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デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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春コミで頒布した無配話。解放ルート本「ワールドエンド」のIF。
もしも大和の説得に失敗していたら、主人公たちがポラリス戦をしている裏側で大和は…という暗めの話。主人公はほとんど出てませんが主→←ヤマな感じ。
主人公の名前は宇佐見北斗です。
この話のほかにも、ウサミミがゲスミミだったら~とか、解放したはいいけど上手くいかなかったら~とか暗めのもしもを色々考えたのでいつかどこかでかいてみたいかもしれない。
無配なのにこれはどうかな、と思ったけど、その分本編の甘さが引き立つかな、と。

最後の大和についてはいろいろと曖昧な感じで。どっちになってもいいと思います。

タイトルに迷ったらcoccoについ頼ってしまいます…。

 無の浸食が世界全てを飲みつくさんとする最中――地上に残されたわずかな人間たちは空の頂へ向けて走る、眩い光の柱を見た。
 全てが終わりゆく中で、それは希望の灯火のようであったが、何を意味するものであるかを知る人間は数少ない。
「……行ったか」
 ターミナル施設の存在する建物の傍で、くすみひとつない美しい銀色の髪をした少年は、天へと延びるその光を見上げ静かに呟いた。
 彼――峰津院大和は、光の柱が意味するところを理解している。あれは、現状が最終局面に差し掛かりつつあることを示すものだ。
 光の源はターミナル。あの光こそは、虚空蔵の主の元へと辿り着くための階にほかならない。
 彼らがポラリスに辿り着くために、都庁に残っていた龍脈の龍を回収し、その力を利用したことを大和は知っている。
 龍脈はどうやら、大和を破った青い瞳の青年のことを主として認識し、その願い通りにターミナルを強化せしめたようだ。
 元々龍脈を龍として具現し、使役していた大和である。それゆえに、欠片となってもなおあの龍との間には微弱な繋がりがあった。彼らが何をしようとしているのか、ターミナルで今何が起きたのかは、我が目で見たかのように知ることができた。
(ポラリス。すべての因果の主。アカシックレコードの管理者……神にも等しき存在。そんな相手に、本当に敵うと思っているのか、君は)
 大和と彼――北斗は進む道を、望む世界を違えた。その道は最早交わらない。だというのに、地上に残った大和が、北斗の身を案じるのもおかしな話かもしれない。
 強い意志の輝きを湛えた、青い煌星のような瞳を想う。何時だって前を見て、くすむことのなかった強く眩い魂。周りの人間に縋られてなお、それをものともせず、寧ろ支えられているなどといって、己の力に変えていた。彼が変えたものは数多い。その在り方に、存在に惹かれるものもまた。
 大和もそうだった。こうして彼と違う道を歩くようになって、改めて痛感した。ほんの一週間、その短い時間の間に、どれだけ彼の存在が己の中に食い込んだことか。
 誰かを欲しいと明確に思ったのは、大和にとって初めてだった。元々平凡な人間であったはずが、この窮状にあってその才能を美しく花開かせた、大和の理想そのもののような存在。強く、賢く、あんなにも意が通じると思えた者は今までにいなかった。彼が共に居てくれれば、大和の望んだ世界はきっと叶っただろう。そればかりでなく――慕わしいと感じていたのだ。
 だからこそ、諦めきれなかった。己の意志で選択したのでなければ意味がない。そうでなければ人は容易く翻意する。大和はそのことをよく理解していたはずなのに、彼だけは誘わずにはいられなかった。そこで北斗が己の手を取るような男でないことは理解していたというのに。
 今更大和は北斗と共に歩くことなどできはしない。北斗もまた最早大和を必要としないだろうと、そう大和は思っている。
 なのに、今こうしてここに立っているのは未練だろうか。
 最早ジプスは解散し、大和にはするべきことも、あるべき場所もない。
 足元がこんなにも不確かだったことは今までなかった。大和は常に、この国を守るための影として存在し、そのためだけに学び、鍛え、役割を果たし続けてきたのだ。生きるとは守りつづけることで、他の生き方など大和にはなかった。
 大和だけではない。峰津院の血脈は尽く、そうして生きて、死んで来たのだ。ゆえにこそ、守るものには価値ある存在であって欲しかった。腐った、くだらない、醜いもの。弱く愚かなもの。そんなものを守るために存在しているのではないと思いたかった。峰津院が、その命と存在を賭けて守りつづけてきたものは、そんなものではないと。大和はだから、世界に価値を取り戻そうとした。そうでなければ報われないと思ったのだ。だが、大和の望みは今や砕かれた。他ならぬ北斗の手によって。
 願いも役割も今や何もなく、こうしてただ無意味に生を繋ぐことに意味があるのかと自問が兆す。いっそ、あの時、北斗と向かい合った時、どうしようもない脆さを彼の前で露わにしてしまいそうになった時、彼の手でとどめを刺してくれたならよかった。
そんなことは、あの、情け深くやさしい彼がするはずもないことだけれど。
 北斗は大和の全力を打ち破った上で殺さず、戦いの後、彼は大和に力を貸して欲しいと言った。そこで差し出された手を取る道もあった――にも関わらず、その手を取らなかった。
 大和には、北斗が何を求めているのかわからなかった。今や彼の力は大和以上のものである。彼にはすでに多くの仲間がいて、彼の望む世界に賛同するだろう。北斗が築きたいと願う自由な世界、人が人の脚だけで歩いていく世界が気にならないかと言えば嘘になる。だが、大和はまだ己の望む世界よりも、彼の望む世界が素晴らしいものであるのかどうかわからなかった。そんな、曖昧な、ともすれば敵と成り得る身で、彼に同情や憐みで、仲間のひとりに加えられることは耐え難かった。
 もしも、彼の手を取り、共に歩くことを選んでいたら違う世界が見えたのだろうか?
 理性では、彼のしようとしていることがどれほど不可能に近いことであるか分かっていたし、その望みは大凡潰えるだろうと判断もついていた。だけれど感情は、彼ならばよもやと期待を抱いていたのだ。大和の予想を、この七日間幾度もひっくり返してきた彼。そもそも北斗の存在自体が、大和の想定の中にはなかったものなのだ。
 こころのままに、北斗の手を取っていたら。彼の隣で、大和は新しいものを見られたのかもしれない。それは未来とか希望とか――自由とか、大和が考えたこともなかったようなものだったのかもしれない。
 らしくもないことだ。既に定まった選択をひっくり返すことなどできはしないのに。
 世界が終わるか、あるいは北斗と彼の仲間たちによって世界が変革されるかはわからない。どちらにしろ、すべてはもはや大和の関与する外にある。未練がましく、この場所にとどまって、万が一にも戻ってきた彼らに姿を見られるようなことになったなら、どんな顔をすればいいのかわからない。
 いっそ、範囲を広げつつある無の中に身を投げてしまえば、澱のように淀む感情や思考と別れることができるかもしれない。そんな考えが頭をよぎった。死にぞこないの身には、それはひどく魅力的にも思え、大和は自虐にくちびるをゆがめた。
 何にしろ、最早この場は己が立つべき場ではない。そう心境に見切りをつけ、大和はターミナル施設に背を向けて歩き出そうとした。
 そこで、気づく。
(野良悪魔――)
 何処かからかと言えば、おそらく無から逃げてあちらこちらから集まってきたのだろうが、大量の悪魔たちが遠くに見えた。その向こうには、歩くよりも遅い速さであるが確かに迫る、虚無がある。
「チッ、ここも直に無に呑まれるか」
 思わず舌打ちが零れる。世界の終わりはほど近いと思っていたが、最早一刻の猶予も許されないようだ。触れればそれこそ何も残さずすべてを飲み込み分解する、無の領域。身を投げることも考えた大和にとっては、いまや恐れるようなものではない。だが――
(ターミナルがなくなれば、北斗たちはどうなる?)
 龍脈を持って強化した施設だ。そうやすやすと無に呑まれることはないだろうが、万が一にも機能に欠損が生じるようなことがあれば、天の玉座に向かった者たちは、この地を再び踏むことが叶わなくなるだろう。
 彼らの戦いと無関係な所で、その先行きが決まるなどあってはならないと、大和は思った。
 帰ってくるかもわからないのに。それでも――守らなければと、帰る場所を守ってやりたいと、最早道を違えた相手のためだというのに、誰に言われるでもなく、そうしなければと、大和の身体は動いていた。
 大和の身体に金色の光がともる。タワーから遠い場所で、龍脈の力を引き出して戦うことは本来難しいが、今はまだ、北斗たちと戦った時の力の名残が、大和の身の内には残っていた。その力と、ターミナルに宿る龍脈の欠片、それを呼び水に心身を活性させる。負担は大きいが、構いはしない。もとより死に体の身、この場所を守る間だけ持てばよいのだ。
 素早く印を組み、祝詞を唱える。大和の身体から溢れた力が、地面に光となって走り、峰津院の方陣を描きあげる。
 張り巡らせるのは結界。あらゆるものを弾き、防ぐ、形のない、だが、絶対防御の力。ポラリスの裁き、虚無の浸食すら跳ね除けて人を、国を守った、峰津院の誇りそのものと言える技だ。
 よしんば、無がこの場所を飲まなかったとしても、悪魔になだれ込まれてはやはり都合が悪い。北斗たちがすべてをやり遂げて戻るまで、この場所で結界を維持することが大和の戦いになるだろう。
 空を見上げる。光の柱の向こうで、今、北斗は戦っているのだろう。彼の望む未来を、世界を掴むために。
 その雄姿を見たかったと思っていることに、こうして北斗が帰ってこられるようにこの場所を守りたいと思っていることに、大和の望みは明白に表れている。
 あの時悲しそうに此方を見る青い瞳を、引き止めようとする彼を振り切らずに、その手をとって隣を歩けばよかったと、大和は己の心にようやく気付いた。
 例えば大和が、実力主義の理をこそ、芯に望むものとして胸の中に抱いていたとしても、彼はそれでもいいと笑ってくれただろうに。多様な価値観を許容して、折り合わせて、より良い道を探そうとするあの在り方は、明日を信じることのできるこころは、大和にはない強さだったのに。
 ああ、何とも今更だ。視線を地に戻す。空は遠い。あまりに遠い。だけれど、この場所に立っているからこそ、できることがある。
「私は誰の礎になるつもりもない。だが――」
 一度だけ、私は君を、君の道を守ろう。
 それが、君の手を取ることができなかった私が、君に手向けることのできる全てだ。

 守ることは大和にとって当たり前のことだった。常に負けることや引くことのできない戦いばかりだった。だが、大和にとって、こんなにも守りたいと、守らなければと切に思ったのは、今日が初めてだった。

 悪魔が、虚無が、結界に殺到する。本来であれば、タワーという増幅器を持って機能させるものだ。それをただ一人で張り巡らせ、支えることがどれほどの負担になるかなど、大和には自明の理であった。本来であれば、刹那と保たずに命を落とすだろう。
 そうならずに結界を維持しつづけることができたのは、ひとえに大和の才覚によるものだが――それと同じくらいに、守りたいと願った強い意思がその身を支えていた。
 血を吐き、視界がくらみ、大和は己の身体が内側から、行使する力の強さに耐えかねて裂け、傷つき、壊れていくのを感じる。それでも強引に回復魔法で塞ぎ、立ち続けた。
 黒いジプスのコートが、大和の血を吸って、更に重く暗い色に染まっていく。すべての音が、光が、痛みが遠ざかる。だが、一方で意識はどこまでも明瞭であった。結界はもはや大和の一部として、その周囲を知覚することに問題はない。膨大な情報量を頭で処理しながら、結界の薄い場所を繕い、力を注いで、壊れぬように守りつづける。
 結界は悪魔や無を退けるものであって、それ以外の人間や生物は庇護の対象だ。何時しか、襲い来る暴威から逃げてきた人々が、ターミナル施設の周りに自然と集まりつつあった。それを邪魔だと、縋るばかりの弱者だと退けようとは思わない。おそらく世界が変わるならば、そこで、彼らは北斗たちが必要とする存在だろう。好きにすればいいとそう思えた。
 永遠にも一瞬にも思えるような時間が続いた。その内に終わりは、唐突にやってくる。
 悪魔は残らず何処かへと送還されていき、無の浸食が唐突に止んだ。そこから導き出される答えは一つ。
 北斗たちが、審判の主たるポラリスに打ち勝ったのだろう。だからこそ、浸食は止み、世界はどこまでもボロボロになりながらも、かろうじて存続していられる。
 そこまで認識して、大和は結界を解いた。己の身体がぐらりと揺らぎ、地面に倒れ込むことを他人事のように認識する。
 今は夜か。昼であったようにも思うのだが、視界が暗くてよくわからない。世界が静かなのは、自分の耳が壊れているからなのかどうか、今の大和にはそれさえ判別がつかない。全身、痛まないところはなかった。酷く寒い。四肢が思うように動かせない。大きくせき込んで血の塊を吐き出した。周りに人が集まって、何事か言っているようにも思うが、すべてが遠い。
「――!!」
 ターミナル施設から誰かが出てきたようだ。大和は倒れ伏したまま、必死に目を凝らす。くらく霞む視界の中に、北斗の姿が見えた。彼の事だけは認識することができた。北斗は、倒れている大和の様子に気づいたようで、顔色を変えて、他の仲間たちに先だって、大和の方へと駆けてくる。
(笑ってくれないだろうか)
 何時だって前を見ていた、美しく強い輝き。彼の魂そのものを映したような、青い星の瞳が曇ることが惜しいと思えた。
(私は君を、君の還る処を、守れただろう?)
 声の出せないことだけが惜しかった。彼と共に戦うことはなかったが、それでも、ジプスがなくなっても、自分にできることがあったと大和は嬉しかった。
 北斗が大和の身体を抱き起こす。彼の腕は暖かいのだなと、不思議とそれだけは確かに感じることができた。
 何事か、彼が繰り返している。叫んでいるようにも思う。そんな悲しそうな、苦しそうな顔をしないでほしい。
 大和は、血の気の失せた顔で、今までになく穏やかに微笑んでいた。
(これは自己満足だろう。だが、私は今、とても晴れやかな気持ちなのだ)
 世界を変えた男。自由な世界、自由な未来、庇護のない、あてどないその道行きを選んだ誰よりも強い彼。何よりも、守るべき価値があるものを、守ることができたとそう誇ることができるから。
 酷く眠い。瞼が重い。眠るなと北斗が叫んでいるような気がするが、それでも少し休ませてくれないか。薄れゆく意識の中で大和は思う。
(少しだけ眠って、次に目が覚めたら、その時は君に、言いたいことがある。聞いてほしいことがあるのだ)

 遅くなってしまったが、あの時、言えなかった答えを。隣で見ないかといってくれた、君に。
 今は私もそう望むと、応えさせてほしい。

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