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パラレルオッケー、ジョークを笑って流せる心の広い方向け。正直私しか楽しくない気もする。
パラレル要素が強いので、苦手な方は自己回避願います。
ゾンビサバイバル(http://shindanmaker.com/235938)にうちのウサミミさんとヤマトさんを放り込んでみたら…という設定の下で進むパラレルネタ短文集です。
鍵アカにて診断結果にあわせてちまちま書いた小ネタSSが増えてきたので、行動の推移と共に纏めてみました。
ゾンビサバイバルの仕様上【同行者】(様々な効果を与えてくれるキャラ)を連れて行けるのでウサミミさんとヤマトさんと一緒に彷徨ってるNPCがでてきたり、フォロワーさんに助けてもらえる関係上さらっと遭遇したりしています。
収録にあたり、プロローグ的な文章を新規で書き下ろしました。以降も気が向いたときに更新予定。
■纏めるに当たって今決めた背景設定とか自分ルールのようなもの■
うっかりゾンビ跋扈するパラレルワールドに飛ばされてしまったウサミミとヤマトさんが、無事家に戻れるまでレッツサバイブ。
実力主義ED後か回帰ED後っぽい(未定)。当たり前のようにくっついてます。ほもで恋人同士(主ヤマ)です。
携帯も持ってるけど、電気が貴重な関係でウサミミはあんまり使わない(使えない)。
局長は携帯なしでも魔法や召喚をある程度使えるチート設定ですが、MPを回復させるには一定時間休憩しないといけない関係で使用は控えめ。
つまり戦闘は大体物理でなんとかしている(我が家のウサミミは力速型です)。
基本的にダメージを負ったり診断の結果が適用されるのはウサミミさんである。
(局長はほーついんパワーとか諸々で、適用された方が面白いとき以外は酷い目にあわない)
ゲームオーバー時は夢オチとして処理するので2人+αのサバイバル生活を安心してお楽しみ下さい!
◎1日目 何度目かのレッツサバイブ
ゾンビサバイバル世界に放り込まれたウサミミさんのはじまりの日。
休めそうな廃車を見つけたので、そこに隠れていたゾンビを倒して就寝。
廃車に潜んでいた動く死体を外へと蹴り出し、体勢を崩したところでトドメをさす。
さっき近くで拾った鉄パイプを思いっきり、死体の頭部目掛けて振り下ろした。粘着質の嫌な音があたりに響く。
ゾンビモノのセオリーどおり、頭を潰したら動かなくなった元人間を見下ろし、俺は深い溜め息を吐いた。
「……完全にホラー映画かゾンビゲーの世界だよ」
そういえば昔ダイチと面白半分にホラー・スプラッタのDVDを見たことを懐かしく思う。
***
今朝、俺が目覚めると、街はゾンビ跋扈し荒廃しきった世紀末状態になっていた。
またしてもポラリスの裁きが訪れたのかと危惧したが、どうも違うみたいだ。
ここは俺の暮らしていた世界と違う。あちこち歩き回ってみたところ、よく似ているけれど細かい所に差異や齟齬があるのだ。
所謂パラレルワールドというやつなんだろうか。
現金な話だが、元いた場所が変わり果ててしまったわけじゃなくて良かったと思う。
この街や住んでいる人たちにも同情は禁じえなかったけれど、仲間達が、また先の見えない崩壊や終わりに巻き込まれるのは嫌だったからだ。
俺自身はもう巻きこまれてしまったのだから、諦めてがんばることにした。
何とかもとの世界に戻る手段、この街から脱出する手段を探そうと決める。
セプテントリオンやポラリスと戦うより、大変なこともないだろう。この世界に骨を埋めるつもりはない。
会いたい人たちがいる。大地を初めとする俺の友人たち──それから。
銀色の髪をした恋人のことを思うと、胸がきゅっと締め付けられるように痛んだ。
あいつ、ひとりで大丈夫かな。俺が居なくても平気な顔をして、何時もどおりに仕事しそうだけど。
仮令あっちは大丈夫でも、こっちは大丈夫じゃない。会いたい。
それまでは死ねないな、と。改めて、俺はこの世界でも生き抜くことを決意したんだ。
召喚アプリやスキルは試したらこの世界でも使えたけど、今のところ電気を補充する当てがないので使うのは本当に追い詰められた時に限ることにした。
考えてみればあの七日間はジプスという組織の庇護を初日から受けていたわけで、何の後ろ盾も保証もない、本格的なサバイバルはこれが始めてだ。
ロナウドの苦労を今さら忍ぶ。苛酷な環境にあると人間、追い詰められるのも仕方ないと思える。だからといって暴徒になっていいわけじゃないとも思うけど。
ともかく現状は幾らか心許ないが、幸いにして培った戦闘経験のおかげでゾンビは怖くない。
多少頑丈で力も強いけれど、動きは遅いし単調だ。頭を潰したり、バラしてしまえば動かなくなることも数度の戦闘で理解した。
面倒くさくはあるが相手取ることに問題はない。目下の問題は衣食住の確保になりそうだ。
まずは街中をうろついて、当座の保存食をなんとか確保した(幸運にも手付かずの地下倉庫を見つけた)ところで空が暗くなってきた。
川辺で廃車(都合よくドアが半開きになっていた)を見つけたのて゜、今夜はそこで休もうと思ったのだが──潜んでいたゾンビとエンカウントしてしまい。
そして、冒頭に戻る。
死体が近くにあったらとても眠れたものではないので、少し遠くに捨ててきてから車へと戻る。
車内はさして汚れていないようだったから、十分休めそうだ。
「──?」
車の中に入ろうとしたところで、名前を呼ばれた気がして振り返る。見えた姿に、俺は思わず息を呑んだ。
少し離れたところから、見慣れた黒いコートの彼が俺を見ていた。
いや、はやい。はやいって、まだホームシックや幻覚を患うには早すぎるだろう。
それでも、本物かもしれない。もしかしたら彼も俺と同じくこのわけの解からない状況に放り込まれたのかもしれない。
そう考えたら、いても立ってもいられなくなった。鉄パイプを放り出し、俺は走る。走る。
「大和!」
大きな声で名前を呼ぶと、確信を持ったようで彼からも俺の方へと駆け寄ってきてくれた。
「やはり君だったか。……無事のようだな」
「なんとかね。本物の大和…だよな?」
「この世界で私を騙り、君を騙す必要のある者が居るとでも?」
「俺の脳が作り出した幻覚の可能性は、」
「私の伴侶が、幾ら妙な世界に不本意に放り込まれたとはいえ、一日待たずに気を病むほど、神経の細い人間であるはずがなかろう」
この居丈高な物言い。幻覚ならもう少し俺に都合よく、優しくたっていいはずだ。涙が出そうなくらいうれしい。間違いない、こいつは俺の大和だ。
「こんな状況だし、喜んじゃいけないだろうけどさ……ごめん。お前がいてくれてすっげえ嬉しい」
「奇遇だな。私もだ。あの災厄を共に乗りきった君ほど頼もしい相手もいないからな」
「信頼してくれてありがと。でもそういう能力的な理由だけじゃなくてさ」
触ったら消えてしまうんじゃないかと、伸ばせなかった腕を伸ばす。
大和の顔に触れる。もしかしたら帰れなくて二度と触れられないかもしれないと思っていたから、そのぬくもりがいとしくて堪らなかった。
そのままぎゅっと、力いっぱい抱き締める。
「会えて素直に嬉しいの。安心した。お前に会えないかもって言うのが正直一番堪えてたから」
「……そうか」
大和もそっと俺の背中に腕を回し返してくれる。腕に篭る力の強さが、彼がどう思っているか、言葉より雄弁に伝えてきた。
「私も、何はなくとも君に会えてよかった。そう思っている」
同じ気持ちだと素直に告げられて、嬉しかった。
崩壊した見知らぬ街でよかったと少しだけ思った。こうやって外で男同士が抱き合ってたって見咎める人はいない。
「一緒に生きて戻ろうな。こんなわけの解からないところで人生終了とか絶対に嫌だし」
「当たり前だ。状況は不透明だが、なに、君が居て私が居るのだ。大抵のことは何とかなるだろうさ」
大和の声音は何時もの、凜と通る迷いのないものだった。それを聞いていると本当に安心できる。
どんな因果が俺たちをこのよく解からない地獄みたいな世界に叩き込んだのかは解からないけれど、二人一緒なら戦えるだろう。
一人のときよりもずっと強く、強く、生きて帰りたいと俺はそう願った。
◎2日目
ゾンビに襲われていたチンピラを助ける。
老人を襲っていたようなどうしようもない相手だったが、ゾンビがこっちにも襲い掛かってきたから仕方ない(ウサミミ談)。
◎3日目
目に物見せてやるとゾンビに特攻していった若い男。返り討ちにあってゾンビになりこちらに襲い掛かってきた。
さくっと撃退したが、なんだかロナウドに似ていた気がしてウサミミはとても複雑な気持ちになった。
◎4日目
食料がなくて困っている少年と出会い、缶詰をいくつか上げたらお礼にお守りだという「鍵」をくれた。
何に使うかは解からないけれど、とっておくことにした。(【クリアフラグB】を得た)
◎5日目
朽ちた病院で年配の看護婦と出会う。乙女さんが歳を重ねたらこんな感じじゃないかというひとで、何となく放っておけなかったウサミミたちは彼女と同道することに。
ウサミミたちは知らなかった。彼女が貴腐人であるこということを……。(【同行者:看護婦】を得た)
◎6日目
郊外の施設に迷い込む。大和の見立てでは軍のものだという。
ゾンビたちをやり過ごしつつ、薬を手に入れた。ゾンビ化に効くものらしい。世話にはなりたくないものだが…。(【治療薬】を得た)
◎7日目
ゾンビの群れに襲われ、多勢に無勢。
振り切るために入り組んだ細い道を逃げるうち、ウサミミは大和や看護婦とはぐれてしまう。
◎8日目
大和たちを探して歩いていたウサミミ、知性を残したゾンビに遠距離から襲われるもこれを倒す。
空を見るとヘリが街の外へと飛んでいくのを見た。この地獄から脱出したひとがいることに少しだけ元気を貰う。
◎9日目
食料の一部が傷んでいたため泣く泣く破棄(焚き火)していたら、大和たちと合流できた。
ゾンビの投石で怪我したところに包帯を巻いたりなど、大和に手当てしてもらうウサミミ。看護婦はそれをニヨニヨ見ていた。
◎10日目 ホテルでごはん
安全そうな建物(ホテル)を見つけたので、ゆっくり休むことに。炊き出しを何回か分けて貰ったりしたもあり、お腹一杯。珍しくのんびり。
恋人同士がホテルに泊まったりしたのだから、その夜に何があったかはお察し下さい! 看護婦は空気を読んで別の部屋で寝た。
風呂の施設が生きていたのでさっぱりしつつ(普段は川とかブフ→アギコンボとかで何とかしている)、今日はいい日だったと、隣で寝ている局長の髪を撫でつつご満悦なウサミミだった。
ぐるっとホテル周りに危険がないか看護婦さんと一緒に散策した後、内部探索を頼んだヤマトと合流した。
ホテルの玄関ホールで待っていた大和の元に、外で行われていた炊き出しで分けて貰ったお握りやスープのはいった器を手に駆け寄る。
まだ暖かいうちに食べさせてやりたい。こういうあったかいものを食べられるのは本当に久しぶりなのだ。
「大和、これ。また別の人がスープ分けてくれたよ。…何かサイボーグだった」
「…!? 君はしかし本当に物怖じしない人間だな」
「やだなー、そんなの今更じゃないか。ほら覚めないうちに食べなよ。それともふーふーって冷ましてあげようか?」
「……ばかもの」
「じゃあ、あーん?」
「君は…この状況に入ってからというもの遠慮がなくなっている気がするのだが」
「明日に後悔しない為だよ」
「……わかった。貰おう」
結局素直に口を開いて、俺の差し出したスプーンからスープを飲んだ大和は、可愛い奴だと思う。
食事を隣で摂っている看護婦さんが、微笑ましいような生暖いような目でこっちを見ていたのは、見ないふりをした。
……いちゃついててごめんなさい。
◎11日目 昨晩はお楽しみでしたね?
まさかの二連続で診断結果がホテル発見=つまりホテルから二日動かなかった……。
まだ食料に余裕もあるし、怪我治して体調万全にしないとね?
決して昨日ハッスルしすぎて動けなくなったとかじゃないよ、ほんとだよ(目を逸らしながら。ウサミミ談)。
「……」
「やまと」
ベッドの上で背中を叛けて横たわる恋人に、彼は呼びかける。
「今は君と口を利きたくない」
そう言った時点で話をしているあたり、完全に無視を決め込むつもりは、一応ないようだ。
「悪かったってば」
謝罪を受ければ、背を向けたままでゆるくかぶりを振る。
「……君だけの責任にするつもりはない。だがけじめはつけねばなるまい。この状況で、あそこまで互いに自制をなくすなど…」
「久しぶりだったからねー。…まあこの二日は休日ってことで…」
溜め息を深く苦く零し、枕へと顔を埋めた恋人を、彼は背中から優しく抱きしめた。
それを許しているあたり、怒りと言うよりは反省の気持ちが強いのだろう。やがて、鈍い動作で──動くのがどうやら辛いらしい──向き直り、物憂い顔で口を開いた。
「……。もし、」
「ん?」
「今、動く死体が大勢ここに現れたら、先に行け。そう、約束してくれ」
「ばか」
真剣に言われた言葉をあっさりと切って捨てる。そんな弱気は聞きたくないとばかりに。
「私は真面目に言っているのだ」
「俺に、大事な相手をおいて逃げた卑劣漢になれっていうのか?」
「後から追いつく。信じろ」
「なら俺のことも信じろよ。あんなよく解からない化け物に好き勝手にされるほど弱くない。お前を抱えて逃げるくらいしてやるさ」
青い瞳は存外に真面目な輝きをたたえて恋人を射抜く。根負けしたような吐息が、くちびるからこぼれ出た。
「強情だな、君は」
「お互い様だろ?……守るから。俺はさ、そう言う事の責任もひっくるめて、こんな状況の中で手を出したつもりなんだけど?」
「…………君には叶わない」
そいつはよかったと黒髪の彼が笑い、腕の中の銀色の髪の恋人にそっと口づけたところで、覗いていた看護婦は静かに薄く開いていた扉を閉めた。
◎12日目
ホテルを後にした所で、肌も顕わな若い女性が同行したいといってきた。とりあえず人のいるところまで一緒に行動することに。
その夜、食料を盗んで彼女が逃げ出すのをウサミミたちは目撃する。そういう行動をとるだろうことは、全員がどこかで察していた。
予め食料を分けて隠し持ったため、被害はさしたるものではない。だから放っておいてもよかった──女の悲鳴が響くまでは。
反射的に追いかけてウサミミが様子を見に行くと、女はゾンビに襲われ、もう食われていた。
ゾンビを片付け、「いっそ分けてくれって、いってくれたらよかったのにね」と複雑な顔で苦笑するウサミミ。大和は何も言わなかった。
◎13日目
ゾンビになりかけて狂乱した暴徒に襲われる。
「……何処でも追い詰められた人間の行動は変わらずか」
流石に病気にかかっていることが解かってか愚民と罵りはしないものの、モラルを失った人間に対する大和の声はどこか冷たい。
仮令ゾンビ化しかかっていても、最後まで人間らしく生きようとするもの、人を助けるようなものたちを見かけていたからだ。
追い払った後、戦闘の影響で崩れた壁の向こうから、新鮮な食料を発見して回収した。
◎14日目
瀕死の元政治家から、ゾンビうろつく一帯から脱出できるかもしれない、ヘリポートの場所を死に際に聞く。(【クリアフラグA】を手に入れた)
亡骸はせめてと近くに埋葬してやった。なんとなく大和の口数が少ないような気がしたが、知り合いにでも似ていたのだろうか?
あるいは疲れが溜っていたのかもしれない。埋葬を終えた直後、不意打ちでゾンビに襲われ、ウサミミが手傷を負う。その日は少し早めに休息を取ることにした。
※ゾンビサバイバルは、クリアフラグAとBを揃えて、とある診断結果を出すとゲームクリアという仕様です。ウサミミと局長は気付いてませんが、実はこの時点で王手かかってます。
◎15日目 さようなら人間のウサミミ、こんにちはゾンビイーターウサミミ
ゾンビに噛まれた傷が膿んで、高熱にうなされるウサミミ。
大和や看護婦に心配されつつ、生死の境をさまよう所までいった後、ウサミミはゾンビに巣食う"何か"を食らう身体となって目覚める。
早朝から彼が熱を出した。動く死体に噛まれた上に、衛生環境が劣悪な所為だ。
最低限の処置は施していたが、今は足りないものが多すぎる。充分ではなかったのだろう。
辛そうに荒い呼吸を繰り返す彼を守りながら、今日は水場の近くの廃墟で過ごすことにした。
測定器がないため、正確なところは解からないが、彼の体温は現在、体感的に40度近いようだ。
夜になっても彼の発熱は引かない。寧ろ酷くなっている気もする。
先日から同行している看護婦が看病を代わると申し出たが固辞した。
彼が目覚めた時、一番初めに傍に居たいなど、女々しい感情であるが、今は互いに背負うものもない身だ。
ここにいる間くらいは彼の為だけの私でいても良いだろう。
魘されている彼の額に乗せた、濡らしたタオルを代えてやろうとした時、背後に気配を感じて振り返った。
もう襲われる事が日常となった相手──動く死体だ。咄嗟に応戦しようとしたが、狙いは私ではなくうなされて眠り続ける彼の方であった。
一瞬反応が遅れ、血の気が引いた。だが直後に倒れたのはゾンビの方だった。
熱で意識のなかった彼が起き上がって、動く死体の咽喉笛を噛み千切ったのだと、幾らか遅れて理解する。
ゾンビは通常、頭を潰すかバラバラになるまで攻撃しなければ止まらないのだが、不思議と倒れた死体はもう動かない。
「大和?」
熱が残っているのか、まだうすぼんやりした様子で私を見る彼の、瞳がうす青く光った気がした。
彼が何か、決定的に今までと変わってしまったことを私は察したが──構わない。
「あんなものに齧りつくな。病気を貰ったらどうする?」
傍に行き、濁った血で汚れた口許を拭ってやると、無我夢中だったからと申し訳なさそうに彼が苦笑う。
その反応は何時も通りの彼だ。ならば良い。彼が彼である限り、私にとっては何も変わりはしないのだ。
◎16日目
熱は引いたもののウサミミの身体を気遣い、大事をとってドラッグストアで薬を探すことを大和が提案する。
探索した結果大量の睡眠薬を見つけてしまったため、
「……呑んで永遠にここから脱出する?」「冗談にしても笑えんな」
誰かが飲んでしまわないようにとりあえず持っていくことに。
ついでにこっそりひっそり潤滑させるものとかゴム製品を見つけてポケットにしまう、ちゃっかりしたウサミミであった。
◎17日目
美人局に襲われる(女性が襲われたと助けを請い、背後から暴漢が襲うというよくある罠だ)。
治安が悪くなってきたとウサミミたちは感じる。こうなってくると、人間の方が厄介かもしれない…。
◎18日目
ノリと勢いでゾンビ狩りに参加する。貸して貰ったハーレーを乗り回し、ウサミミは釘バットでゾンビを蹴散らした。
大和はタンデムシートに座って魔法で援護していた。
無傷で片付けたものの、疲れたのでゆっくり休める場所を探すことに。
◎19日目
荒らされていない神社を見つける。神に守られているのだろうか?
久しぶりの穏やかな休息。夜は静かに更けていく…。
聖域だからか。神聖な空気が森閑と漂っている。
きっと名前のある神様が祭られているんだろう。ここには動く死体も暴徒もこないらしい。
安心して休めそうな場所に来たらどっと疲れを感じた。
昼間から夜にかけて、ノリと勢いでゾンビ狩りに参加した身体が休息を欲しがっている。
「軒先借りても怒られないかな」
「礼を失さなければ、社内に入っても構わないそうだぞ」
「……俺はもうお前が神様の声とか聞ける件については突っ込まない。突っ込まないからな!」
答えを期待しないで言ったのに、さらっと大和が返答してきて、ああこいつオカルト畑の人間だったなと改めて思い出す。
「まあ、何にしろ、大丈夫なら安心して借りるとしよう」
余り深く考えないことにした。祟りがないならこれさいわい。社内にあがらせてもらい、一息吐く。
看護婦さんは社務所の方を使うらしい。なんだかんだで、俺たちがふたりの時間をとれるように、気を遣ってくれている気がする。
その気使いはありがたく受けておくことにした。
「ひとまずおつかれさま」
「ああ、君も」
顔を合わせて、視線を合わせて、互いの無事を噛み締める。
辺りは驚くほど静かで、ここにいると変貌した世界が嘘みたいだ。
「…顔色が良くないな」
少し疲れた顔をしていたらしい。気付けば大和がそっと此方を窺い見てくる。
先日俺が熱を出してからというもの、大和は俺に対して微妙に過保護気味だ。
とはいえ、熱が下がった日からこっち、不思議と身体が軽くて却って調子がよいくらいだ。
だから大丈夫だと、そう返そうとしたのだけれど、大和が予想外の行動に出た。
「女の膝ほどやわらかくはいかないが」
なんだか小難しい顔をしてから、大和は板張りの床に座った上で膝を叩いてみせる。
枕として使えと目線が言っていた。
大和が膝枕してくれるとか、信じられない夢みたいなシチュエーションなんだけど、甘えていいのかな。
「こんな状況じゃなかったら天国なんだけどな」
「余計なことは考えずに休みたまえ」
割りと力づくで寝かしつけられた。程好く筋肉がついた脚は、思ったほど硬くはなく、しなやかだ。
うん。寝心地は悪くない。
膝に頭を預けて、大和を見上げると、俺の髪に指が触れてくる。どこかぎこちなく慰撫するような、そんな手つきだった。
「何かあれば直ぐに知らせる。少し眠るといい」
「んー、じゃあちょっと寝たら交代な」
言葉に甘えて目を瞑ると直ぐに眠気がやって来た。勿体無い気もする。もう少しこの感触を堪能していたかったんだけど。
そうして意識が完全に落ちる前、
「…おやすみ」
頭を少しだけ抱えられて、額にやわらかいものが優しく触れた気がした。
ああ、やっぱりまだ眠るんじゃなかったかも。
◎20日目
無人の軍事基地を探索。手榴弾を発見。危なかったので爆弾処理した。
◎21日目
このぼろぼろに荒廃した世界で人間の記録を残しているという男に会う。
目的は面白いと思ったが、この世界の人間ではない自分たちでは役に立てないとウサミミたちは彼とは別れる。
◎22日目
ゾンビの残骸の山にて武装した軍人に襲われるも撃退。
どうやら以前に少年から譲り受けた銀色の鍵を狙っていたようだ。
◎23日目
その日のねぐらと定めた場所に食料を置き、周囲を探索していたところゾンビの大群に襲われる。
どうにか逃げ延び、食料の回収にも無事成功した。
◎24日目
飛行場跡散策。救難信号を見つけるも持ち帰らず。
◎25日目
看護婦の知人だという寡黙な歴戦の老軍人と知り合う。
喋らないので何を考えているかいまいち解からないが、何時の間にか同行者となった…。
彼はどうやらウサミミたちと同年代の孫がいるらしく、好意的だ。滅多に喋らないが。
また道中で、治療薬は人に譲った。
(【治療薬】を譲渡し、アイテム入手で【同行者:歴戦の老軍人】を得た)
◎26日目
未亡人が隠れ住む家を見つける。軒先を貸してもらえたのでイチャイチャしながら休むことに。
なんだかんだで看護婦は未亡人ははなす機会が有り、仲良くなったようだ。
(腐った趣味に染められたことにウサミミと大和は気付いていない。軍人は何も言わない)
◎27日目 きみのためにできること
慣れない生活の披露と栄養不足がたたったのか、今度は大和が熱を出してしまう。
未亡人の家に休ませてもらっている間に、ウサミミは薬や食料を探しに行く。
ゾンビ徘徊する商店街にて、久しぶりに仲魔や携帯の力を全開にして戦い、無事目的のものを手に入れる。
同行した老軍人はウサミミのしたことを見なかったことにしてくれた。
持ち帰った薬や食餌、看病の甲斐があって、大和の熱は夜半には下がり、ウサミミは一安心したのだった。
出発時に食料と薬は殆ど未亡人にお礼として渡した。出発の前に携帯は未亡人宅で充電させてもらった。
「大和?」
肩に触れる体温の熱さで目を覚ました。
隣を慌てて窺えば、汗ばんで上気した顔が見え、ぼんやりとした銀の瞳と目があった。
どう考えても熱がある。念の為に額に触れれば酷く熱い。
俺は慌てて世話になっている看護婦さんの名前を呼び、より正確に大和の体調を診て貰う事にした。
医者ほどではないが医療の知識がある女性は、疲労と栄養不足によるものだろうと診断し、ゆっくり安全な場所で休ませる必要があると言った。
そのあたりで俺たちの様子を見かねたのか、昨晩軒先を貸してくれた未亡人が、今日は家の中も使っていいと申し出てくれた。ありがたい話だ。
最近行動を共にするようになった軍人だという老人に手伝ってもらいつつ、貸与してもらえることになった客室まで大和を運んだ。
大和の意識は朦朧としていて、呼吸も荒い。寝かしつけた後は、そばで見ていることしか出来ないのが歯痒かった。
以前俺が熱を出した時大和もこんな気持ちだったんだろうか。
栄養価の高い食べ物や薬をあげたくても何もかも足りない。病気に対しては魔法も効きが良くない。
大和の自然治癒力に任せるしかないのかと俺が思ったときに、未亡人が近くにゾンビに占拠された商店街があると教えてくれた。
危険だが手付かずの食料や薬があるかもしれないという。なら、俺の選択は一つだった。
部屋を出ようとした時、大和が薄っすら目をあけてか細く俺の名前を呼ぶ。
何処かに行くのかと不安そうだった。熱の所為で普段より情緒が表れ易くなっているみたいだ。
「大丈夫、直ぐ戻るよ」
そう約束して、未亡人と看護婦に大和のことをお願いした。
老軍人は何も言わず俺についてきてくれた。頼もしい。
商店街は地獄絵図だった。ゾンビがあちこちを徘徊し、なるほど、これでは人の踏み込める領域じゃない。
だけど、今日は、今日だけは大盤振る舞いだ。
「あのさ、ここで見たことは内緒にしてくれるかな。緊急事態でもなきゃ使わないからさ」
「……」
寡黙な老人は何も言わずに頷いてくれる。なら始めよう。
携帯を開き、アプリを起動する。そして、俺は俺の仲魔たちを呼んだ。
翼ある鳥魚に黒髪の吸血狩人。タイホウにクルースニク。俺が一番世話になっている悪魔たちだ。
「久しぶり。また力を貸してくれるかな。どうしても、即効で片付けて帰らないといけないんだ」
老軍人は流石に少し驚いた目をしたが直ぐに正面に視線を戻し、銃を構えた。
此方に気づいたゾンビに向けて、老人が発砲したのが戦闘開始の合図になった。
後で携帯を充電する当ても得てるから、今日の俺は全開だ。
「待ってろよ、大和。絶対、約束護るから」
そう決めて、俺は仲魔と共に動く死体の群れの只中に切り込んだ。クルースニクの使う炎とタイホウが放つ衝撃波が後に続く。
過程を省いて結果だけ勝てば大勝利だった。
ゾンビを蹴散らし、開いた道を駆け抜けて、再度ゾンビどもが集まってくる前に、老人と一緒に素早く目的のものを回収した。
薬品類と栄養剤、冷蔵庫が生きていたのを見つけて新鮮といえる食料を幾らか確保できた。他にも沢山の保存食、缶詰。それから衣類に雑貨。二人では持ち切れないほどだった。
途中までタイホウに運んでもらうことも考えたけど、目撃されたら色々大惨事なので商店街から脱出した時点で帰って貰った。
老軍人に説明が要るだろうかと目を向けたが、それより早くに彼は歩き出していた。
俺のことを気遣ってくれたんだろうか。……どうも俺たちは孫みたいに思われている気がする。
戦果を抱えて未亡人宅へと急ぐ。彼女の家は自家発電機(と電化製品)が生きていて、遠めにも少し明るい。
その後は、キッチンを借りて大和に栄養のつくお粥を作ってやったり(喜ばしいことに未だ食べれそうな卵があったんだ)、慌しく過ぎた。
夜も更ける頃、大和の熱はだいぶ下がり、俺は胸をなでおろした。 不意に寝込んでいた大和が目を開ける。
「…今は、何時だ?」
「目ぇ、覚めた? 12時前くらいかな。身体、大丈夫?」
「熱はだいぶ引いたが、服が汗ばんで気持ち悪い…」
「一応衣類も探しといて正解だったかな。ほら、着替え」
「助かる」
まだ微妙にぼんやりしているのか手つきが覚束無い大和の着替えを俺は手伝ってやることにする。
タオルや水を用意して、身体を拭いてやったら気持ち良さそうにしていた。
何時もよりほんのり紅潮した白い肌は若干目に毒なので、俺は手早く大和を着せ替えさせる。
「これでおしまい、と。もうちょっと寝ろよ。朝までは居ていいって言われてるから」
「すまない。君に手間を取らせた」
「この前のお返し。前に俺が寝込んだときはお前が助けてくれただろ。持ちつ持たれつ、だ」
俺の言葉を聞くと大和はかすかに微笑んだ。
「であれば、次に君になにかあれば私が助ける番だな」
「その機会がない事を願ってるけどね」
それもそうだなと頷いた後、大和はベッドサイドに置かれた水差しを取ろうとした。
けれど動作がやはり何処となく危なっかしい。一日熱にやられて体力を使っただろうし、下がったと入ってもまだ微熱は引いていないから無理もない。
「もうちょっと俺に甘えとけよ。…ほら」
水差しからコップに水を注いで差し出そうとして──コップを落とす可能性があるんじゃないかと思いつく。だから。
風邪じゃなくて良かったなあと思いながら、俺は水を自分がまず口に含み、口移しでヤマトに渡した。
一瞬銀の目が驚いたように見開かれたが、それでも流れていく温い水が心地よかったのか、大和は白い咽喉を鳴らして与えられるものを嚥下した。
唇を離すとまだ欲しそうな目をしている。
「もっと?」
問えば正直にこくんと頷くのが見えて、俺は繰り返し、大和が満ちるまでくちびるを通して彼に水を与えてやった。
「今日は何から何まで君に甘やかされているな」
「いいじゃないか。傍にいて欲しかったんだろ」
「……この世界では離れるということが空恐ろしい。君以外にはいえない弱音だ」
「俺も怖かったよ。お前が目覚まさなかったらとかさ。まあ何があるしても最後まで一緒だよ。生きるのも死ぬのも帰るのも。約束」
「……やはり君は私に甘い」
指きりを求める大和は気恥ずかしそうに目を伏せた後、俺と小指を絡めてくれた。
その後はゆっくりお休みと再度寝かしつけ──ようとしたら。
「風邪ではないから、共に寝ても構わんだろう」
大和に布団に引きずり込まれて、しがみつかれた。
悪い気はしなかったから、そのまま添い寝して休むことにする。
「そーだね。おやすみ、大和」
「ああ、おやすみ、」
俺の名前を呼んで大和が間近で微笑んだのを見たら、ちょっと無茶して頑張ってよかったなと心から思えた。