デビルサバイバー2(主ヤマ時々ヤマ主)中心女性向けテキストブログです。
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6月6日が久世響希くんのお誕生日ということで書いた小話。
でも出てるのは小さいヤマトさんとアルコルさんで、ヒビキくんは存在をにおわせる程度で出てこないです。(誕生日祝い、とは…)
設定的にアニサバ寄りですが、基本的に私が可愛げのある大和さんというかゲームよりっぽいヤマトさんのほうが書きやすいので、今回もそんな感じです。
また描いている人が主ヤマ(ヤマ主)すきなので、腐ってるようにみえたらすみません…。
あとうれたんをうれたんらしく書くのはすごく難しいなあと改めて思いました…。
いろいろちゅうとはんぱな感じではありますが、久世響希くんお誕生日おめでとうございます!
6月10日まではアニメヤマトさんとヒピキくん、あれで二歳差なんだとおもうと滾るものがありますね…
しとしとと霧雨そぼ降る水無月の頃だった。
結界と緑に守られて俗世から隔離された、ひそやかに佇む屋敷。その奥深い一室で、ひとりの子供がまれびとと差向かい、西洋将棋を指していた。
椅子に腰かけている子供は、しっとりとした銀色の髪にすみれの瞳、華奢な身体。だが、既に幼さ以上に凛とした覇気と理知をうかがわせる。彼は、着物の袖から覗くほっそりとした手で淀みなく駒を操り、苛烈な攻めを盤上に展開していた。
一方の差し手である、綿雪のような白髪と、羽のような睫毛に縁どられたうつくしい瞳のまれびとは、軽く小首を傾げるようにしながら、子供が差し向ける攻手を尽く、柳のように受け流して見せる。はじめは子供の方が優勢であるかに見えた。だが終わってみれば、まれびとの圧勝であった。
「もういちど、だ」
だが、子供はあきらめない。この子の負けず嫌いは今に始まったことではないから、まれびとはアルカイックな微笑を浮かべ、
「もう一回、だね?」
目の前の姿はちいさくも強く大きな輝きの要望に沿うのだ。それはまれびとが子供のもとを訪れるたび、繰り返されてきた光景だった。
再度白と黒の駒を互いの手で並べなおして、次の対極の準備をしていた子供だったが、不意に何かに気付いた様子で顔を上げた。
同時、子供の背後に控えていた青白い魔獣の視線が窓を向く。
まれびとだけが変わらぬ穏やかさであるが、白髪の少年の姿を模る慮外の彼は誰よりもすべてを見透かしているので何があってもそう驚くに値しないだけの話であった。
「お客人かな」
「式のたぐいだ。少し待っていろ、すぐに済ませる」
まれびとをチェス盤の前に残し、子供は魔獣を伴って窓を開けに行く。
開かれた窓から入り、子供の手の上に音もなく舞い降りたのは、白い禽のすがたをしていたが、尋常の生き物ではなかった。嘴を開けば人の声で、時節のあいさつを流暢に述べ、子供に用件を伝える。子供はいくらかだけわずらわしさを表情に浮かべたが、直ぐにそれを打消して冷静な無表情となり、一言二言返事を言づけて、鳥を外に放した。
「待たせたな」
「水無月のうたげ、という奴は、ヤマトにとってそんなに面白くないものなのかい?」
会話を漏れ聞いたのか、もともとわかっているのかは判然としないが、戻ってきた子供に向けて、まれびとが不意に問いを投げる。
「……はっきり言えば時間の無駄だ。私の生誕月だからといって多忙であろう親族を一堂に会させるなど」
椅子に腰かけなおしながら不機嫌そうに鼻を鳴らして答えた子供に、まれびとは軽く顎に手を当てて考えるそぶりを見せた。
「けれど人間にとって誕生日、誕生月というのは特別なのだろう? そう聞いたことがあるよ。新しい命は輝きに満ちている。生まれた日にはそのことを思い出して祝うのではないのかい?」
「貴様に、祝うなどという感覚があるのか?」
「どうだろう。ただ、得難い輝きが生まれた日は覚えている。だから、ヤマト、君が生まれた日も。それから…そうだな、君が生まれる一年近く前……人の感覚で言うなら、今日、6月6日だったかな。今から何年か前のその日にとても大きな輝きが生まれたことを私は覚えている」
ほんの微かだが懐かしむような、いとおしむような。基本的に平坦で熱の通うことのない、ひととは感覚も感性も何もかも異なっているように思えるまれびとが、不意に情のようなものをのぞかせた。珍しいことだ。
このまれびとは、人類種というものとその可能性に思いを傾けることは多かれど、個に何かしら強く思入れることは至極少ないようであるから。
子供は少しだけ眉を寄せた。子供を輝くものと呼び、時折こうして訪ねて、様々な話をしては気まぐれに去っていくまれびとが、自分以外に大きな輝きだと称するものがいることが気になったのだ。
「その輝きのもとに、どうして貴様はいかなかったのだ? それとも私にしているように時々そいつにもあっているのか?」
「いいや、彼に直接会ったことはない。ヤマト、君は一族からして私ともかかわるものだけれど、その子は全く不意に突然に生れ出てきた輝きなんだ」
かぶりを振ったまれびとの様子に、子供はこの存在が危惧していることを察した。
「貴様が接触することでそのものの運命がゆがむ、とでも? ばからしい。その程度でゆらぐ輝きなら元より大したものではあるまい」
今もそうして気にしているならば見に行けばいいと、腕を組んで言い切った子供に、まれびとは稀有にもひとがましく目を瞬く。
「まったくおかしな奴だ。望めばいかな結界の守りも距離も空間も、貴様にとっては何の障害にもならぬほど大きな力を持っているくせに。気になる相手の顔一つ見に行くことに躊躇するなど」
「ヤマトは偶にすごく大胆なことを言うね。だが、そうだな、今日は彼の誕生日だから。あのとき見た輝きがどんなふうに大きくなったか、少しだけ見に行ってみることにしよう」
「ああ、ならば勝負は預けておいてやろう。代わりに、次に会う時は、その、貴様の言う大きな輝きがどのようなものになっていたか、私に話せ。いいな」
輝きとまれびとが尊んでよぶもの。それはようは可能性のことであるらしい。可能性を多く秘めた人間を、まれびとは輝いていると称する。
そして、このまれびとがそれほど気にする大きな輝きだというのなら、相応の強さを、力を秘めた存在なのだろう。
子供にとって世界はいつもどこか灰色だった。彼の無聊を慰めるのは、悪魔やら目の前のまれびとのような、ひとならぬものばかりだ。まれびとのいう輝きの主ならば少しは違って見えるだろうか? 少しだけ興味がわいた。
「いつか、君と彼が邂逅することもあるだろう。大きな輝き同士は引き合うものだから。そうして君たちの輝きが響き合ってもっと大きくなるなら、私もまだ見たことのない、そんな世界がみられるのかもしれないね」
そんな言葉だけを残して、初めからそこに誰もいなかったかのように。痕跡も体温も、椅子に座っていたはずであるのにクッションに皺ひとつすら残さず、まれびとは不意に姿を消した。
いつものことだ。それをさびしいなどと思う感傷は子供の中にはない。またあのまれびとはきまぐれに、不意打ちに大和のもとを訪れることだろう。並べかけた駒はそのままに、子供はふと壁に掛けられた暦を見やる。
六月六日、大和が生まれる一年余り前に生まれたのだという輝き。それはどんな姿を、声を、意思をしているのだろう?
(貴様は私に並び立つものになるのだろうか)
ならば健やかに、その輝きを曇らすことなく生きているがいいと、胸中で願う。
(私をあるいは越えていく人間か? そうなるならば、その生誕を言祝いでも良い)
今までそのような者は子供の前に現れることはなかったから。まだ見ぬ未知の誰かに、輝きに思いを馳せて、子供は少しだけ夢を見るように目を閉じた。
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