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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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『隣人に光が差すとき』 の続き。なんだかんだあって、大団円回帰した後の、我が家の都ちゃんとウサミミの話。
主ヤマはくっついてて、都ちゃんは大和がだいすきです。
ほぼウサミミとミヤコちゃんの会話で、大和はさいごにちょこっと出るくらいです。
BRの追加キャラさんはデザイン的に八割都ちゃんだろうとおもうので、BR発売したら絶対かけなくなるだろうなと思ってかきあげました。
去年のいい双子の日(11月25日)に描き始めたので作中の時間もそれくらいです。

BRではいったいどんな性格の子が来るのか楽しみなような怖いような…。なんにしろ誰かがなくエンドじゃないといいなって、アトラスゲーに望むことではないですが祈っています。
「ねえ、都。今日はいい双子の日らしいよ」

 この男が唐突にわたしに話し掛けてくるのは、今に始まったことではない。
 休憩室で一服していたら、唐突に扉が開き、うさぎの耳のような長い飾り付フードを揺らしながら、白いパーカーを羽織った男が入ってきた。
 あの災厄の日々とポラリスの試練を超え、世界を回帰させることを選択した上にある現在。失われるかに思われた日々の記憶は、わたしたちの中に残り(あるいは蘇り)、それゆえ、元々であれば考えられない現状に、わたしもこの男も生きている。
 わたしの目の前で青い煌星のような双眸をやわらかく細めて笑う彼は、大学に通う傍ら、非常時以外で初の、ジプス民間協力者第一号として組織に出入りを許され、兄様の側で働いている。
 一方のわたしはといえば、いざという時に兄の代わりを果たすという御役目に違いはないが、平時にも仕事が加わり少しだけ表に出ることが許されるようになった。わたしの存在を知った兄様が、わたしの所在を割出し、峰津院の長老方から許可をもぎとって下さったのだ。
 わたしの力は兄様には遠く及ばないが、万が一に備えて無為に待機を続けるだけに留めるには惜しい。普段からジプスでその力を生かすように。兄様はそう、言ってくれた。うれしかった。
 僅かなりと声をかけて頂いている以上、引き立ててくださった兄さまの見立てを裏切るような真似は絶対にできない。顔や存在を大々的に知られるようなことがあってはならないから、外とはほぼ関わらぬ内勤が主であるが、わたしは今や兄様の側近のひとりに数えられており、日々これ勉強することばかりの毎日であるけれど、わたしはわたしなりに内務に励んでいる。
 ほんの少しでも兄さまの役に立てる。そのことは得難い喜びであり、わたしは既に以前の無為の只中からすれば信じられないほど充実した日々を送っているのだが。
「折角いい双子の日なんだから、大和と兄妹っぽいことしてみたら?」
 この男、お節介なもじゃもじゃ頭は、何かとわたしと兄様の関係について首を突っ込んでくるのだ。
 ……確かにふつうのきょうだいのような親しさ、というものに憧れがないかと言われれば嘘になるが、わたしも兄様も互いがふつうではない、常人のようにはなりえないことを理解している。
 今こうして、直接顔を会わせる機会があるだけでも、兄様がわたしの存在を認めて下さっているだけでも、奇跡みたいなものなのだ。これ以上を望むなど贅沢すぎる。
「余計なお世話だ。……兄さまのお時間は黄金のように貴重なのだぞ。無駄な手間などとって頂く訳にはいかん」
「時間外あればオッケーなんだ? じゃあ都に朗報! 大和、急な予定のキャンセルがあったみたいでね。2時間くらい時間ができてるはずだよ。アイツあんまり休まないから、多分真琴さんたちが休むように上申して仮眠室に入れられてると思う」
「何故側近のわたしより、おまえの方が兄さまのスケジュール把握が正確なんだ……」
「そこはまあ、色々とね」
 しゃあしゃあと言って、奴はかるく片目をつむって見せる。
 くやしい。ジプスに関わるようになってから短期間で、こいつはあっという間に指定地磁気調査部に馴染み、周囲の人心を掌握しつつ伝手を日々作っているようなのだ。兄様の寵に、霊的な実力や判断力が合間って皆から認められ、いまやこの男は組織内に随分と顔が利く。耳も聡く、こんな風にいち早く兄さまの情報を仕入れてきたりもするから侮れない。
「何にしろチャンスだよ、都! 都も休憩中なんだし、この差し入れ持っていってさ、軽くおしゃべりでもしてきたら?」
 そう言って、あたたかい紙の箱をわたしに強引に手渡そうとしてくる。かすかに鼻腔を擽るのはソースと鰹節の香。中身は兄さまがこいつに勧められて口にしてから目が無くなった食べ物――タコ焼きとやらだとわかる。
 こんなものまでわざわざ用意してくるとは、本当にお節介窮まる奴だ。

 しかし、
「……兄さまに時間ができたというなら、寧ろおまえが行ったほうが、兄さまは喜ぶと思うのだが」
 わたしは少し考えてから、悔しながら事実だろうことを口にした。兄様にとって目の前の男は、掛値なしの特別だ。兄様に並び立つだけの実力者、はじめての友人――そればかりでなく、この男と兄様が、恋慕の情で結ばれていることをわたしは知っている。
 初めにそのことを知った時は流石に驚愕と先への心配から反発を覚えたものだが、ずっと孤高と孤独に身を置いていた兄が、誰より心を許し、穏やかな顔をすることができる相手は、この男をおいて他にないのだった。
 だから、こいつが兄様を哀しませたり傷つけたりしない限りは見守り、味方でいてやろうと決めていた。障害が多いことは互いに承知の上であるようだから、これ以上わたしが何か言うのは野暮というものだ。わたしは兄様のしあわせを何よりも願っている。
 そういう訳で、兄様に自由な時間ができたなら、こいつと過ごしたいと考えるのではないかと思い、先の言葉を口にしたのだが、もじゃもじゃ頭は首を横に振った。
「俺はさ、大和を俺だけで独り占めして、アイツの世界を狭くしたくないんだよ。それに、大和と都、せっかく兄妹として過ごせるようになったのに、全然互いだけの時間とかとってないだろ。それって、俺が大和の時間を沢山貰ってるのも原因じゃないの?」
 眉を下げた顔はなんだか申し訳なさそうだった。このお人よしめ。兄さまはどうしたって毎日忙しいから、お前とだって普通の恋人同士みたいに満足いくほど時間を共有できているわけじゃないのに。
「まったく、時々驚くほど行動派なくせに妙なところで気を遣う男だな。とりあえずこれは受け取っておこう」
 わたしはタコ焼きの入った紙の箱を受け取ると席を立った。ようやく促しにわたしが応えたと感じたのか、青い目が柔らかく笑う。
「まったく素直じゃないんだから。でも都、大和だいすきだもんなあ。いい機会だから水入らずで仲良くしてくるんだよ」
 ひらりと片手を振って、わたしを送り出す姿勢の男。ドアの所まで移動したわたしは、振り返って奴を見据える。
「何を見送りに入っている。貴様も共に来るのだ」
「え? だって、俺が一緒だと都の邪魔しちゃうんじゃない?」
「おまえを、わたしから兄さまへの土産ということにする。不本意ながらおまえの存在は、下手な栄養剤などより兄さまの疲労に効くようだからな」
 わたしの言葉に、何時も剽悍と構える男が虚を突かれたように軽く目を見開く。普段出し抜かれてばかりだから少しばかり胸が空いた。
「……いいの?」
 少し揺れた声音から、本当はこいつも兄さまに会いに行きたいと思っているのがわかる。なのにまだわたしに気遣っているのだ、こいつは。
 まったく、本当はあまりこんなことは言いたくないのだが、致し方ない。
「三人で」
 わたしは少しだけ目を伏せるとぽつりとこぼす。正面から見据えて言うにはおもばゆい。
「おまえとわたしと兄さまと、三人で、このタコ焼きを食べて、茶にしようと誘っているのだ」
 邪魔などではない、とこれで伝わるだろうか。
 ちらりと伺い見ると、彼は心底嬉しそうな顔をしていた。
「ありがと、都」
 弾んだ声で礼を述べ、そこらの女が見惚れてしまいそうな、そんな魅力的な表情でこいつは笑う。
 わたしは別段この男に対して恋愛の情を抱いてはいないし、これから先もそんな気持ちになることはないだろう。
 ただ、兄さまがこいつに向けるものと形は違うが、わたしはわたしなりにこの男に感謝しているし、好ましいと思っているのだ。
 かつて闇の中に留まり、光差すひとを見つめるだけの影法師だった私は、いま、輝く星たちの傍にひとりの人間として生きていられる。
 あの夜に歩き出したことは、青い光に誘われるままに手を伸ばしたことは間違いじゃなかった。
 こんなことは癪だから当分、下手をしたら一生、言ってやるつもりはないけれど。
「フン、この料理は冷めきっててはまずいだろう。兄さまの所に早く行くぞ」
「はいはい、お供しますよ。お姫様」
「……おまえの姫はわたしではないだろう」
「あ、それ、都が言っちゃうんだ?」
 くだらない話をしながらわたしたちは休憩室を出て、兄のもとへと急ぎ向かう。
 仮眠室の前まで来たところで、ふいに兆した緊張に足を止めたわたしの背を、大きく確りとした手が後押した。
 わたしは、意を決して部屋の戸を叩く。
「兄さま、わたしです。都です。差し入れを持ってまいりました。入ってもよろしいですか?」
 もしかしたら仮眠しておられるかもしれないと思ったが、問いかけにはすぐ返事があった。入れ、と端的なこえ。拒絶されなかったことに安堵する。
 大和は都が思ってるより都のこと大事に思ってるよ? とは、ドアを開ける直前もじゃもじゃ頭が吹き込んできたことだ。
 開いた扉の向こう、足を踏み入れたわたしたちを見て、兄さまがほんのわずかに相貌を緩められたのがわかった。
 ずっと、わたしがただ兄さまを通して世界を見ていた時には、おおよそ見ることのできなかった顔。今私と共に居る青い目の彼が兄さまから引き出したもの。
 見ることのできるのは、隣に居る男の存在あってのものだろうけれど、それでも柔らかな表情をするわたしの片割れをこうして間近で見ていると、わたしはあたたかく満たされて、幸せな気持ちになるのだ。

 ――その後、何とかお誘いして三人でお茶をすることには成功した。今までで一番長く兄さまと話ができた時間だった。

「タコ焼きの力、すごかっただろ?」
 解散の直前に、わたしたちの運命を変えた男は悪戯っぽく首を傾けてみせる。
「理解した。次回以降の参考にしよう」
 本当は、『二重の意味で、お前がいたからこそだ』と思うけれど。口惜しいから彼に直接は絶対に言ってやらないのだ。 

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