[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
そういえば以前にも小さいころに二人があっていたネタを描いたような気がする…とおもったら、夏ごろにツイッターでだらっとながした話もそんなかんじでした。
季節外れにもほどがある上にすごい中途半端なところで終わっていて、完結していないんですけど、メモ的にぺたっとはっておきますね…。
今年の夏までには終わらせられるといいなあ、的な…。
なあ、大和。今すれ違った奴、どうかしたの?
だって穴が開きそうな位まじまじ見てた。もしかして好みだったとか?
え、ばかを言うなって? 私の男は君ひとりでいいし、女も要らん?
なんだよ、照れちゃうだろ。……それにしてもさ。じゃあ、なんで? 珍しいよな、お前が誰かを気にするなんて。
そりゃ、整った顔してたし、髪の色もそうそうお目にかからないような色だったけど。
……色? 髪の色が気になったの? え? よみがえりかと思ったのだ、って、どういうこと。
話したくないなら無理にとは言わないけど。
ああ、そろそろ川が見えてくる……見えてきた。
あそこの岩場でちょっと休もうか。ほら、灯篭が流れてくし、綺麗だよ。
随分このあたりの地理に詳しいなって?
実は俺、小さいころもこの辺に来たことがあるんだよ。
うん、今回はお前の付き添いだけどさ。近くにじいちゃんちがあって、よく遊びに来てたんだ。
この辺って自然が豊かだから、街の方とはぜんぜん違うって、夏や冬に遊びに来るたびはしゃいでたっけ。
あのころと変わらないや。この川も。 岩場も。
川の近くが特にお気に入りの遊び場だったんだよな。
今日は祭りの夜で人が結構いるから、あんまり出ないみたいだけど、暗くなると蛍が見えたりして。
泳ぐの結構得意だから、昼は飽きるほど水遊びしたり。新しい友達も沢山できたよ。
君は人懐こいからなって? ……まあ仲良くなる相手には困らなかったかな。
この辺の子とか帰省している親についてきた子とかが代わる代わるこの川に遊びに来てた。
ここって割と子供が集まる遊び場だったんだ。それで人の入れ代わりも激しかったんだけど。
ある日さ、すごく不思議な子に出会ったんだよ。
夕暮れ時だった。俺以外の面子は家に帰っちゃって、偶々一人になった時、少し離れた岩場の影から俺のこと見てるその子に気付いた。
直ぐに気づいたのは目立つ色してたから。その子、髪がちょっと見ないような色してたんだよ。
白っていうか銀っていうか……そう、大和、お前みたいな色だった。
じいちゃんたちとも似てるけどそれよりもずっと綺麗な髪だなって思った。
知らない奴に声をかけて遊び仲間にするのとか、じいちゃんちに遊びに来てる間は日常茶飯事になってたから、俺、そいつにも声かけてみたんだよ。じっとこっち見てるし、何か用があるのかって。
遠目にも髪の色だけじゃなく、ちょっと変な格好してるなってわかったけど、年下みたいだし、声かけられて吃驚した顔してるのみたら何だか可愛く思えた。
笑って、一緒に遊ぶ?って聞いたらさ、おずおず出て来て頷いたから、その日は暗くなるまで石切りして遊んだ。
蛍が飛び始める頃、帰るって言うからまたなって返したら、そいつも嬉しそうに笑ったっけ。
男なんだか女なんだかちょっと解からない、子供の目から見ても綺麗な顔した奴だったよ。お人形さんみたいだった。
それからそいつと偶に一緒に遊ぶようになった。
他に人がいるとその子は絶対でてこなくって、早朝とか遅い夕方とか人がいない時間にだけ会えたんだ。
もしかしたらこいつおばけなのかもなって、そんな失礼なことも思ったけど、傍に居ると居心地よくてさ。
変なこと聞いてこの時間をおしまいにしたくなかった。
鬼ごっこやかくれんぼ、虫捕り。他にも色々、街じゃあまりしない遊びを沢山した。
そいつがビー玉とかお手玉とか一昔前みたいな玩具を持ってきてそれで遊んだりもしたっけ。
会うのは何時も川辺だったけど、水遊びだけはしなかった。
その子泳げなかったんだよ。俺がすいすい泳いで見せるのを、感心したような目でいつも見てた。川底から綺麗な石とってきて上げたりもしたっけ。
すいれんはまだならってないって言ってた。 偶に妙に難しい言葉遣いをする奴だった。
じいちゃんちで、じいちゃんが見てた時代劇に出て来るみたいな言葉使うから、どういう意味?ってよく聞き返してその度教えてもらってた。
それで覚えた言葉結構多かったよ。今でも覚えてる。
……でも、そいつの名前だけは思い出せないんだよな。一番肝心な所なのに。
その子とはさ、出会った夏の間しか一緒にいられなかったんだ。
俺が、約束を破っちゃったから。
どういうことかって?
えっと、じゃあ、順を追って話すけど。
まず、そいつ、自分と会ってること人に言わないでくれって俺にお願いしてたんだよ。
破ったらもう会えなくなるっていうから、ちゃんと秘密にしてた。
俺、その子のこと凄く好きだったんだ。世間知らずでちょっとズレてて、でも何時だって真面目で一生懸命で、話してると楽しかったし、白い綺麗な顔が笑ったり驚いたりするのを見るのが嬉しかった。
会えなくなるのは絶対嫌だったし、哀しませたくなかったんだよ。
なのに、そのうち欲が出ちゃった。お祭りがあるって言うから、その子と一緒に行きたいなって思っちゃったんだよ。
そいつ、いつも、俺が駄菓子屋で買った菓子分けてやると珍しいもの見る顔して初めは渋るんだけど、一回口にすると大体残さずぺろって食べちゃって、美味しいって笑ってくれたんだ。
きみはすごいものをたくさんしっているんだなって、別に大したことない普通のお菓子だったのに。
だからお祭りに連れて行ったら、もっと喜んでくれるって思ったんだ。もっと沢山、いろんなものを見せたり食べさせたりしてやりたかった。
夏の終わり、祭りが近づいた日、駄目もとで誘ってみた。
絶対断られるって思ってたよ。 なのにさ、かおさえみられないようにしてくれればいってもかまわないって頷いてくれたんだ。
予想外だったから、誘った俺の方が、すっごいはしゃいじゃってさ、すこしおちつきたまえってその子に窘められたっけ。
顔を見られないようにする方法は、言われて俺ちゃんと考えた。
前にじいちゃんちの蔵を掃除した時、古い狐のお面があったの覚えてたから、それをその子につけてもらえばいいんじゃないかって。
お祭りなら顔にお面つけててもそこまで変じゃないし。どうかなって言ったら、よかろうって了承してくれた。
夕暮れ遅くに川で待ち合わせて、神社まで一緒に行こうって指切りした。
嘘をついたら絶交だって。針千本より俺には怖かったな。
だから、その約束も破る気はなかったんだよ。
もうすぐ夏が終わる。そうしたらこいつにはもう会えなくなる。
だから思い出がほしかった。また来年って言えるように。
なのにどうして約束を破ってしまったのか、って?
……うん。俺は約束を守りたかった。でも結果的に破ることなった。続けて話すよ。
俺が借りるつもりだった狐のお面は何か謂れがあるものらしくて、黙って持ち出したのがバレたら絶対怒られるものだった。
あの子のことは人に言えない以上理由を説明することはできなかったし、俺は夜中にこっそり蔵から持ち出すことにしたんだ。
祭りの前日は酷い大雨だった。じいちゃんちの蔵は、家から少し離れた山の中にあった。
昔はその近くに大きな屋敷を構えていたんだって。だけど火事で焼けてしまって、蔵だけが残った。
そこには色々とご先祖様が集めたり使ったりしてた変わったものが収められてる。夜に行くにはちょっと勇気が要った。
冷静に考えてみれば、別にあの狐の面にそこまで拘らなくてもよかったと思うんだけど、当時は子供だったからさ、これと決めたら割りと一直線だったんだよな。
それにそのお面、白くて綺麗で、あの子に似合いそうだったから。
蔵は鍵がかかってるけど、俺は探検した時に別の入り口を見つけてたから、そこから入ることにした。
行きがけは雨も小雨って感じだったし、急いで帰れば大丈夫だと思った。
目的の狐のお面を首尾よく蔵のなかで見つけた俺は、大事にタオルで来るんで抱えながら、外に出てみて愕然とした。
蔵の中にいても雨の音が酷くなったなから雨脚が強くなったとは思っていたんだけど、そんなぬるいものじゃなかった。
何時の間にか大嵐って感じの酷い雨になっていたんだ。
風も出てて、視界が悪い。正直まともに家に帰れるかも怪しかった。
でも、このままここに残って朝になって俺が布団の中にいないのがばれたら、絶対探される。怒られて、祭りにいけなくなる。
そもそもこの天気じゃ祭り自体やらないかもって考えは頭になかったな。俺は急いで家を目指して駆け出した。
狐のお面は木彫りの物で、濡れても多分問題なかったんだろうけど、タオルで包んだのをそのまま大事に懐に入れて、濡らさないようにって帰り道を急いだ。
一方の俺は雨にやられて濡れ鼠になっちゃったけどね。ふらふらになりながらも夜が明ける前にはどうにかじいちゃんちに辿り着いたよ。凄く疲れた。
濡れたままでいたら絶対抜け出したのがばれるから、濡れた服は隠して着替えて、何もなかったみたいに部屋の布団にもぐりこんだ。
さいわい雨は止みつつあって、これならきっとお祭りは中止にならない。あの子と一緒にお祭りに行ける。
俺は凄く楽しみで、だからふわふわと地に足が着かないような気がするのはその所為だと思ってた。
……実際には雨に降られて身体が冷えた所為で、風邪引いて熱出してたんだけどね。ゆで卵になりそうなくらい、そう、40度越えの酷い熱だったって後で聞いた。
そのまま寝込んで意識不明、生死の境をさまよったらしい。記憶が飛んでて定かじゃないんだ。全部後で父さんに聞いた話だよ。
次に意識がハッキリしたら、日付が何日も飛んでて青褪めた。どうして雨の夜に家を抜け出したりしたんだって。
じいちゃんたちや、俺がぶっ倒れたって聞いて東京から飛んできたっていう父さんにしこたま怒られた。それから目が覚めて本当によかったって泣かれた。流石に物凄く悪いことをしたって理解したよ。
俺がお面を持ち出したのもばれてて、お狐様の呪いにやられてたんじゃないかってじいちゃんなんか本気で心配したらしい。
神社のひとにお祓いもしてもらったって言われた。そこまで大事になっちゃって、だから俺は、元気になっても暫く家の外に出してもらえなかった。
祭りはとっくに終わってて、俺はあの子との約束を破ってしまったことに絶望した。
やっと出歩いてもよくなって、俺はすぐに約束の川──この場所に急いだ。
それから朝も昼も夕方もずっと川べりであの子を待った。
夜遅くになって、家の人が俺のこと探しに来るまでそこで過ごすのが日課になった。
それでも、あの子には会えなかった。毎日毎日、夏休みの終わり、東京に帰るまでそうしていたけど、駄目だった。
謝りたかったよ。約束したのに行けなくて、祭りに連れてけなくて、ごめんなって、本当に心から謝りたかった。
帰る日に、せめてってあの子と始めて会った岩場に謝罪の手紙を置いていった。読んで貰えたかは解からないけど。
冬休みもこっちに来ることになったから、やっぱりあの子の姿がひょっこり現れるのを川で待った。
待ってるだけじゃなくて探しもした。でも、見つからなかった。そもそも家も知らなかったんだ。
それとなく友達や近所の大人に探りを入れたけど、俺のほかは誰もあの子を見たことがないし、知りもしないみたいだった。
夏が来るたび、長い休みでじいちゃんちに来るたび、俺はあの子に会いたくて川に来てたけど、二度と会えなかった。
……思えば、初恋だったんだと思う。どこの誰かも知らない、ひと夏未満を一緒に過ごしただけの相手だったけど。
今でも後悔してるんだ。もしもまた会えるなら、その時はちゃんと謝って、今度こそ一緒に祭りに行きたいなって未練がましくまだ思ってるんだよ。名前も覚えてないくせにな。
……これで俺の思い出話はお終い。
大和。途中からずっと黙り込んでたけど、どうした?
まあだらだら長く話したし、飽きても仕方ないかな。
……。
あのさ。大和、俺、お前に率直に1個だけ聴いていいかな。
お前も、前にこの辺りに来たことない? ここって、峰津院に所縁の土地なんだろ。
俺 、多分昔にもお前に出会ったことがある気がするんだけど。この場所で。
覚えてない? そんな出来すぎた偶然があるわけない?
思い出の中の誰かと重ねるなって、お前は言うかな。
でも、でもさ。もし、お前が思い出のあの子なら……俺は、凄くうれしいんだけど。
また会いたいってずっとずっと思ってた。名前が思い出せなくなって、顔が曖昧になっても、もう一回会いたいって。
こうやって、仕事のついでだけど空いた時間に一緒に祭りに来られたしさ。
……ごめん。やっぱり勘違いかな。違うなら違うってはっきり言ってくれていいんだけど。
? 大和、なんだよ。そんな怖い顔して。
え、お前の問いに答える前に大事な話がある? 聞いても後悔しないなら話すって?
……わかった。いいよ、何でも聞く。聞きたいって思う。
だから、お前の話も、俺に聞かせて。
***
本当に良いのだな? 君は望まぬ真実を知ることになるかもしれない。
それでも私の話を聞くのか。……否、そのようにして君が翻意してくれることを私が望んでいるのだろうな。
斯様にこれからする話は気分の良いものではない。君は、お前が嫌なら話さなくても良いと言ってくれるのか。
だが、ここまできた以上、私は私の罪と向き合わねばなるまい。その時が来たのだ。
まずこのあたりの土地が、峰津院家にとってどういう意味を持つか説明しておこう。
ひらたく言えば、この地は集気を生す──俗に龍穴と呼ばれる、龍脈が色濃く通い集まる土地なのだ。
ゆえに一族にとっては要地であり、峰津院の別邸のひとつがここにある。概ね、峰津院が擁する邸や施設は、龍脈に関わる土地に建てられていることが多いが、龍穴の近くにあるものは数えるほどしかない。龍穴とはそれほどに貴重なものなのだ。
確かに幼い頃、私はこの場所に来たことがある。龍脈を扱う修行の為だ。
龍穴の傍は力の流れが色濃く読み取りやすい。他では難しい術、行使が不可能となるような秘術でさえもここでなら扱いえる。ゆえに感覚を掴むべく、一族の人間が術を修めはじめるのは龍穴の傍であることが多いのだ。
もっとも私は物心がつく前から、龍が見えていたから、取り立てて術の感覚を掴む必要はなかったのだが。慣例でこの地に送られた。
高度な術を学ぶには良い環境であったし、不満はなかった。龍脈が活発に流れる土地は私たちにとっては居心地が良かったというのもある。
その頃の私は、未だ分別のつききらぬ子供であった。
護国の使命を架せられた一族の人間、影に生きるものとしての在り方を弁えきれていなかったのだ。
人里近くに邸があり、そこから遠見の術を使うと周囲の様子を探ることが出来た。修行でその術を修めてからというもの、私は、ともすれば足を伸ばすことのできる距離で、己とはまるで違う生き方を、暮らしをしている者たちがいることに興味を持ってしまった。
俗世に触れてはならない。人に存在を知られてはならない。そう言い聞かせられていたが、日に日に胸の中に湧き上がる好奇心を押さえつけることが難しくなっていった。
峰津院の人間にあるまじき、自制に欠けた行為であると今なら思えるが、当時の私は、まだ一桁の年数しか生きていない、幼稚で愚かな子供であったのだ。
見られなければ近くまで行ってみても良かろうと、覚えたての隠形の術を使って邸を抜け出した。
当然、家屋の周りには結界が張り巡らされていたが、その術の綻び、隙間を潜ることは、私にとっては容易いことだった。
恥ずかしい話だが、抑制を知らないおさない時分、私は龍脈の力を使うこと、その加護を借り受けることに何の躊躇も罪悪感もなかった。無色の概念は、直截な幼児の感情によく染まり、従った。その気になりさえすれば、私を捕えおけるものなど存在しなかったのだ。邸にいたのは霊的な力を余り持たぬ人間が殆どであったこともあり、その目をかいくぐることは難しくなかった。
初めて自由に邸の外を出歩いた時、その広さに私の心は躍った。今思えば何とも勝手な振る舞いであると自己嫌悪を禁じえないがその時は本当に嬉しくて仕方がなかった。空は高く風は快く、地には力が満ち、何処までも歩いていける気さえした。
とはいえ、自分が何時までも好き放題に出歩くことが許されぬ身であるとは、その時の私にも理解できていた。
ほんの少しだけ外を楽しんだら、邸の者が騒ぎ出す前に戻ろうとは思っていた。
水の流れがあるところは龍脈も良く通う。川は俗に水龍の顕れという。私は当時、流れる水というものを見たことがなかった。だからそこを見たら帰ろうと決めた。
遠見の術で、川とその周りの岩場が、自分と同年代から幾らか上まで、大勢の子供たちの遊び場になっていることも知っていたから、その様子をよく見られるだろうとも思っていたのだ。
私が川についた時、生憎ともう陽は山の向こうに沈み始め、そこにいたのは少し所在無さ気にしている、黒髪の子供、ひとりだけだった。
術で見るたび、他の子供たちの中心にいた人間だと、私は彼を覚えていたのだよ。一方的な既知であったがな。
水が流れていく光景は美しく不思議だった。だが、それと同じくらいに自分と沿う都市の代わらない子供が、ごく近くにいることに心引かれた。
もっとも、彼が私に気付くはずはないから、やはり何時ものように見るだけで終わるつもりだった。なのに、岩の陰からそっと彼のことを眺めていたら、不意にその視線が私の方を見て──目が合ったことに驚かされたよ。
何か用があるのかと聞かれて、完全に私の術が用をなしていないことを知った。改めて自分の身体を確かめたが、術は確かに働いていた。
私を認識した彼が特別だったのだよ。おさない子供の霊的な知覚というものは、時に大人を遥かに凌ぐことがある。彼もまた無自覚に、おさないがゆえの特別な眼を持っていた。術によるいつわりごとは彼の前では何の意味も成さないのだ。そのことに彼は少しも気付いていなかったようだけれど。
驚く私に、彼は屈託なく笑いかけ、他の、ごく普通の子供にするように遊びに誘ってきた。信じられない気持ちだったが、そんな風に誰かに何の含みも隔たりもなく話しかけられたこと自体初めてで、私は愚かにも嬉しくて堪らなくなってしまった。
人に見られてはいけない、関わってはいけない。それは解かっていたのだよ。なのに、他に知られなければ良いのではないかと、まだ勝手な事を考えて、誘われるままに彼と遊んでしまった。私の、ともすれば時代錯誤だろう身形や、普通に混ざるには少々変わった容姿を彼は気にかけることもなく、他愛ない話をして、どちらが遠くまで石を飛ばせるかと競い合って過ごした。
あんまり楽しかったものだから、時間はあっという間に経ち、気付けばあたりには宵闇が迫るようになっていた。急いで帰ろうとした私に、彼は気安い表情を浮かべて、またな、と言ってくれた。次の約束がある事がこんなにも幸せなことであると、その時まで私は知らなかったのだよ。
以来、私と彼は折見て淡い親交を交わすようになった。修業を怠けるなど考えられないことであったから、それらが始まる前か終わってから。他の人間はいない時間に川に赴くと、彼は私と邂逅した岩場でいつも待っていてくれた。
私よりひとつ年上であるという理由で、彼は私の面倒をよく見ようとしてくれた。年齢の差は、肉体成長の差でもあり、育ちきってしまえばたいしたことはなくとも、幼い身であれば顕著だった。
彼は私の知らない世俗のことを教えてくれ、会うたびできるかぎり私につきあって遊んでくれた。そうして過ごす時間がかぎりあるものであると、幼な心に理解していたから余計に大切に思えた。