と一瞬だけ、寝所を共にした透明な青いひとみの少年のことを思う。彼が十全に力を発揮し、人を導けるならあるいは、そんなことを想った。刹那の、気の迷いのようなものだったが。
 そういえば。もうひとつ思い出す。ヤマトは最後の日まで生き残ることができるのかな? ――そう言っていた、白い面影が脳裏をよぎる。
「化け物め。それほどまでに私を厭うか」
 墜ちてくるアリオトの向こうに、ヤマトはアルコルの姿を思い描く。忌々しい。結局あれは、己の望む可能性以外は排除する身勝手なモノだとヤマトは歯噛みした。人ならぬ者には人の心など解るまい。ただ憂いているだけであれば可愛げもあっただろうに。
 苛立ちを、さざめきを、溢れ来る感情を飲み込み、沈めて、ヤマトはターミナルへと駆ける。不安定であるとはいえ、機器の助けを借りて飛べば、多少なりと全身が吹き飛んだり、何処にもたどり着けないという可能性を減らすことができる。小指の爪の先程のごくわずかな可能性であっても、賭けずに座して死を待つよりはよほど有意義だ。
 時間がない。扉をやや乱暴に開けてターミナルルームに入ったヤマトは、そこで驚くべきものを目にすることになる。
「ヒビキ……? なぜ貴様がここに居る……!」
 いるはずがない。あるはずがない。彼は大阪本局に居たはずで、中継器を襲った襲撃者を退けたと報告が入っていた。
 だが、そこに、その場所に確かに、黒い髪と青い瞳の少年、久世響希が存在していた。白いうさぎ耳に似た飾りが背でゆれる。
 ヤマトが来たのを察してか、彼は少しだけ笑う。
「恩返しに来た」
「何を、馬鹿なことを……! 何故ここに来た。態々死にに来たのか!」
「違うよ、助けたいから。君を一人で死なせたりしないために来たんだ」
 睥睨する紫電の瞳にひるむことなく、ヒビキは大真面目にそんなことを言い切る。この男はどうしようもなく愚か者だとヤマトは思ったが――そうだった。これが彼の強さなのだった。今までにもそうして死にそうになりながら、いくつもの確定された死を響希は覆してきた。だれもしなせない。それが彼の望みだった。彼は、彼の甘(つよ)さを貫く、そのためにここまで来たのだ。
 ヤマトは笑った。腹の底から面白いと思ったのは久しぶりだ。あるいははじめてかもしれなかった。
 ヒビキがここまでするのだ。認めてやらない訳にはいかないだろう。道は交わらないとしても。
「度し難い。……だが、背に腹は代えられぬか。無策で来たのではないのだな。自殺志願ならば、菅野がお前をここまで寄越すはずがない」
「ああ、誰がサポートしたか分かってるんだ? じゃあ、手短に言うけど。ヤマトは、単独でも長距離を転移できるんだよね。ターミナルなしに」
「負担を考え、実践で試したことはないがな。だが、短距離ならまだしもここから、もっとも近い東京の支局まででも相当の距離がある。私の肉体が霊力の行使に耐えきれず吹き飛ぶ公算の方が高い」
 忌々しげにヤマトは眉を寄せた。ひとの肉体はあまりにも脆弱だ。己の力の行使に耐えきれぬ身体を、ヤマトはもどかしく思う。だがその線を踏み込めてしまえば、ヤマトは最早人間の範疇に収まらなくなるだろう。制限は必要なのだ。
 ヤマトの話を聞き、そうか、とひとつ頷いてからヒビキは提案を口にする。
「その負担、軽減できると思う。ほら、俺って今仲魔と感覚をリンクさせてるだろ。このイナバシロウサギをヤマトの携帯に送る。それを媒介にして、俺とヤマトを一時的に同調させる。上手くすればヤマトの身体にかかる負担を、俺がある程度引き受けられるはずだ」
 フミにも相談したことだが恐らくいけるだろうとのことだった。ヒビキはどうも他者との協調、同調を得意とする霊力波形を有しているらしい。
 サマナー同士、悪魔を携帯でやり取りすることができるというのは、ヒビキとダイチとの間で実証されている。だが、
「私とお前の間に縁はあるか?」
 問題はそこだ。悪魔添付を行使するにあたっては、深い縁が必要とされるようだった。果たしてそれはヒビキとヤマトとの間にも存在するのか。
「あるだろ。だって、ヤマトには俺の死に顔動画が届いたし、俺にもヤマトの死に顔動画が届いたんだ。それに昨日話をして思った。俺たち……目指している先は違うけど、もう友達じゃないかな」
 芯から信じていると言いたげなヒビキの物言いを、今ばかりはヤマトもほざけと切り捨てることはしなかった。また胸の奥が奇妙なざわつきを覚える。その感覚に惑いながらも表面には出さず、ヤマトは携帯を取り出した。
「これで共倒れとなるならば笑い草だな。はじめろ」
「大丈夫だよ、ヤマト。きっと、上手くいく。しなせない」
 こうしている間にもアリオトは刻一刻と落ちてくる。ヤマトは最早皮肉を告げることなくうなずき、ヒビキもまた携帯を用意すると添付の操作を行った。
 暫くして、ピピ、と軽い電子音。ヤマトの元にヒビキが送り出した悪魔が届く。データを確認する。間違いなくヒビキの連れているイナバシロウサギの使役権がヤマトの方に移っていた。
 第1段階は成功した。ヒビキが少しだけ嬉しそうな顔をするのを横目に――ざわついた胸の鼓動は置き去りにする――ヤマトは気を引き締める。問題は、ここからだ。
「力を抜いておけ。同調させるぞ」
 使役権の移譲と共に、いつの間にか、ヒビキの肩からヤマトの肩へとイナバシロウサギが移動している。それをちらりと横目に確認しつつ、ヤマトはヒビキと己の霊力を、悪魔を媒介として繋ぎ合わせていく。健康診断のバイタルチェックの時にデータとしては見ていたが、こうして霊力を重ね合わせるとまざまざ感じる。ヒビキとヤマトの力の性質、純度共に他人とは思えないほどに似通っており、驚くほど易く馴染む。
 同調が済むとヤマトは手袋を取り外し、素手でターミナルの機器に触れる。元々この機械は空間と情報をやり取りする能力を備えている。何の指針もなく空間跳躍を仕掛けるよりは、この札幌ターミナルを基点、東京のターミナルを行き先と定める方が良い。 その上でヤマトは、札幌を流れる龍脈から力をくみ上げ、術式を展開していく。紫の光を帯びてヤマトとヒビキの足元に、峰津院の方陣が浮き上がった。
「先に言っておく。負担を引き受けるとお前は言ったが、生半可なことではないぞ」
 大いなる力の流れ、龍脈がこうして居る今も身体の中で荒れ狂う。青く輝く光のグリッドがヤマトの肉体の輪郭を縁取り、ちらちらと青白い明滅を繰り返していた。兎の姿をした悪魔の身体も、ヤマトの身を包むのと同じひかりを纏っていた。仲魔を媒介にヤマトと同調している、ヒビキの身体もまた同様であった。
 龍脈の行使は激痛を伴い、身の内を侵す。あらゆるものになりうる無色の力の塊を身の内に受け入れることは、異物の侵入を身体に許すのに等しい。その上で己の力として御すことは凄まじい負荷となる。ヤマトにとってはこの痛みは最早慣れ親しんだものであり、強くさいなまれようと易々と顔に苦痛を浮かべることはなかったが、ヒビキは小さくを息を呑んだのがわかった。
「これ、が…ヤマトが普段扱ってる龍脈、か。ヘビー、だな……」
「黙って口を閉じておけ。おとなしくしておけば龍もお前の身の内を食い荒しはすまい。……負担を半分引き受けると言っていたが、お前が受けるのは最低限で良い。明日以降、お前が使い物にならなくなっても困る」
 ヒビキが何も言わなかったのは、口を開くのもつらくなってきたのだろうと判断して、ヤマトは早々に術式を完成させ、起動に移す。
「行くぞ」
 瞬間、真白い閃光が辺りを見たし、ヒビキとヤマトの視界を浚った。

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